【伊坂幸太郎】『SOSの猿』についての解説と感想

SOSの猿

 

本記事では伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』を紹介します。

SOSの猿

 

著者:伊坂幸太郎

出版社:中央公論新社

ページ数:420ページ

読了日:2024年11月15日

満足度:★★☆☆☆

 

伊坂幸太郎さんの『SOSの猿』

漫画家の五十嵐大介さんの『SARU』と対になる作品になっている。

 

あらすじ

 

家電量販店でエアコン販売員をしている遠藤二郎は、

エクソシストとして悪魔祓いの副業をしていた。

二郎は昔憧れていた「辺見のお姉さん」からひきこもりになってしまった息子・眞人に

ついて相談を受け、眞人に会うことになった。

一方、桑原システムで品質管理を担当する五十嵐真は、

取引先である菩薩証券がニ十分間で三百億円を失った株の誤発注事件の原因が、

自社の納入したシステムにあるのか調査をしていた。

 

登場人物

 

・遠藤二郎:「私の話」の主人公。

      家電量販店の店員でエアコンを売っている。副業で悪魔祓いをしている。

・五十嵐真:「猿の話」の主人公。桑原システムの品質管理担当者。四十歳。

・辺見のお姉さん:遠藤二郎より一回り年上で、子供の頃に憧れていた女性。

         名前は「奈々」。

・眞人:辺見のお姉さんの息子。専門学校に行ってからひきこもりになり、

    ここ半年ほど前から本格的に閉じこもってしまった。

・辺見のおばさん:辺見のお姉さんの母親。

・母:遠藤二郎の母親。

・ロレンツォ:遠藤二郎がイタリアに留学していた時の隣人。

       遠藤二郎に悪魔祓いの神父を紹介した。

・雁子:コンビニエンスストアの駐車場で合唱をしている女性。

・金子:コンビニエンスストアの店長。

・田中徹:株の誤発注事件を起こした男性。菩薩証券の社員。二十八歳。

・〇〇:田中徹の隣に住んでいる男性。

 

ネタバレなしの感想

 

本作『SOSの猿』は、

「私の話」と「猿の話」が交互に語られる形で進んでいくことになる。

「私の話」は、家電販売員で副業でエクソシストをしている遠藤二郎が主人公で、

二郎の一人称「私」で語られていて、

二郎がひきこもりを悪魔祓いで治そうとする話になっている。

一方「猿の話」は語り手は謎で、主人公はシステム開発会社で

バグやトラブルの原因究明、品質管理の仕事をしている五十嵐真で、

因果関係の物語」になっている。

当然ながらこの二つの物語は完全に独立しているわけではなくて、

関連性があり徐々に収斂していく形になっている。

 

解説によると伊坂幸太郎さんの作品で二〇〇七年の『ゴールデンスランバー』から

『モダンタイムス』『あるキング』『SOSの猿』『バイバイ、ブラックバード』が

第二期と位置付けられていて、

「モヤモヤシリーズ」「肩すかしもの」と(伊坂本人が)呼んでいるようだが

実際に今回本作を読んでみたら実際に肩すかしされた感があった。

 

一応伏線というのか序盤に登場したものが終盤で回収されたり、

物語に関わってはくるけれど、カタルシスというものは感じることができなかった

明確なストーリーがあるようでなく、また起伏に乏しく、

かなり漠然としたものになっている。

だからこそ「モヤモヤシリーズ」と呼ばれているのも納得してしまった。

 

他人の「SOS」を見過ごせないエクソシストが副業の遠藤二郎、

論理的に物事を考えて因果関係に徹底的に拘る五十嵐真、ゲリラ合唱団の雁子など

伊坂さんらしいキャラクターは登場するし

メッセージ性もあるけれど、物語的な面白さはほとんど感じられなかった。

 

伊坂幸太郎さんの作品のファンであれば読んでも良いかなという程度で、

それ以外の方にはあまりおすすめできない。

 

 

ネタバレありの感想

 

「猿の話」の語り手は、読み進めていくと眞人に憑いた孫悟空(孫行者の身外身)

であることが分かるようになっている。

また時系列も「私の話」から半年後の話で、

あくまでも予言で事実とは少し変わっている。

例えば五十嵐真はシステム開発の会社の社員ではなく、大庵証券の社員であったり、

株の誤発注の額も違っている。

また誤発注をしたのが、予言では田中徹で、実際は中田徹になっている。

 

遠藤二郎と五十嵐真が出会った後の話は、

本来であれば二つの物語が収斂しているのでもっと盛り上がりを感じても

良かったかもしれないけれど、個人的にはそこまででもなかった。

ラストの途中、〇〇がコンビニエンスストアの交通事故に関わっていたり、

「火災報知機のことだけ覚えておけばいい。」(78P)の伏線が回収され、

中野徹の段ボール箱を積み重ねてハイライトがくると思わせておいて、

見事な肩すかしを食らってしまった

 

物語の中心である眞人に関連する話のひとつひとつは決して悪くはないけれど、

肝心な眞人自体が直接的に語ることはなく、

あくまで遠藤二郎の推測になっているので、これもモヤモヤする原因のひとつ。

 

裏表紙に「孫悟空が自在に飛び回り」とあるので、

もっと孫悟空が活躍するファンタジー的な物語を期待していたので、

ちょっとガッカリしてしまった。

これから「モヤモヤシリーズ」を読む時は、あまり期待せずに読むことにしよう。

 

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