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【米澤穂信】『氷菓』についての解説と感想

本記事では米澤穂信さんの『氷菓』を紹介します。

古典部シリーズの一作目である。

氷菓

氷菓

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA

ページ数:224ページ

読了日:2023年8月15日

 

米澤穂信さんの『氷菓』。

米澤さんのデビュー作であり、古典部シリーズの第一弾。

2012年にテレビアニメ化と漫画化されている。

また2017年には山崎賢人さんと広瀬アリスさんで実写映画化もされている。

 

あらすじ

神山高校に入学した折木奉太郎は省エネを信条としているが、

姉の供恵の勧めで半ば強引に古典部に入部することになった。

古典部には一年生の千反田えるも入部していた。

千反田の誘いに応じて奉太郎の親友である福部里志古典部に入部することになった。

日常の謎を解き明かす奉太郎を見て千反田はある頼みをする。

それは千反田の伯父で現在は行方不明になっている古典部出身の関谷純とのことで、

幼い頃に関谷に古典部について話を聞き千反田が泣き出してしまった、

その理由を思い出させてほしいと頼まれる。

奉太郎は手伝いはすると答える。

 

登場人物

折木奉太郎:神山高校一年B組。「やらなくてもいいことなら、やらない。

       やらなければいけないことなら手短に」の省エネ主義者。

       姉の手紙により古典部に入部することに。

千反田える:神山高校一年A組。一身上の都合で古典部に入部。古典部部長。

福部里志:神山高校一年。奉太郎の旧友。手芸部古典部員。総務委員会。

      データベースを自認している。

伊原摩耶花:神山高校一年。漫画研究会と図書委員会。里志を追って古典部に入部。

       奉太郎とは小学生以来の付き合いで、九年間クラスが一緒だった。

・遠垣内:三年E組。壁新聞部部長。

・折木供恵:奉太郎の姉。大学生。古典部OG。特技は合気道柔術

・関谷純:千反田の叔父。七年前から行方不明。

糸魚川養子:神山高校の教師。司書。

 

ネタバレなしの感想

米澤さんのデビュー作であり、古典部シリーズの一作目。

部員がいなくなった古典部折木奉太郎たちが入部し日常の謎を解き明かしていく。

奉太郎たちが神山高校に入学した直後の四月から夏休み中の活躍を描いている。

(エピローグ的に文化祭直前も描かれてはいる。)

 

まず『氷菓』はかなり前に読んだことがあって、

他の古典部シリーズも読んでいて結構好きではある。

ただ『氷菓』の評価(駄洒落ではない)になると正直いまいちかなと、

そして今回読んでもその評価は変わらなかった。

なぜかというと本書の最大の謎は

千反田が昔に伯父である関谷純と交わした会話なんだけれど、

これに全く興味が持てないからである。

そして、興味が持てないことは今回も特に変わらなかった。

 

日常の不思議な謎を次々と解き明かしていくというのは面白いとは思うんだけれど、

千反田と関谷の会話に限らず謎としてかなり弱いかなと。

面白かったのは強いて言えば生物講義室の遠垣内の話かな。

 

200ページちょっとだし、

それほど肩肘張らずに読める話ではあるとは思います。

 

ネタバレありの感想

日常の謎を解き明かしていくのが『氷菓』の特徴だと思うけれど、

この謎の弱さと真相の普通さが本の評価になってしまう。

特に一番最初の教室の鍵とその真相が特に弱いのがな。

 

そして、本書の最大の謎である千反田と関谷の会話であり、

古典部の文集『氷菓』に込められた意味が駄洒落である。

私は過去に読んだ本の内容は忘れてることが多いんだけれど、

氷菓』のオチだけはかなりはっきり覚えていた。

アイ・スクリームで駄洒落かよっていう。

なのである意味ではインパクトはある話だと思う。

 

厳密には駄洒落だけはなく三十三年前の関谷純に関わる話ではあるんだけど、

私の読解力というか共感力の無さであまり感情移入もできなかった。

最初に提示される謎としての千反田と関谷の会話自体が私からすると弱く感じるのと、

作中において関谷純を知っているのは千反田えると最後に登場する糸魚川教諭だけ。

千反田もあくまで幼少時の話に過ぎないので、

関谷という人がそこまで実体を伴ってない印象がある。

 

謎重視とも言えないし、

かといってそこまで各キャラクターの機微が描かれているのかと言われると

私にはそうは思えなかったというのが正直なところである。

 

ちなみに私が気になったのは折木供恵で、奉太郎の手紙の精神操作じゃないけど、

どこまで物事を把握してたのかが結構謎かなと。