本記事では宮島未奈さんの小説『成瀬は信じた道をいく』を紹介します。
成瀬シリーズの二作目である。
成瀬は信じた道をいく
著者:宮島未奈
出版社:新潮社
ページ数:208ページ
読了日:2024年3月16日
満足度:★★★☆☆
宮島未奈さんの『成瀬は信じた道をいく』。
成瀬シリーズの第二弾で、五篇収録の連作短編集。
・ときめきっ子タイム
あらすじ
ときめき小学校四年生の北川みらいは、
十月の「総合学習の時間」であるときめきっ子タイムで、
ときめき地区で活動している人を調べて発表することになった。
みらいは、ときめき夏祭りで出会ったゼゼカラの成瀬あかりのことを調べようとする。
登場人物
・成瀬あかり:膳所高校三年生。
・島崎みゆき:大津高校三年生。
・北川みらい:大津市立ときめき小学校四年四組の三班。
・野原結芽:大津市立ときめき小学校四年四組の三班。
・くらっち:大津市立ときめき小学校四年四組の三班。
・たいちゃん:大津市立ときめき小学校四年四組の三班。
ネタバレありの感想
成瀬あかりのことを調べようとする小学生・北川みらいの話。
前半読んだ感じだと無難な話かと思いきや、
野原結芽がみらいのいないところで成瀬の話をしているところからは、
ちょっとだけシリアスな感じになっている。
発表終わりのたいちゃんの言葉は、みらいだけでなく読者も救う。
・成瀬慶彦の憂鬱
あらすじ
成瀬慶彦は京都大学の入試を控えている娘のあかりが、
ネットで「一人暮らし」の物件を調べていることを卒倒しそうになった。
京大の二次試験の日に慶彦はあかりの付き添うことになったが。
登場人物
・成瀬あかり:膳所高校三年生。
・成瀬慶彦:成瀬あかりの父親。
・成瀬美美子:成瀬あかりの母親。成瀬慶彦の妻。
・城山友樹:京大工学部の受験生。
・島崎みゆき:東京の私立大学に合格している。
ネタバレありの感想
成瀬あかりの父親・慶彦視点で、あかりの京都大学受験の話が描かれている。
あかりが一人暮らしを考えているか?と受験生のYouTuberの登場などがあるけど、
話としてはあかりの家族の話という感じかな。
・やめたいクレーマー
あらすじ
クレーマーの暮間言実は、
フレンドマート大津打出浜店でいつものようにマイボールペンでお客様の声を
記入していると、名札に「成瀬」と書かれている店員から声をかけられる。
登場人物
・暮間言実:クレーマーの主婦。三十六歳。
・暮間祐生:暮間言実の夫。
・成瀬あかり:京都大学一回生。
フレンドマート大津打出浜店でアルバイトをしている。
・北川みらい:ときめき小学校の五年生。
ネタバレありの感想
あかりがアルバイトをしているスーパーにクレームをつける主婦・暮間言実の話。
クレームといっても理不尽なものではなく、論理的な話ではあるので、
読んでいて不快感は特にないし、
あかりは言実のクレームを参考になると評価するぐらい。
万引き犯をババア呼ばわりする言実や最後のオチなど、笑いどころもあって良かった。
・コンビーフはうまい
あらすじ
祖母、母と三代続けてびわ湖大津観光大使になった篠原かれんは、
パートナーの成瀬あかりと共にびわ湖大津を全国各地にPRしていくことになる。
登場人物
母のゆりえと祖母の景子も大津市の観光大使を務めた経験がある。
・篠原裕介:篠原かれんの兄。東京の大学で機械工学を勉強している。
・藤野:観光協会勤務。
・米田:観光協会勤務。
ネタバレありの感想
あかりと接する機会も多く、それによってあかりの影響を受けるのもあって、
前作に通じるものがあって良かった。
他人に及ぼす影響力こそあかりの魅力かな。
・探さないでください
あらすじ
大晦日、サプライズで成瀬あかりの家を訪ねた島崎みゆきは、
「探さないでください あかり」という書置きを残して成瀬が消えたことを、
告げられる。
成瀬の父と共にあかりは成瀬を探しに行くことに。
登場人物
・島崎みゆき:東京の大学生。
幼なじみの成瀬あかりとゼゼカラというコンビを組んでいる
・成瀬あかり:京都大学一回生。
・成瀬慶彦:成瀬あかりの父親。
・北川みらい:ときめき小学校の五年生。
成瀬に弟子入りして、ときめき地区のパトロールをしている。
・暮間言実:フレンドマート大津打出浜店の常連客。
・暮間祐生:暮間言実の夫。
ネタバレありの感想
ゼゼカラの島崎みゆき視点で前四編に登場した人物が登場する最後の締めの話。
舞台も大晦日で久しぶりに島崎視点ということもあり、切なさも感じさせる話。
去年の紅白でけん玉が話題になったのもあって、
タイムリーといえばタイムリーなこともあって、結構面白かった。
二〇二五年の大晦日らから二〇二六年の正月が描かれている。
総評
成瀬シリーズの二作目で、前作を読んだ後は続きは出ないかなと思っていた。
もっとも売れているみたいだし、映像化もし易そうではあるので、
続編が出ること自体はそこまで驚きはないか。
今作は、成瀬あかりの高校三年から大学一年の正月までを描いている連作短編集。
前作のインパクトに比べると、どうしても落ちてしまうけど、
それでも成瀬と周囲の人々の話で楽しむことができた。
「コンビーフはうまい」と「探さないでください」は、
成瀬の魅力も出てたしストーリーそのものも良かった。