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【東野圭吾】『真夏の方程式』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『真夏の方程式』を紹介します。
ガリレオシリーズの六作目である。

真夏の方程式

真夏の方程式

著者:東野圭吾

出版社:文藝春秋

ページ数:463ページ

読了日:2023年12月14日

 

東野圭吾さんの『真夏の方程式』。

ガリレオシリーズの第六弾で、長編としては三作目。

「2011「週刊文春」ミステリベスト10」の9位。

福山雅治さん主演で映画化がされている。

 

あらすじ

夏休みを玻璃ヶ浦にある叔母一家が経営する旅館で過ごすことになった

小学校五年生の柄崎恭平は、玻璃ヶ浦に向かう電車の中で湯川学に出会う。

湯川は海底金属鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして

出席することになっていて、恭平が泊まる旅館『緑岩荘』に泊まることになった。

そして、同じ旅館に泊まっていた客の塚原正次が行方不明になり、

翌朝になって海辺で変死体になって発見される。

県警は現場検証の結果、誤って転落した事故死の可能性が高いと判断していた。

一方で、被害者の塚原正次は元刑事で、塚原の後輩だった多々良管理官は、

その死に疑問を抱き、同じ旅館に湯川が泊まっていることを知り、

草薙俊平に独自の捜査を命じる。

草薙は内海薫と共に、湯川とコンタクトを取りながら捜査を行うことになった。

 

登場人物

・湯川学:帝都大学物理学准教授。理工学部物理学科第十三研究室所属。

     学生時代にバドミントン部に所属していた。

     デスメックから依頼を受けて玻璃ヶ浦を訪れる。

・草薙俊平:警視庁捜査一課の刑事。

      帝都大社会学部出身。大学時代はバドミントン部に所属。

・内海薫:警視庁捜査一課の刑事。草薙の後輩。

・間宮:警視庁捜査一課の係長。階級は警部。草薙たちの上司。

・多々良:警視庁捜査一課の管理官。被害者の塚原正次は捜査一課での先輩にあたる。

 

・柄崎恭平:小学校五年生。両親が大阪に行ってる間『緑岩荘』で過ごすことになる。

・柄崎敬一:柄崎恭平の父親。妻の由里と共にブティックを経営している。

・柄崎由里:柄崎敬一の妻。敬一と共にブティックを経営している。

・川畑成美:『緑岩荘』を手伝いながら、玻璃ヶ浦の海を守る環境活動をしている。

・川畑節子:川畑成美の母親。五十四歳。

・川畑重治:旅館『緑岩荘』の経営者。川畑節子の夫。

・沢村元也:家業の電気屋を手伝いながらフリーライターをしている。

 

・塚原正次:事件の被害者。『緑岩荘』の客。

      元警視庁捜査一課の刑事で、昨年警察を定年退職していた。

・塚原早苗:塚原正次の妻。

 

・仙波英俊:十六年前の三宅伸子殺しの犯人。

      逮捕され懲役八年の実刑が下され、服役していた。現在は消息不明。

・三宅伸子:故人。十六年前に仙波英俊に殺された被害者。元ホステス。

 

・西口剛:玻璃警察署刑事課一係の刑事。川畑成美の高校時代の同級生。

・元山:玻璃警察署刑事課一係の係長。

・橋上:玻璃警察署刑事課一係の刑事。西口の五歳上。

・岡本:玻璃警察署刑事課の課長。

・富田:玻璃警察署署長。

・磯部:県警本部捜査一課の刑事。警部。

・穂積:県警本部捜査一課の課長。

・野々垣:県警本部捜査一課の刑事。巡査部長。

 

 ・室井雅夫:『KONAMO』の店主。

・永山若菜:マリンスポーツのショップの住み込みバイト。東京の大学に通っている。

・桑野:海底金属鉱物資源機構の広報課勤務。

・藤中博志:荻窪署の刑事。現在は病気のため自宅療養中。

・小関玲子:カーディーラー勤務。川畑成美の中学時代の同級生。

・鵜飼継男:玻璃料理の店『はるひ』の店主。

・柴本郁夫:『柴本総合病院』の院長。

・安西:『柴本総合病院』の看護師。

・梶本修:『アリマ発動機』の社員。

・田中:ボランティア団体の男性。

 

ネタバレなしの感想

舞台は玻璃ヶ浦という美しい海の町を舞台に、

湯川学と少年・柄崎恭平の交流を中心にしてストーリーは進んでいく。

今までのガリレオシリーズは草薙俊平か内海薫が湯川のもとに

事件の謎を相談に行くというスタイルだったが、

今回は湯川が泊まった旅館の客が転落死したこともあり、湯川が現地にいて、

草薙と内海は東京で捜査にあたる形になっている。

 

ガリレオシリーズ特有の科学的な要素はあるといえばあるけれど、

長編ということもあって、

科学的な要素をメインだと思って期待しない方が良いだろう。

ガリレオシリーズの登場人物たちで、

加賀シリーズ後期の人情ものを書いたという感じになっている。

おそらく東野圭吾さんの年齢による心境の変化が反映されているんだろう。

つまらないとは言わないけれど、

私は特段面白さであったり、完成度の高さは感じなかったかな。

 

 

ネタバレありの感想

人情もので、

登場人物の多くが善人で、止むに止まれぬ事情により人を殺してしまったというのを

描きたいんだろうとは思うけれど、いまいち納得しにくいというのが本音。

 

まず小説的な話を書くと、湯川学と柄崎恭平の話を書きたかったのか、

それとも川畑一家のことを書きたかったのか、かなり中途半端に感じた。

また恭平と川畑成美の行為には明確な違いがあるにも関わらず、

湯川が成美に恭平のことを頼むのは理解できなかった。

また草薙や内海、さらには多々良までもがこの対応を受け入れるのも理解しにくい。

 

あと塚原正次の事件に関しては川畑重治の行為は飛躍しすぎだろう。

塚原が川畑節子に話してた内容を盗み聞きしただけで、なぜ殺そうとするのか。

しかも、重治は三宅伸子殺しの真相だって成美と節子から

直接聞いてはいないのにいきなり殺人を選択するという攻撃的な人物になっている。

さらには、子供の恭平を利用するのは良心の呵責はないのだろうか?

恭平は利用されたとはいえ殺人事件に加担させられているのは、

読んでいて胸糞悪すぎる。

それでいて、ラストを何となく良い感じにしてるのも含めて結構な違和感があった。