本記事では結城真一郎さんの小説『#真相をお話しします』を紹介します。
#真相をお話しします
出版社:新潮社
ページ数:224ページ
読了日:2024年4月7日
満足度:★★★☆☆
結城真一郎さんの『#真相をお話しします』。
五篇収録の短編集になっている。
・惨者面談
あらすじ
『家庭教師のアットホーム』の営業のバイトをしている片桐は、
新規のアポで矢野家を訪れる。
片桐が矢野親子に営業をしていると、違和感を覚えて・・・。
登場人物
・片桐:主人公。『家庭教師のアットホーム』の営業。麻布高校卒業、東大三年生。
・宮園:『家庭教師のアットホーム』の社長。
・矢野悠:十二歳。都内の私立小学校に通っている。
・矢野真理:矢野悠の母親。
・矢野慎一:矢野悠の父親。
ネタバレありの感想
おそらく母親が殺されていて、偽者であるというのは予想しやすい。
問題は子供の悠の方で、学校の友達発言で、
偽者であるのはわかるんだけれど、じゃあ誰?で偽者同士の関係性は?というのは、
分からなかった。
『空き巣被害が頻発中』というのは完全に見過ごしていたので、オチはかなり驚いた。
一番最初の話ということもあって、かなり良かった。
・ヤリモク
あらすじ
四十二歳で妻子持ちのケントは、娘の美雪がパパ活をしていることを心配している。
マナという美雪似の女性と出会い、マナの部屋を訪れるが、
得体のしれない違和感を覚えていた。
登場人物
・ケント:主人公。『Kento』でマッチングアプリに登録している男性。
四十二歳で、妻子持ち。美容師で店を二つ持っている。
・マナ:『Mana』でマッチングアプリに登録している女性。
衣料品を扱う専門商社で経理事務をしている。二十三歳。
・美雪:ケントの娘。大学三年生。
・奈々子:ケントの妻。
ネタバレありの感想
これは分かりやすすぎるぐらい、分かりやすかった。
ケントが殺しをしているのもだし、マナが嘘をついてるというのも含めて。
ただラストのオチの美雪が美人局をやっているのだけは、分からなかった。
かといってそれで話がものすご面白く感じるか?と言われれば、
それほど効果的ではないかな。
・パンドラ
あらすじ
不妊に悩まされていた翼と香織は、苦難の日々が三年ほど続き、
ようやく一人娘の真夏を授かった。
それから二年後、翼は不妊に苦しんだ経験もあり、精子提供を始めた。
それから十五年後、精子提供した女性が産んだ、我が子から連絡があり。
登場人物
・翼:主人公。サラリーマン。
・香織:翼の妻。
・真夏:娘。高校二年生。
・美子:翼が精子提供した女性。
・翔子:翼のもう一人の娘。美子の娘。十四歳の中学二年生。
・宝蔵寺雄輔:十五年前の「連続幼女誘拐殺人事件」で逮捕された犯人。
ネタバレありの感想
冒頭で血液型や父と娘で性格が違うという話が出てきたこともあり、
オチはかなり予想しやすかった。
ただ採血したのが生まれた直後だった場合、
実際と異なる血液型の診断が下されることがあるというのは、
知らなかったので、細かい部分までは予想できなかった。
このラストは他と比べたら捻りが無いように思うけれど、
翼が全てをそのまま受け入れているというのも、これはこれで捻っているのかな。
・三角奸計
あらすじ
桐山は、大学時代の友人・茂木と宇治原とリモート飲み会を開催することになった。
そんな中、宇治原の婚約者が浮気をしている話になって。
登場人物
・桐山:主人公。『イツメン』の一人。独身。
・茂木:『イツメン』の一人。妻子がいる。
・宇治原:『イツメン』の一人。婚約者がいる。
ネタバレありの感想
宇治原に婚約者がいて、うまくいっていないことと
桐山の相手はもうすぐ結婚するという話の時点で、
どういう話かは予想がしやすいはず。
ラストのオチは、正直全くオチてない気がするので、あまり好きでない。
・#拡散希望
あらすじ
匁島に住む小学生の渡辺珠穆朗瑪は、男性が殺されたニュースを見て、
この男性と会ったことを母親に告げるが、テレビを消されてしまう。
さらには、立花凛子からYouTuberにならないか?と誘われた話をするが、
凛子と仲良くするのは、考え直した方が良いと言われてしまう。
そしてこの日を境に島の人たちがよそよそしくなってしまうのだった。
登場人物
・渡辺珠穆朗瑪:主人公。小学六年生。名前の読み方は「わたなべちょもらんま」。
東京生まれ。
・立花凛子:小学六年生。島生まれ島育ち。
・桑島砂鉄:小学六年生。東京生まれ。
・安西口紅:小学六年生。名前の読み方は「ルージュ」。東京生まれ。
ネタバレありの感想
第74回推理作家協会賞〈短編部門〉受賞作。
分かりやすさに関しては、他の話と同様なので特に書きようがない。
ただ物語の設定が秀逸で、
主人公の渡辺珠穆朗瑪たちが親からYouTubeのネタにされていたというもので、
キラキラネームであったり、安西口紅の親がスポーツカーを持っていたり、
珠穆朗瑪の家の二階の廊下の奥の部屋の謎など伏線になっているのもだし、
ラストのオチに『高評価』『低評価』ボタンが使われているのも巧かった。
総評
どちらかというと読書経験がないか、少ない方向けの作品かなと思う。
ある程度読書経験があれば、話の大筋を予想はしやすいはずで、
謎解きメインで読む場合はそこまで期待しない方が良い。
どんでん返しに関しても同様で、
どんでん返しを期待して読むと拍子抜けする可能性が高いかもしれない。
一方で話自体はある程度まとまっているので、
軽い気持ちで読む分には悪くはないと思う。
私は最初の「惨者面談」が印象に残ったのと、
「#拡散希望」は設定を含めるとかなり良かった。