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【伊坂幸太郎】『PK』についての解説と感想

本記事では伊坂幸太郎さんの小説『PK』を紹介します。

PK

PK 新装版

著者:伊坂幸太郎

出版社:講談社

ページ数:272ページ

読了日:2023年11月22日

 

伊坂幸太郎さんの『PK』。

「PK」「超人」「密使」の中編が三篇収録されている。

 

・PK

あらすじ

大臣は秘書官に調査を依頼する。

その依頼とは、十年前のフランスワールドカップの最終予選の対イラク戦、

小津選手はなぜPKを決めることができたのか?

 

登場人物

Aに登場

・小津:サッカー日本代表のエース。

・宇野:サッカー日本代表ミッドフィルダー。小津とは幼なじみ。

Bに登場

・作家:小説家。妻と二人の子供がいる。

Cに登場

・大臣:先月、五十七歳にして大臣になった。

・秘書官:大臣の秘書官。

Dに登場

・男:新宿の居酒屋にいる男。

・女:新宿の居酒屋にいる女。

Eに登場

・議員:若手議員。

 

・超人

あらすじ

小説家の三島の家に警備会社の営業社員の本田が訪れる。

本田は特殊な力があり、未来が分かると言いだすが。

 

登場人物

・三島:小説家。東京レッドジンジャーのファン。

・田中:三島の助手のようなもの。妻とは別居中。

・本田鞠夫:警備会社の営業社員。

 

・大臣:就任二か月の大臣。五十七歳。

 

・密室

あらすじ

大学生の三上は、

日付が変わる直前の「23:59」で時計が止まっている現象に遭遇する。

三上は、この現象にはある法則があることを把握することになる。

 

登場人物

・三上:「僕」の主人公。

・私:「私」の主人公。

青木豊:計測技師長。

 

ネタバレなしの感想

基本的には短編ごとに感想書いた方が良いのかもしれないけど、

あまりにも難しいので長編の形式で感想を書いていく。

 

ネタバレなしで感想を書くのがものすごく難しい本で、

しかも、内容が内容なので是非読んで欲しいともお勧めできない。

決してつまらないわけではないけれど、

かなり曖昧でフワッとした感想になってしまう。

 

解説から引用させてもらうと、

「PK」「超人」「密使」の三篇が収録されていて、未来三部作とも呼ばれている。

この三篇を最後まで読むと、一つの長編になっているという形式。

なので形式的には連作短編集に近いのかな。

で、問題はこれを一回何も事前情報もなく読んで面白く感じるのか?と問われれば、

ハッキリと面白いとは言えないかなとなる。

「PK」の段階で何となくフワッとするものは感じるし、

読み進めればより感じるんだけれど、・・・という感じになっている。

伊坂さんらしい登場人物や台詞もあるので、

伊坂さんの本を読んでるなら読んで良いと思うけれど、

はじめて読むのならお薦めはできないかな。

あとがきとネット検索は必須の本だと思う。

 

 

ネタバレありの感想

「PK」と「超人」は要は未来からの介入が描かれていて、

それにどう立ち向かうか?が話のテーマになっているのかな。

そして、その種明かし的な話が「密使」になっているということでいいのかな。

 

「PK」に関しては小津も、作家も、大臣も直接的間接的に

未来からの介入が描かれていて、勇気を試されている。

また居酒屋パートの「予知能力を持った殺人鬼」の「超人」の本田鞠夫かな。

大臣の秘書官が次郎君と同じ傷を持っていることから秘書官は次郎君だろうけど、

次郎君も未来人ということでいいのかな。

 

「超人」の本田鞠夫も予言メールを信じて加害者となるべき人間を殺していた。

そして、本田鞠夫を赤ん坊時代に救った議員で今は大臣の名前が

次の加害者として予言メールで送られてくる。

大臣と会った三島は殺すか迷うが、青い服の男の登場もあり、

未来はひとまず変わったことがメールで分かる。

青い服の男は壁を透視していることから、三島で、

三島もまた未来人か未来人と関わりのある人物かな。

 

「密使」のゴキブリ計画が成功したのが「PK」で、

時間スリ計画が成功したのが「超人」世界。

私パートの語り手は最初は女性と思わせておいて、

P227のあなたの好みと思しき、女性たちも複数います。

から男性で、

P241の落下する感覚があった。~どこかの幼児とつながった。

から本田鞠夫と思われる。

 

青木豊計測技師長は

P191で蟻の話をするが、

P25で蟻の話をする作家に改稿を求める改稿を求める背広を着た男かな。

 

ダイエット商品のコピーは

「PK」がP67の「あなたの今までのやり方よりも、もっと簡単で、もっと効果的な」

「超人」がP94の「今までのあなたのやり方より効率的です」

「密使」がP171の「こんな特別なやり方があるのです。

あなたの知っているやり方よりも、もっと効率的で、ずっとリーズナブルなものが」

で、おそらく同年代でいいのかな。

 

考察とまでは言えないけど、こんな感じで良いのかな。

テーマとか描いてあることはかなり好きなんだけれど、

やはりかなりフワッとした感じがあるので、最後まで読んでもスッキリはしないかな。

決して読後感そのものが悪いわけではないけれど。

 

「時間スリ」のような微妙な能力を考えて、それを物語に使うのは流石。

 

作中にあった言葉で、オーストラリアの心理学者アドラー

「勇気とは、勇気を持っている人間からしか学ぶことができない」は、

かなり印象に残った。