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【東野圭吾】『探偵ガリレオ』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『探偵ガリレオ』を紹介します。
ガリレオシリーズの一作目である。

探偵ガリレオ探偵ガリレオ

著者:東野圭吾

出版社:文藝春秋

ページ数:330ページ

読了日:2023年8月19日

 

東野圭吾さんの『探偵ガリレオ』。

ガリレオシリーズの第一弾。

五篇収録の短編集。

福山雅治さん主演でテレビドラマ化されている。

 

・第一章 燃える(もえる)

あらすじ

花屋通りという地味な道路の道端で突然局所的な火災が起き、

近くにいた若者五人のうち一人が死亡、残る四人は重軽傷という被害が出た。

現場にはガソリンの臭いが充満し、

焼け跡の中から灯油用の赤いポリタンクと思われるものが見つかっている。

ポリタンクに入れてあったガソリンが燃えたと考えられるが

若者たちは自分たちが火をつけたのではないと主張している。

マスコミの言い出したプラズマ説を調べるために

警視庁捜査一課の刑事である草薙は

大学時代の友人の物理学助教授の湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

記念すべきガリレオシリーズの一作目で自然発火現象を扱っている。

湯川はインスタントコーヒー好きで、

あまりきちんと洗ってないマグカップを使ったり、

子供嫌いで一作目からキャラクターは確立している。

犯人は前島と思わせておいての、

実は金森の方なので短編でもしっかり伏線は張られている。

 

・第二章 転写る(うつる)

あらすじ

草薙は姪の文化祭に出かけた時に『変なもの博物館』で

『ゾンビのデスマスク』と説明書きされたものを見かける。

このデスマスクを見て普通ではない反応をしていた女性から草薙は話を聞くと、

夏に行方不明になった兄の柿本進一に酷似しているというものだった。

デスマスクを作ったのは二人の男子生徒でひょうたん池で金属マスクを拾い、

デスマスクを作り、展示品として出品したとのことだった。

そして警察がひょうたん池の捜索を行ったところ、柿本進一の死体が見つかった。

なぜ死体の顔の型が池に落ちていたのかを調べるために草薙は湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

突如として池のほとりに出現したデスマスクの話。

犯人に関しては特に意外性はないかな。

気になったのはアリバイ工作のところで、

柿本進一のアウディを十七日に埼玉県内に放置して、

同じ型の車を十八日に競馬仲間に借りてとあるけれど、

十八日に柿本進一のアウディに乗ってそれから放置すればいいだけなんじゃないかと。

柿本進一が衝撃波の研究をしていたってオチは好き。

 

・第三章 壊死る(くさる)

あらすじ

スーパーマーケットの経営者の高崎邦夫が浴槽に浸かったまま死んでいるのが、

息子により発見された。

医者は死体を見てあまりに奇妙なので警察に届けることにした。

高崎邦夫の右胸に直径十センチほどの灰色の痣ができていて、

解剖の結果、灰色の部分は細胞が完全に壊死していたことが分かった。

死体からは薬物も検出されず、感電死させたところで、

今回のような痣にはならないというのが専門家の話であった。

気分直しで草薙が湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

心臓だけが腐った死体の話。

ミステリーとしてはそのまま聡美が犯人なので驚きはない。

田上の最後の台詞は分かるけれど、

田上も田上で結構腐ってるとしか思えないんだよな。

 

・第四章 爆ぜる(はぜる)

あらすじ

三鷹のアパートで他殺死体が見つかった。

被害者の藤川雄一は帝都大理工学部エネルギー工学科の出身だった。

藤川の部屋から帝都大理工学部の横にある駐車場の写真が見つかったため、

草川は湯川のもとを訪れるが、

湯川は湘南海岸で発生した爆発事件について学生たちと議論していた。

 

ネタバレありの感想

海上における謎の爆死の話。

藤川が横森の車を聞いて、

実際には木島の車にナトリウムを仕掛けるのは小説的にはうまいけれど、

二十台ぐらいの駐車場で横森と木島のだけ分かるものなのか?

