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【米澤穂信】『クドリャフカの順番』についての解説と感想

本記事では米澤穂信さんの小説『クドリャフカの順番』を紹介します。

古典部シリーズの三作目である。

クドリャフカの順番

クドリャフカの順番

著者:米澤穂信

出版社:KADOKAWA

ページ数:400ページ

読了日:2024年1月22日

 

米澤穂信さんの『クドリャフカの順番』。

古典部シリーズの第三弾である。

氷菓』のタイトルでアニメ化と漫画化がされている。

 

あらすじ

神山高校で待望の文化祭『カンヤ祭』がはじまった。

だが、折木奉太郎が所属する古典部では、トラブルが発生していて、

出品する文集『氷菓』を大量に作りすぎてしまった。

そのため、文集を売る売り場を増やそうと奔走する千反田える

文化祭を楽しみながらも文集を宣伝しようとする福部里志

発注ミスの責任を感じながらも漫画研究会で文集を売ろうとする伊原摩耶花

そして店番をする奉太郎。

そんな中、学内では奇妙な連続盗難事件が発生していた。

盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲、この事件を解決して、

古典部をPRすることによって、部の知名度を上げて、文集の完売を目指そうとするが。

 

登場人物

折木奉太郎:神山高校一年B組。「やらなくてもいいことなら、やらない。

       やらなければいけないことなら手短に」の省エネ主義者。古典部

千反田える:神山高校一年A組。古典部部長。

福部里志:神山高校一年。奉太郎の旧友。手芸部古典部員。総務委員会。

      データベースを自認している。ホームジストに憧れている。

伊原摩耶花:神山高校一年。古典部と漫画研究会と図書委員会。

       奉太郎とは小学生以来の付き合いで、九年間クラスが一緒だった。

 

・谷惟之:神山高校一年。囲碁部。福部里志のクラスメイト。

・十文字かほ:神山高校一年。占い研究会。実家は荒楠神社。

       福部里志のクラスメイト。

・須原:神山高校一年B組。本町の『みらく』の息子。

・高村洋一:神山高校一年B組。奇術部。

・入須冬実:神山高校二年F組。渾名は女帝。

・沢木口美崎:神山高校二年F組。

・田名辺治朗:神山高校二年。総務委員長。

・湯浅尚子:神山高校二年。漫画研究会部長。

・河内亜也子:神山高校二年。漫画研究会。

・羽場智博:神山高校二年F組。探偵小説研究会所属。

・吉野康邦:神山高校二年。放送部部長。

・田山:神山高校二年。奇術部部長。

・陸山宗芳:神山高校二年。神山高校生徒会長。カンヤ祭実行委員長。

・清水紀子:神山高校三年E組。

・遠垣内将司:神山高校三年。壁新聞だったが今は引退している。

安城春菜:『夕べには骸に』の原作者。

      以前は神山高校の生徒だったが、今は転校してしまっている。

 

ネタバレなしの感想

今作は『氷菓』と『愚者のエンドロール』にも話として出てきた

神山高校文化祭・通称カンヤ祭の三日間が描かれている。

前二作は基本的には折木奉太郎視点であったのに対して、

今作は折木奉太郎千反田える福部里志伊原摩耶花

四人の視点で描かれているのも特徴の一つ。

なので、千反田える福部里志伊原摩耶花が、

それぞれどういうキャラクターなのかが、より分かるようになっている。

 

物語は文集を大量発注してしまったために、

文集を売ろうと悪戦苦闘するわけだが、

その中で『十文字事件』という連続盗難事件が発生する。

その事件を解決することによって文集を売ろうと目論む古典部

メンバーというところ。

ミステリーに関しては米澤穂信さんなのでフェアでかなり論理的になっているので、

安心して読めるだろう。

 

以前読んだことはあるので真犯人が誰かは何となく覚えていたんだけれど、

犯人を特定する手がかりや伏線、論理的な帰結は流石の一言。

また、構成的にも本題とは関係ないのかと思っていたものが、

最後に絡んでくるのも見事。

ただ、私としては文化祭というイベントを通しての

古典部のメンバーを見ることができただけで満足かな。

前二作の登場人物もちょいちょい登場するのもあって、

シリーズものの良さが発揮されている。

 

 

ネタバレありの感想

真犯人が総務会長の田名辺治朗で10Pからのしおりがヒントになっているのだけは

何となく覚えていたんだけれど、

『夕べには骸に』の作者が三人関わっていて、

安城春菜以外に陸山宗芳と田名辺治朗というのは全く覚えていなかったのもあって、

素直に驚いた。

あと、伊原摩耶花のパートが途中まではどう物語に関わってくるのか

分からなかったけれど、

『夕べには骸に』が事件の根幹にあるのでしっかりと意味があったことにも

新鮮な驚きがあった。

ただ、伊原摩耶花のパートは読んでいて、そこまで愉快じゃないのはいまいち。

もっとも、最終的には河内亜也子との話は悪くはないけれど。

 

ミステリーとは関係ない部分だと福部里志は能動的存在なのもあって、

読んでいて面白いのと、折木奉太郎は店番ということで受動的なんだけど、

長者プロトコルもあって物語にちょいちょい絡んでくるのは良かった。

 

一作目の『氷菓』のあとがきにあった寿司事件の解決は本書の中に書かれている。