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【伊坂幸太郎】『777 トリプルセブン』についての解説と感想

本記事では伊坂幸太郎さんの小説『777 トリプルセブン』を紹介します。

殺し屋シリーズの四作目です。

777 トリプルセブン

777 トリプルセブン

著者:伊坂幸太郎

出版社:KADOKAWA(単行本)

ページ数:296ページ

読了日:2023年11月26日

 

伊坂幸太郎さんの『777 トリプルセブン』。

殺し屋シリーズの第四弾で、

『マリアビートル』に登場した天道虫こと七尾が再び登場する長編。

このミステリーがすごい!2024年版」15位。

 

あらすじ

ツキに見放された殺し屋の「天道虫」こと七尾。

七尾はウィントンパレスホテルに宿泊中の男を訊ね、

娘からの誕生日プレゼントを届ける簡単な仕事だったが、

あるアクシデントで男が死亡したことから、次々とトラブルが発生する。

一方、超人的な記憶力を持つ紙野結花は乾のもとを離れて、

同じホテルに身を潜めていた。

だが、足取りがバレて殺し屋たちがホテルに集結する事態になってしまう。

紙野結花を守ることになった七尾の運命は?

 

登場人物

・七尾:殺し屋。通称天道虫。

・真莉亜:仲介屋。仕事の依頼を受け、七尾に指示を出す女性。

 

・紙野結花:驚異的な記憶力を持っている女性。乾のもとで働いていた。

・ココ:逃がし屋。ハッキングが得意。六十代。

・乾:紙野結花を追っている男性。政治家や警察関係の仕事を引き受けている。

 

・モウフ:殺し屋。マクラと組んで仕事をしている。

・マクラ:殺し屋。モウフとは高校のバスケットボール部で一緒だった。

 

・蓬実篤:情報局の長官。三年前に妻子を交通事故によって失っている。

     十五年前に都内の列車内で男が刃物を振り回す事件で、

     佐藤秘書とともに犯人を取り押さえた。五十代半ば。

・佐藤:蓬実篤の秘書。

・池尾充:ニュースネットの記者。

 

・高良:殺し屋。以前は海外で爆発物を処理するサービスの会社を経営していた。

・奏田:殺し屋。高良の弟分。

 

エド:殺し屋。グループを仕切っている。男性。三十五歳。

・アスカ:殺し屋。女性。二十三歳。

・ナラ:殺し屋。女性。二十三歳。身長は百七十五センチメートル。

・ヘイアン:殺し屋。女性。二十八歳。小柄。

・カマクラ:殺し屋。男性。二十六歳。

センゴク:殺し屋。三十歳。身体が大きい。

 

・原あかね:ウィントンパレスホテルの支配人。

・田邊:ウィントンパレスホテルのポーター。

 

ネタバレなしの感想

殺し屋シリーズの四作目、

殺し屋シリーズを読んでいなくても楽しめるとは思うけれど、

『マリアビートル』は読んでからの方が無難かもしれない。

三作目の『AX アックス』とは変わって、長編になっている。

物語の舞台はウィントンパレスホテルになっていて、

ホテルに身を潜めた驚異的な記憶力を備えた・紙野結花を狙って

殺し屋たちが集まってくる。

七尾、紙野結花、モウフとマクラ、エド率いる六人の殺し屋、

そして蓬情報局長官パートで進んでいく群像劇形式。

 

話としては『マリアビートル』に近い感じで、

よりアクション要素というか殺し屋対殺し屋の話に比重が置かれているかな。

『マリアビートル』が楽しめたのであれば、読んで損はしないだろう。

私は文句なく楽しめました。

 

 

ネタバレありの感想

まずストーリーのメインの紙野結花の逃走に関しては、

ココのハッキング能力によってエド達から

もうちょっとうまく逃げ切れるのかと思ったら、

結構あっさりココが退場したのは意外だったな。

しかし、それによって七尾が登場して、七尾の活躍が見られたので良しとしよう。

高良と奏田はできれば二人の掛け合いを見たかったけれど、

そうすると蜜柑と檸檬と比較しそうなので、これはこれで良かったのかな。

ただ、高良のリンゴはリンゴになればいいという台詞は印象には残るし、

その後も物語的に七尾やモウフとマクラにも影響を与えている。

 

エド達六人組は好きになれる要素が一切なかったし、

あくまで紙野結花を追う殺し屋以上の役割は無かったかな。

モウフとマクラ、蓬長官がどういう形で物語に関わってくるのかが

予想できなかったけど、終盤の展開は想像以上だった。

 

本を最後まで読むと、乾と蓬長官は好対照の二人として描かれていて、

目的のために乾は悪いイメージを流していて、

蓬長官は自分のイメージをよくするために自作自演までしているのが分かる。

でも、読んでる時は全く分からなかったから、

終盤の乾と蓬長官のシーンは予想外過ぎたのもあって、かなり興奮して読めた。

今までの伊坂さんの作品の伏線の使い方とはかなり変わっているのもあって、

余計驚きがあった。

 

ラストの七尾と真莉亜とココとウィントンパレスホテルのレストランシーンで、

チーズケーキに柚子胡椒ということで紙野結花はレストランの厨房で

働いていることが推測できる。

同じレストランのシーンでコーラ(高良)とソーダ(奏田)が登場するのは、

『マリアビートル』の蜜柑と檸檬の復活のセルフオマージュかな。

 

ココもマクラもモウフも生き残るのは、

予想外だったけれどこちらは良い意味での予想外なので良かった。

 

蓬が列車内で刃物を振り回した犯人を取り押さえたのが十五年前で、

P36で業者殺しの話が出てくるけど、十五年前と言っているので、

しっかりと読んでいれば何かしらの関係性があるという推測は

できるようになっているけど、私は全く分からなかった。

 

P47では乾が「床をばんばん踏み鳴らして、情緒が不安定で」

とあって、これも伏線になっているけど、

最初読んだ時はただの情緒不安定としか思えないかな。

 

P97の「やるな、という方が効果的」というのはP201の「中を開けないで」の伏線。

P110の縦読みはP270の縦読みの伏線。

P140の乾は「誰かを踏み潰すこと」ではなく「復讐」を

考えてうっとりしているのかな。

 

シリーズものとしては回想で兜と七尾の絡みが描かれていて、

また蜜柑と檸檬と名前が登場している。

シリーズ皆勤賞の押し屋の槿は今作では登場していない。