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【奥田英朗】我が家のヒミツについての解説と感想

本記事では奥田英朗さんの『我が家のヒミツ』を紹介します。

家シリーズの第三作目になります。

我が家のヒミツ

我が家のヒミツ

著者:奥田英朗

出版社:集英社

ページ数:296ページ

読了日:2023年5月1日

 

奥田英朗さんの『我が家のヒミツ』。

『家日和』、『我が家の問題』に続くシリーズ第三弾。

六篇収録の短編集。

NHK BSプレミアムで『我が家のヒミツ』のタイトルでドラマ化されている。

 

・虫歯とピアニスト

あらすじ

歯科医院に事務員として勤務する小松崎敦美。

結婚を機に会社を退職して専業主婦をしていたが、

子どもを授からないので再び働きだした。

その歯科医院に敦美がファンであるピアニストの大西文雄が患者としてやってきて。

 

登場人物

・小松崎敦美:歯科医院の事務員。三十二歳。

・小松崎孝明:敦美の夫。建築事務所勤務。一級建築士

・大西文雄:ピアニスト。

 

ネタバレありの感想

子供ができないようだと気づいた女性の話。

大西文雄の最後に言うプランBやCを楽しく生きればいいというのは良いな。

あと孝明がかっこいいし、義姉もいい人なんだよな。

とにかく優しくあたたかい話になっている。

 

・正雄の秋

あらすじ

植村正雄は次期局長の昇進レースで同期の河島に負けてしまう。

昇進レースに負けたことによって人生を見つめなおすことになるが。

 

登場人物

・植村正雄:大手機械メーカーの営業局次長兼部長。

・植村美穂:正雄の妻。正雄とは会社の元同僚。

 

ネタバレありの感想

出世競争に負けた男の話。

これは妻の美穂がいいキャラしてる。

正雄のことを気遣うのもそうだけど、最後の通夜での台詞とか。

いい話だけで終わらせないのが奥田さんかな。

 

・アンナの十二月

あらすじ

江口アンナの母親はアンナが生まれてすぐ離婚し、

二歳半の時に子連れで再婚していた。

アンナは十二歳の時にその事実を知らされた。

アンナは十六歳になったのを機に、

自分の父親が誰なのかということを知りたくなって、

母親に実の父親の居場所を聞き、実の父親に会うことになったが。

 

登場人物

・江口アンナ:高校一年生。

・紗也加:アンナの親友。

・若菜:アンナの親友。

・白川和樹:アンナの実父。演出家。四十二歳。

 

ネタバレありの感想

実の父親に会う女子高校生の話。

アンナが悪いわけではないんだけれど、

私はアンナの育ての父親に感情移入しちゃって結構きつかった。

アンナの親友が良すぎるんだよな。

 

・手紙に乗せて

あらすじ

社会人二年生の若林亨は

母親が亡くなり、父親が受けたダメージが思いのほか大きく、

父親を心配になったこともあって実家に戻ることになった。

父親は食事も満足にとってないようで心配するが。

 

登場人物

・若林亨:広告代理店勤務。

・若林遥:亨の妹。大学生。

・若林の父:亨の父親。中堅ゼネコンの管理職。

 

ネタバレありの感想

母親が亡くなって、残された父親とその子供たちの話。

この話をどう思うかは作中にもあるけれど年齢や経験によってかなり変わるのかな。

私は年をとってきたので分かるなーと思いながら読んでいた。

石田部長と父親の手紙も良いんだけど、私は小林君が好きだ。

 

・妊婦と隣人

あらすじ

松坂葉子は会社員で現在は第一子出産を控えて産休中。

葉子は都心のUR賃貸マンションに住んでいるが、

隣の部屋に葉子より少し年上に見える夫婦が引っ越してきた。

その夫婦はほとんど外出もせず、

普通に暮らしてる感じがまるでないことが葉子は気になって。

 

登場人物

・松坂葉子:会社員。三十二歳。

・松坂英輔:葉子の夫。銀行員。

 

ネタバレありの感想

産休中の女性が隣の部屋に引っ越してきた夫婦のことが気になる話。

これは一番気楽に読める話かな。

これコロナ禍で家にいる時間が増えたから葉子の気持ちが分かってしまう。

途中で葉子が隣人の謎を箇条書きしてたけど、ああやって考えるのはわかるな。

小説ではまさかの公安警察が出てくるオチになっている。

 

・妻と選挙

あらすじ

小説家の大塚康夫は本が以前より売れなくなっていて、

作家稼業に少し倦怠感を覚えていた。

そんな時に妻が市議会議員選挙に立候補すると言い出して。

 

登場人物

・大塚康夫:小説家。

・大塚里美:康夫の妻。

・大塚恵介:康夫の息子。双子の兄。京都の私立大学在中。

・大塚洋介:康夫の息子。双子の弟。早稲田の理工学部。二年生。

 

ネタバレありの感想

妻が市議会議員選挙に立候補することになった小説家の話。

『家日和』、『我が家の問題』にも登場した小説家大塚康夫シリーズ。

大塚康夫シリーズの中で一番好きかもしれない。

苦手な演説を妻のためにする夫とかかっこよすぎるじゃないですか。

 

総評

『家日和』、『我が家の問題』に続くシリーズ三作目なので

よく言えば安定してるとも言えるし、

悪く言えばマンネリ化してるのかもしれない。

シリーズものではあるけど、どれから読んでも特に支障はない。

基本的には読後感も素晴らしいですし、

読めば何かしら気に入る話があるんじゃないかと思う。

私のお気に入りは「妻と選挙」かな。