本筋とは関係ないけれど、原発関係の話になるとかなり熱量を感じさせる。

 

・第五章 離脱る(ぬける)

あらすじ

杉並にあるマンションの一室で扼殺体が発見された。

現場を調べた草薙は一枚の名刺を見つけ、

保険会社の外交員である栗田信彦から話を聞くことになった。

栗田は事件当日に狛江に車を止めて休んでいたと答えた。

しかし、被害者のマンション付近の女性が事件当日に

栗田の車を見たと証言したことから、栗田に任意出頭を求めることになった。

犯行を認めない栗田、草薙たちは狛江で聞き込みを行うも目撃証言は出てこなかった。

そんな中で一通の手紙が捜査本部の置かれている杉並警察署に届いた。

手紙には息子が事件当日に赤いミニクーパーが停まっているのを見たと記されていた。

ただし、それは息子が幽体離脱をして見たとのことで絵が同封されていた。

ガリレオ先生に相談してこいとの間宮係長の指示で草薙は湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

幽体離脱の話で若干オカルト的なネタ。

幽体離脱の真相自体は面白いんだけれど、上村宏の目的がよく分からなかった。

事件そのものが無ければ、その時間に車があったか、なかったかは

分からないはずだからたいした信ぴょう性を持たないネタに過ぎないよな。

事件の日に編集者に見せる価値があるんだろうか。

フリーライターなので小さなネタでもいいのかもしれないけど。

 

登場人物

・湯川学:帝都大学物理学助教授。理工学部物理学科第十三研究室所属。

     学生時代にバドミントン部に所属していた。三十四歳。

・草薙俊平:警視庁捜査一課の刑事。三十四歳。

      帝都大社会学部出身。大学時代はバドミントン部に所属。

・間宮:警視庁捜査一課の刑事。階級は警部。草薙の上司。

 

第一章 燃えるに登場

・山下良介:事件の被害者。

・向井和彦:事件当時に山下と一緒にいた少年。

・金森龍男:事件現場のすぐ角にあるアパートの住人。前島と親しい。

・前島一之:時田製作所勤務。唖者。

 

第二章 転写るに登場

山辺昭彦:理科クラブに所属。池でマスクを拾い、デスマスクを作った。

・藤本孝夫:理科クラブに所属。山辺の同級生。

・森下百合:草薙の姉。中学生の娘である美沙がいる。

・柿本進一:事件の被害者。歯科医。

・柿本昌代:柿本進一の妻。

・柿本良子:保険会社勤務。柿本進一の姉。

・小野田宏美:音楽教師。柿本良子の学生時代からの友人。

・小塚:草薙と同僚の刑事。競馬ファン

・笹岡寛久:柿本進一の患者。柿本進一に競走馬の購入を持ち掛ける。

 

第三章 壊死るに登場

・内藤聡美:東西電機株式会社埼玉工場勤務。

      夜は『キュリアス』のホステスをしている。

・田上昇一:東西電機株式会社埼玉工場勤務。

・高崎邦夫:事件の被害者。スーパーマーケット経営者。

・高崎紀之:邦夫の息子。大学生。

・橋本妙子:東西電機株式会社埼玉工場勤務。

・河合亜佐美:『キュリアス』のホステス。

 

第四章 爆ぜるに登場

・梅里律子:湘南海岸の爆発事件の被害者。去年まで帝都大学の学生課に勤務。

・梅里尚彦:梅里律子の夫。

・藤川雄一:三鷹のアパートの事件の被害者。帝都大理工学部出身。

・松田武久:帝都大学エネルギー工学科第五研究室の助手。湯川の同期。

・横森:帝都大理工学部の教授。第五研究室所属。

・木島文夫:帝都大理工学部の教授。

・根岸:草薙の後輩の刑事。

 

第五章 離脱るに登場

・上村宏:フリーライター

・上村忠弘:宏の息子。

・竹田幸恵:忠弘のクラスメートの母親。

・長塚多恵子:事件の被害者。

・栗田信彦:保険会社の外交員。

・弓削:草薙の同僚の刑事。草薙の一つ年上。

 

総評

東野圭吾さんの代表作でもあるガリレオシリーズの一作目。

科学を題材にしたミステリーで

ホームズ役が湯川学であり、ワトスン役が草薙俊平になっている。

 

以前読んだこともあったが、改めて読んでみるとミステリーとしても面白いし、

短編でもしっかりと伏線があったりとか、かなりの面白さになっている。

 

エレベーターガールとか多少時代を感じる部分はあるけれど、

今呼んでも特に問題はない。

 

ただ、文庫版の解説を佐野史郎さんが書いていて、

東野圭吾さんは湯川学は佐野史郎さんをイメージして書いていたというのは、

何とも言えない気持ちになるかな。