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【東野圭吾】『疾風ロンド』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『疾風ロンド』を紹介します。
スキー場シリーズ(白銀ジャックシリーズ)の二作目である。

疾風ロンド

疾風ロンド

著者:東野圭吾

出版社:実業之日本社

ページ数:400ページ

読了日:2024年1月25日

 

東野圭吾さんの『疾風ロンド』。

スキー場シリーズ(白銀ジャックシリーズ)の第二弾である。

阿部寛さん主演で2016年に映画化されている。

 

あらすじ

泰鵬大学医科学研究所の研究員の葛原克也は

遺伝子操作によってワクチンが効かなくなった炭疽菌・『K-55』を作り出した。

しかし危険な生物兵器を独断で開発したのがばれて大学を解雇されてしまう。

医科学研究所の対応に不満を持った葛原は恨みを晴らすべく、

『K-55』を大学から盗み出す。

そして、『K-55』を雪山に埋め、

スキー場らしき場所で撮られたテディベアの写真を医科学研究所所長東郷雅臣に

送りつけ、「この発信器を取り付けたテディベアの下に『K-55』を埋めてある、

このテディベアを見つけることができる方向探知受信機が欲しければ、

三億円を用意しろ。」と脅迫してきた。

東郷と主任研究員の栗林和幸がどう対応するか話し合ってる時に、

警察から電話があり、葛原が事故死したことを伝えられる。

栗林たちは警察署に出向き方向探知受信機を手に入れて、

テディベアを映した写真をもとに『K-55』を探すことになる。

栗林の息子・秀人の活躍もあり里沢温泉スキー場であることを突き止め、

栗林親子は里沢温泉スキー場に向かうことになった。

 

登場人物

・根津昇平:里沢温泉スキー場のパトロール隊員。

・瀬利千晶:スノーボードクロスを得意としているスノーボード選手。

 

・栗林和幸:泰鵬大学医科学研究所の主任研究員。

・栗林秀人:栗林和幸の息子。中学二年生。

・栗林道代:栗林和幸の妻。

・東郷雅臣:泰鵬大学医科学研究所の所長。泰鵬大学生物学部長。

・佐藤:栗林秀人の小学校時代からの友人。中学二年生。

・鈴木:栗林秀人の小学校時代からの友人。中学二年生。

・田中:神田にあるショップのスノーボードフロアの責任者。

・山野:神田にあるショップの店長。

 

・葛原克也:泰鵬大学医科学研究所の元研究員。

・折口真奈美:泰鵬大学医科学研究所の補助研究員。

・折口栄治:折口真奈美の弟。ビジネスで失敗したため、多額の借金を抱えている。

・山崎育美:板山中学二年生。

・川端健太:板山中学二年生。

・高野裕紀:板山中学二年生。川端健太の幼馴染み。

・吉田桃華:板山中学二年生。

・高野誠也:高野裕紀の兄。大学生。『カッコウ』を手伝っている。

・高野望美:故人。高野裕紀の妹。二か月前に亡くなっている。

・高野の父親:『カッコウ』の店長。

・高野の母親:高野裕紀の母親。

・牧田:パトロール班長

・ワタナベカズシゲ:栗林たちと同じホテルに妻と娘のミハルと泊っている男性。

          

ネタバレなしの感想

シリーズ二作目で今作は強力な生物兵器が雪山に埋められていて、

埋められた場所を知りたければ三億円を用意しろと要求されるも、

脅迫してきた犯人が事故死したため、

研究所の研究員の栗林和幸が息子の秀人の協力のもと

方向探知受信機で探そうとするのが物語の導入になっている。

 

私が読んだ文庫本の裏表紙にはミステリーとあるけれど、

ミステリーというよりはサスペンスで、

しかもかなり軽めのサスペンスという感じになっている。

生物兵器を盗まれた大学の東郷雅臣と和幸との会話はコミカルになっていて、

緊迫感を一切感じさせないものになっている。

東郷はあまりにも無責任な人物で、和幸もパッとしない人物になっている。

このメインストーリーに前作に登場した根津昇平と瀬利千晶が出てきたり、

さらには和幸の息子の秀人と地元の中学生の山崎育美の出会いと、

育美の同級生が物語に絡んでくることになる。

前作もかなり軽めの話だったけれど、今作はそれよりもさらに軽くなっているので、

もし読むとするならそれを念頭に置いて読むことをお薦めする。

 

 

ネタバレありの感想

脅迫者そのものが交通事故であっさりと物語から退場してしまうのは、

珍しいのかもしれないけど、そのあとに展開されるのは、

シリアスさ皆無なドタバタコメディのよう。

東郷と栗林和幸はリアルといえばリアルなんだろうけれど、

生物兵器であることを考えると、

あまりにも軽く無責任で読んでいて感情移入できない。

もっとも東郷と和幸の会話を読めば、笑いどころにしているんだろうとは思うけれど。

これに栗林秀人と山崎育美のゲレンデにおける絡みが青春ぽさも相まって、

とにかく軽くなっている。

折口真奈美と栄治の姉弟を登場させて、

最後の盛り上げどころに使おうとしたんだろうけど、

前作と比べてもどうしてもインパクトは薄くなってしまう。

また、高野望美のエピソードも伏線はあったとはいえ、

どうしてもとってつけたような印象が拭えなかった。

ラストの真奈美のオチからしても、肩の力を抜いて読むべき一冊だろう。