【東野圭吾】『マスカレード・ゲーム』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『マスカレード・ゲーム』を紹介します。

マスカレードシリーズの四作目である。

マスカレード・ゲーム

マスカレード・ゲーム

著者:東野圭吾

出版社:集英社

ページ数:376ページ

読了日:2024年6月4日

満足度:★☆☆☆☆

 

東野圭吾さんの『マスカレード・ゲーム』

マスカレードシリーズの第四弾。

 

あらすじ

三週間で三件の殺人事件が発生し、事件に繋がりがある可能性が出てきた。

共通点は被害者がナイフで刺されていることと、

被害者が過去に人を死なせたことがあったこと。

被害者たちに親族を殺された人たちには、しっかりとしたアリバイがあった。

捜査を進めると被害者の関係者たちが、

同じ日にホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明する。

ホテルで四件目の事件が起こると推測した警察は、

再び新田浩介をフロントクラークとして潜入捜査させることになった。

一方、現在はコルテシア・ロサンゼルスに勤務する山岸尚美も

急遽呼び戻されることになった。

 

登場人物

・新田浩介:警視庁捜査一課の係長。警部。フロントクラークとして潜入することに。

・山岸尚美:コルテシア・ロサンゼルス勤務。警察との連携役として呼ばれた。

 

警察関係者 

・尾崎:警視庁捜査一課長。

・稲垣:警視庁捜査一課の管理官。

・本宮:警視庁捜査一課の係長。新田浩介の先輩。警部。

・梓真尋:警視庁捜査一課の七係の係長。警部。

・能勢:警視庁捜査一課の刑事。梓の部下。警部補。

    新田浩介とは過去に二度一緒に仕事したことがある。

・関根:新田の部下。ベルボーイとして潜入することに。

・富永:新田の部下。

・西崎:新田の部下。

・岩瀬:新田の部下。

 

ホテル・コルテシア東京のスタッフ

・久我:宿泊部長。かつてはフロントオフィス・マネージャーだった。

・藤木:総支配人。

・中条:フロントオフィス・マネージャー。

・安岡:フロントクラーク。

 

事件の関係者

入江悠斗:事件の被害者。

      生産機械の特殊仕様化や改造を請け負う会社に勤務していた。

      十七歳の時に暴行事件を起こし、少年院にいたことがある。

・神谷良美:病院の事務職。ホテル・コルテシア東京の宿泊客。

       息子が入江悠斗から暴行を受け、事件から一年後に亡くなっている。 

 

・高坂義広:事件の被害者。産業廃棄物工場勤務。

      二十年ほど前に強盗殺人事件を起こしたことがある。

・森元雅司:保険会社勤務。ホテル・コルテシア東京の宿泊客。

      母親が高坂義弘の強盗殺人事件の被害者。

 

・村山慎二:事件の被害者。

      リベンジポルノ防止法違反で有罪判決を受けたことがある。

・前島隆明:レストラン経営者。ホテル・コルテシア東京の宿泊客。

      娘が村山慎二のリベンジポルノの被害者で、一年後自殺している。

 

ホテル・コルテシア東京の宿泊客 

・沢崎弓江:コーナー・スイートの宿泊客。ブランドもので身を固めている。

・佐山涼:沢崎弓江の連れの男性。眉の端にピアスをつけている。

・三輪葉月:デラックス・ダブルの宿泊客。弁護士で、元検察官。

      新田浩介の大学時代の同期。

・小林三郎:デラックス・ツインの宿泊客。女性連れ。

 

ネタバレなしの感想

マスカレードシリーズの四作目で、

今作は事件の被害者家族によるローテーション殺人(要は交換殺人)で、

ホテル・コルテシア東京で事件が起きようとしているということで、

三度新田浩介が潜入捜査することになるという展開。

 

さすがにシリーズ四作目ということもあって、

ネタ切れなのか、お仕事小説の要素はかなり希薄になっている。

一方、警察小説としてもかなりツッコミどころ満載になっている。

正直amazonでなぜここまで評価が高いのか全く分からない一冊。

 

 

ネタバレありの感想

今回はローテーション殺人by新田浩介ということなんだけれど、

山岸尚美が神谷良美と会話したことをきっかけに、神谷たちのアリバイを調べたら、

直前にアリバイが作られていることから、

ローテーション殺人事件に疑問を持つんだけれど、

それぐらい最初に調べてくれという話だからな。

アリバイ調べ自体基本だろうし、

思い込みでホテルに三つの係が張り込むって、組織として間抜けすぎるだろう。

神谷がホテルに泊まった理由もいまいち納得できないけれど、

森元雅司と前島隆明がホテルに泊まった理由も同じなら、

あまりにもご都合主義的すぎる。

 

今作から登場する梓真尋も、新田や山岸と対立させるキャラクターで、

梓がいるから一応中盤まで物語に多少の起伏がある。

一方で完全な悪役ではなく、梓なりの正義もあるんだけれど、

何にしろ物語のために無理やり出てきたような人物で特に感情移入もできない。

 

そして、今作も前作『マスカレード・ナイト』と同じように、

最後に真犯人が語って終わるという構成になっている。

真犯人の動機自体がかなりの飛躍があると思うのと、

最後に一気に語られても感情移入できない。

事件の被害者家族のことがかなり描かれているけれど、

マスカレードシリーズを書くために、無理やり持ってきたという印象が拭えない。

 

良かったのは入江悠斗が点字ブロックの敷かれているところを

回っているところや、

ラストの新田がコルテシア東京の警備部マネージャーの誘われる場面。

ただ嫌な言い方すると本作に関しては、

小手先のテクニックで何とかしてる感もあるので、素直に良かったとも言えない。

映像化を念頭に置いて、色んな要素を詰め込みましたというだけで、

小説としては正直話にならないかな。