本記事では背筋さんの小説『近畿地方のある場所について』を紹介します。

近畿地方のある場所について
著者:背筋
出版社:KADOKAWA
ページ数:344ページ
読了日:2025年1月24日
満足度:★★★☆☆
背筋さんの『近畿地方のある場所について』。
漫画化されている。
また2025年に映画が公開予定になっている。
あらすじ
ライターの背筋は、
友人であり編集者である小沢と一緒にオカルト雑誌を作ろうとしていた。
そして複数の怪談に近畿地方のある場所が関わっているという仮説を
立てた二人は調査して考察を進めていくことになった。
しかしある日小沢は現地へ行くと言い残して失踪してしまった。
複数の怪談と近畿地方のある場所には恐ろしい事実が隠されていて・・・。
ネタバレなしの感想
タイトルから分かるように「近畿地方のある場所」(複数地域にまたがったある一帯)
に関係する怪談を集めたモキュメンタリー(フェイクドキュメントホラー)。
冒頭で出版社に勤める小沢君が雑誌の取材で「近畿地方のある場所」を調べていて、
失踪してしまったということは明かされているので、
読者としては物語の中心はある程度分かる構成になっているので、
かなり読みやすくなっている。
また雑誌の記事、読者からの手紙、インターネットの掲示板のスレッド、
インタビューのテープ起こしなど色々な媒体、色々な年代の話があるので
飽きさせない構成になっているのも特徴。
一見すれば雑多な記事に見えるけれど、
失踪した小沢君の追体験のような感覚を味わうことができるものになっている。
ただの怪談の寄せ集めではなく、
「近畿地方のある場所(作中では●●●●●と表記されている)」
に何かがあるというミステリー的な要素もあるストーリー構成になっているのが
良かったし、それが話題になった大きな要因かなと思う。
私はホラーが苦手ということもあり、
結構怖くて背筋が凍ったりもしたし、途中まではかなり物語に入りこんで
読むことができた。
ただ途中からは、どうしても同じ話の繰り返しでマンネリ感があったのと、
オチがかなり安っぽいのでガッカリしてしまった。
あと個人的にはもう少しミステリーというか、
明確な答えのようなものを期待していたので期待外れだった。
ある程度評判になるのも分かるけれど、
一方でそこまで評価されるものなのか?というのが率直な感想。
もっともホラーとミステリー要素がある作品が好きで、
しかも考察を楽しみたい方にはおすすめで、
ネットで考察をしてる方が多くいるので、それ込みであればかなり楽しめると思う。
ちなみに実際の書籍だと巻末に袋綴じで資料として写真が収録されている
ネタバレありの感想
まず個人的に面白かったのは「ネット収集情報3」の
ネット掲示板の「関西軍曹」のスレッド。
本なので右揃えになっているので読みにくいのが難点だけれど、
それ以外は掲示板の雰囲気が出ていて良かったし、
「関西軍曹」が何かに巻き込まれていく感じや、
「Aylg8wLma」の書き込みも含めて結構クオリティが高かった。
あとは私がミステリーが好きだというのもあるけれど、
「インタビューのテープ起こし3」の女流ホラー作家へのインタビューで、
●●●●●で起こる怪談の考察も非常に面白かった。
怪談の元ネタというか、どういう経緯で怪談が生まれたかというのを取材によって
突き止めているのは興味深かったし、こういうのを読みたかった。
ただ怪談に関しては、『山へ誘うモノ』『赤い女』『呪いのシール』と
三種類あったり、山の東側と西側に別れていたりと結構複雑になっているので
もうちょっとシンプルでも良かったと思う。
あとは作中の『近畿地方のある場所について』で振り返る構成になっているけれど、
そこでタイトルだけ出されても内容をすぐには思い出せず、
読み返す必要があったので、結構読みづらい面もあった。
作中に写真があった方が間違いなく怖かったはずなので、
袋綴じなのはちょっと理解できなかった。
オチとしては文章の作者が呪いを広めているというもの。
これに関しては作中で
「『近畿地方のある場所について』はこれでおしまいです」と
何度も強調されていることから想像しやすいオチになっている。
個人的にはあまり好きなオチではないけれど、
ホラーだとこういうオチになりがちなのかなと思った。
私はミステリー(謎)が好きなので、女流ホラー作家の話や
ましろさまの由来の話などのように
何かしら根拠になるようなものがあるのが好み。
しかもましろさまの話は神社や祠が急ごしらえで作られたものではないようで、
意味深というか何かしら匂わせるようになっているので、
ちょっと怖いのと考察する余地があるのが良かった。
正直自分で考察をするのは結構大変で、
作中だと時系列もバラバラなのでかなりの労力がいるのが難点。
しかも目次もないのでかなり手間がかかる。
もっともそれを除けば
ホラーとミステリーの融合的な作品で、
ネットの考察を含めれば結構楽しめるものになっていた。
背筋さんの『穢れた聖地巡礼について』の感想はこちら。
