【東野圭吾】『マスカレード・イブ』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『マスカレード・イブ』を紹介します。
マスカレードシリーズの二作目である。

 

東野圭吾さんの『マスカレード・イブ』。

マスカレードシリーズの第二弾、四篇収録の短編集。

『マスカレード・ホテル』の前日譚になっている。

 

・それぞれの仮面

あらすじ

山岸尚美がホテル・コルテシア東京に就職してから四年、

当初の希望だったフロントオフィスに配属されて一か月あまり経過した頃、

山岸の大学時代の彼氏・宮原隆司が客としてホテルを訪れる。

その宮原から山岸の携帯電話に連絡があり、

愛人が自殺を仄めかして失踪してしまったと相談してきたので、

山岸は愛人を捜そうとするが。

 

登場人物

・山岸尚美:フロントクラーク。入社四年目。

・宮原隆司:宿泊客。山岸尚美の元恋人。

      大山プロダクション勤務で大山将弘のマネージャー兼運転手。

・大山将弘:宿泊客。元プロ野球選手で現在はタレントや野球解説をしている。

・西村美枝子:宿泊客。スタイルの良い二十代後半の女性。

・久我:山岸尚美の先輩フロントクラーク。

・杉下:山岸尚美の一年先輩のベルボーイ。

 

ネタバレありの感想

山岸尚美の過去と失踪した女性の行方の話。

正直ミステリーとしては普通としか言えない、

ただ不倫相手の西村美枝子の計算高さもあるので、暗くはなってないのが救い。

久我のプレジデンシャル・スイート以外は満室というやり方見てると、

とても一流ホテルとは思えないけど、一流ホテルでもこんなやり方するんだろうか。

 

・ルーキー登場

あらすじ

警視庁捜査一課に配属されたばかりの新田浩介は、

飲食店を経営する実業家がホワイトデーの夜に殺された事件の捜査を

担当することになった。

新田はふとした閃きから犯人の偽装工作を見抜き、事件の犯人を逮捕するが。

 

登場人物

・新田浩介:警視庁捜査一課の刑事。

・本宮:警視庁捜査一課の刑事。新田浩介の先輩。

・稲垣:警視庁捜査一課の係長。

・田所美千代:料理教室を開いている。三十七歳。

・田所昇一:事件の被害者。田所美千代の夫。多くの飲食店を経営する実業家。

・岩倉:田所昇一の部下。

・横森仁志:田所美千代の料理教室の生徒。現在休職中。

 

ネタバレありの感想

長編では最近はなかなか見ることができない、東野さん特有の怖い女性が登場する話。

横森仁志が犯人で一件落着ではなく、真相としては、

田所美千代が横森をうまく誘って田所昇一を殺させたという話。

これはマスカレードというテーマに合致して、それなりに面白かった。

 

・仮面と覆面

あらすじ

五人のオタクグループがホテル・コルテシア東京に宿泊することになった。

その目的は、美人で知られる人気女流作家タチバナサクラが、

ホテル・コルテシア東京に宿泊することを知り、会うためだった。

そのことを知った山岸尚美は、トラブル回避のために出版社の望月に連絡をする。

その望月の説明によれば、

タチバナサクラの正体は玉村薫という中年の男性ということだった。

小説を執筆するために、缶詰め状態で宿泊しているはずの

玉村がたびたび外出しているのを山岸が見かけて。

 

登場人物

・山岸尚美:フロントクラーク。

・久我:フロントオフィス・マネージャー。

・望月和郎:一ツ橋出版の社員。

・玉村薫:五十歳前後の小太りの男性。

・目黒和則:オタクグループ五人組の一人。

・犬飼:オタクグループ五人組の一人。

・今村祐二:灸英社の文芸書籍編集部勤務。

 

ネタバレありの感想

覆面作家の仮面をオタクたちから守ろうとする話だけど、

一捻りあって、正体だと思った中年男性ではなく、その娘が作家だったというオチ。

ただ、別に娘が示唆されていたわけでもないので、ミステリー小説としては並。

 

 

・マスカレード・イブ

あらすじ

ホテル・コルテシア大阪がオープンして一か月、

山岸尚美は教育係兼応援として大阪で勤務をすることになった。

一方、東京では大学教授の岡島孝雄が殺される事件が発生。

この事件に新田浩介は、所轄の穂積理沙とコンビを組んで捜査にあたることになった。

容疑者として南原定之准教授が浮上し、

岡島が殺された十月三日のアリバイについて南原は、

当初京都のホテルにいたと主張するが、

警察の捜査によって当日ホテルの部屋は使用されていないことが明らかになる。

新田の追及によって十月三日は、

ホテル・コルテシア大阪に宿泊したことを認めたが。

 

登場人物

・新田浩介:警視庁捜査一課の刑事。

・山岸尚美:コルテシア大阪へ教育係兼応援としてやってきている。

・穂積理沙:八王子南署の生活安全課の刑事。

・本宮:警視庁捜査一課の刑事。新田浩介の先輩。

・稲垣:警視庁捜査一課の係長。

・岡島孝雄:事件の被害者。泰鵬大学理工学部の教授。

・南原定之:泰鵬大学理工学部の准教授。岡島孝雄と共同研究に参加していた。

・山本:岡島孝雄の研究室の助手。

・鈴木:岡島孝雄の研究室のの学生。

・藤木:コルテシア東京の総支配人。

・田代:コルテシア大阪の若手フロントクラーク。

・吉村:コルテシア大阪のアシスタント・マネージャー。

・畑山玲子:美容サロンやフィットネスクラブを手がけている実業家。

・前村:畑山玲子が経営する美容サロンの店長。

・矢部義之:畑山玲子の夫。畑山玲子が経営する会社の専務取締役。

・伊村由里:八月二日に絞殺された女性。銀座のクラブに勤務していた。

・畑山輝信:畑山玲子の父親。意識不明の状態。

 

ネタバレありの感想

これは中編ぐらいの長さになっていて、新田浩介と山岸尚美の二人とも出てくる話。

事件の真相としては交換殺人なんだけれど、

畑山玲子が言う南原定之に完璧なアリバイが

あるとまずいという理由は全く分からなかった。

穂積理沙の存在といい、

映像化を想定してるんだろうなという感想以上のものは出てこなかった。

エピローグでは前作『マスカレード・ホテル』の事件の原因が描かれている。

 

総評

『マスカレード・ホテル』の続編ということもあって、

完全にマスカレードシリーズを読んだ人向けという感じになっている。

正直今作だけ読んでも全く面白くはないんじゃないかな。

ミステリーとしては、これといった際立ったものはなくて、

新田浩介や山岸尚美というキャラクターが好きな人向けになっている。

全編通して仮面(マスカレード)を共通のテーマにして描かれている。