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【東野圭吾】『雪煙チェイス』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『雪煙チェイス』を紹介します。
スキー場シリーズ(白銀ジャックシリーズ)の三作目である。

雪煙チェイス

雪煙チェイス

著者:東野圭吾

出版社:実業之日本社

ページ数:416ページ

読了日:2024年1月31日

 

東野圭吾さんの『雪煙チェイス』。

スキー場シリーズ(白銀ジャックシリーズ)の第三弾である。

 

あらすじ

東京都三鷹市N町の一軒家で福丸陣吉という老人が殺される事件が発生した。

大学生の脇坂竜美は、以前に福丸家の犬の散歩のアルバイトをしていたこともあり、

強盗殺人の容疑をかけられてしまう。

このことを知った竜美は、事件当日に遠く離れた新月高原スキー場で出会った

正体不明の美人スノーボーダーにアリバイ証明をしてもらおうとする。

美人スノーボーダーが言った「ホームグラウンドは里沢温泉スキー場」を手がかりに、

大学の友人・波川省吾とともに里沢温泉スキー場に向かう。

一方で福丸老人殺しの捜査を担当することになった所轄の小杉は、

係長の南原から本庁より先に脇坂を逮捕するように指示され、

部下の白井とともに里沢温泉スキー場に向かい、

刑事ということを隠して脇坂を捜すことになる。

その頃、里沢温泉スキー場では、

スキー場を会場にした大々的なゲレンデ・ウェディングが予定されていた。

 

登場人物

・脇坂竜実:開明大学経済学部四年生。

・波川省吾:開明大学法学部四年生。

 

・小杉敦彦:所轄の刑事。

・白井:所轄の刑事。小杉敦彦の後輩。

・南原:所轄の刑事で係長。小杉敦彦の上司。

・大和田:所轄の刑事課長。渾名は下駄。警部。

・花菱:警視庁捜査一課七係の係長。大和田とは警察学校の同期。警部。

 

・根津昇平:里山温泉スキー場のパトロール隊長。

・瀬利千晶:スノーボードクロスの元選手。

・長岡慎太:里山温泉スキー場のパトロール隊員。

・成宮莉央:実家の旅館『板山屋』を手伝いながら、地元のタウン誌を作っている。

      以前は東京の広告代理店勤務。瀬利千晶の親友。

・成宮葉月:成宮莉央の姉。長岡慎太の婚約者。

 

・中条:警視庁捜査一課の刑事。

・松下広樹:開明大学工学部四年生。竜実のアパートの隣の部屋に住んでいる。

・駒井保:開明大学経済学部四年生。

     竜実とは三年生の時にグループ研究で一緒だった。

・藤原:開明大学三年生。『マウンテン・モンキーズ』のリーダー。

・川端由希子:旅館『きなし』と居酒屋『お食事処 きなし』の女将。

・高野誠也:スキー・スノーボード・スクールのガイド。

・高野裕紀:高野誠也の弟。

・川端健太:高野裕紀の小学校からの幼なじみ。

 

・福丸陣吉:事件の被害者。八十歳。

・福丸秀夫:福丸陣吉の息子。

・福丸加世子:福丸秀夫の妻。

・岡倉貞夫:福丸陣吉の友人で碁の好敵手。

 

ネタバレなしの感想

シリーズ三作目で今作は、強盗殺人事件の嫌疑をかけられた大学生の脇坂竜実が、

アリバイを証明してくれる美人スノーボーダーを探しに里山温泉スキー場を訪れる。

それを追うのは「本庁より先に捕らえろ」と命じられた所轄の刑事・小杉敦彦。

これにお馴染みの根津昇平と瀬利千晶が絡んでくるという展開。

また舞台が前作の『疾風ロンド』と同じということもあって、

前作の登場人物も数人再び登場している。

 

タイトル通りチェイス(追跡)ではあるんだけど、前作同様緊迫感はほとんどない。

アリバイを証明してくれる女性を捜す竜実達は、

一応理由はそれなりにしっかりしているが、

強盗殺人事件の嫌疑がかかっている竜実を追う小杉達は、

上司の命令で警視庁より先に捕らえろと命じられただけなので、

あまりやる気が感じられないし、

強盗殺人事件は場合によっては死刑もあることを考えたら、

リアリティがほとんど感じられなかった。

ただ、ストーリー的には一応綺麗にまとまる形にはなっているので、

シリーズ前二作を読んでる方ならある程度は楽しめるかもしれない。

 

 

ネタバレありの感想

裏表紙にどんでん返し連続の痛快ノンストップ・サスペンスとあるように、

最後の方は一応はどんでん返しはある。

ただ、美人スノーボーダーが瀬利千晶だろうと、成宮姉妹のどちらであろうと、

直接的には物語に影響はないので、面白さの評価には直結しにくい。

成宮葉月が美人スノーボーダーの正体であることよりも妊娠していたことにより、

代わりに千晶と根津昇平がゲレンデ・ウェディングを行うことによって、

千晶と根津の関係が明確に変わり無事結婚するというラストにはなっている。

 

物語的には焦点がどこにあるのかがかなり曖昧になっているし、

読んでいても特に盛り上がりどころが分からなく終わってしまった。

良かったのは前作『疾風ロンド』に登場した

高野兄弟や川端健太が登場してることと根津と千晶の関係が明確になったぐらいかな。

あとは一応小杉敦彦も係長の南原に反旗を翻して、真犯人を逮捕することかな。

もっとも福丸老人殺しの方の犯人捜しは物語の本筋とはいえないこともあって、

特にヒントととか伏線にはなっているものはない。

なので淡々と進んで一応は綺麗に終わってるとしか評価しようがない

一冊になっている。