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【東野圭吾】『禁断の魔術』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『禁断の魔術』を紹介します。
ガリレオシリーズの八作目である。

禁断の魔術

禁断の魔術

著者:東野圭吾

出版社:文藝春秋

ページ数:294ページ

読了日:2024年1月9日

 

東野圭吾さんの『禁断の魔術』。

ガリレオシリーズの第八弾。

単行本『禁断の魔術 ガリレオ8』所収の「猛射つ」を大幅に加筆・改稿したもの。

福山雅治さん主演で映像化されている。

 

あらすじ

ある日、フリーライターの長岡修が殺される事件が発生した。

捜査の結果、容疑者として浮上したのは古芝伸吾。

伸吾は高校の物理研究会で湯川学の後輩で、湯川から科学を学び、

その魅力に感銘を受けて、帝都大学を受験して、合格していた。

しかし、育ての親だった姉の古芝秋穂が亡くなって、

帝都大学を中退して町工場で働いていたが、警察が捜査を始めた直後に失踪していた。

そして、湯川は新伍のある企みに気づくが。

 

登場人物

・湯川学:帝都大学物理学准教授。理工学部物理学科第十三研究室所属。

     学生時代にバドミントン部に所属していた。統和高校の物理研究会出身。

・草薙俊平:警視庁捜査一課の刑事。捜査主任。

      帝都大社会学部出身。大学時代はバドミントン部に所属。

・内海薫:警視庁捜査一課の刑事。草薙の後輩。

・間宮:警視庁捜査一課の係長。階級は警部。草薙たちの上司。

・岸谷:警視庁捜査一課の刑事。草薙の後輩。

・多々良:警視庁捜査一課の管理官。

 

・古芝伸吾:クラサカ工機の社員。帝都大学工学部機械工学科中退。

      統和高校の物理研究会出身。

・古芝秋穂:故人。古芝伸吾の姉。明生新聞の記者。

・古芝恵介:故人。古芝伸吾の父親。生前は暁重工に勤務していた。

 

・大賀仁策:代議士。元文部科学大臣。スーパー・テクノポリス計画の発案者。

・鵜飼和郎:大賀仁策の第一秘書。

・池端:大賀の後援会長。

・西村:大手不動産会社社長。

・岡本:大手不動産会社の社員。糸山地区の担当。

・矢場:建築コンサルタント

 

・倉坂由里奈:倉坂達夫の娘。

・倉坂達夫:クラサカ工機の社長。

・トモちゃん:クラサカ工機の女性社員。

・長岡修:事件の被害者。フリーライター

渡辺清美:長岡修の恋人。美容整形外科の受付。

 

・勝田幹夫:レストラン『ボタニアン』の店長。

      スーパー・テクノポリス計画反対運動のリーダー的存在。

・米村:書店経営。

    スーパー・テクノポリス計画反対運動で勝田幹夫の補佐をしている。

・サトル:黒こげになったバイクの持ち主。

・ミカ:サトルの恋人。

・川上:壁に穴が開いた倉庫の管理責任者。

・吉岡:ホテルのフロントクラーク。

・松下:ホテルのベルボーイ。

 

・谷山:統和学校の国語教師。古芝伸吾の三先生の時の担任。

・天野:統和高校の物理研究会の顧問。

・石塚:統和高校の二年生。物理研究会所属。

・森野:統和高校の二年生。物理研究会所属。

 

・田村:暁重工の総務部勤務。

・宮本:暁重工の海外事業部勤務。

 

ネタバレなしの感想

死んだ姉の復讐を果たそうとする青年の古芝伸吾、

その伸吾と湯川学は師弟関係にあり、

湯川は古芝の狙いを察知していて・・・という話。

 

本作は事件の発端はフリーライターの殺人事件ということもあって、

草薙たちの活躍も描かれているし、

そこから湯川や古芝の話に繋がっていくという流れになっている。

湯川と古芝の物語であり、

そこにしっかりとガリレオシリーズ特有の科学的要素も関わってくるのは、

ガリレオシリーズであることを考えたら納得できるだろう。

また、それぞれの登場人物の事件への関与や背景も比較的描かれていて、

特に湯川に関してはかなり物語に関わる立場になっているのも特徴だろう。

 

「猛射つ」という短編を、文庫化にあたって長編にしたということだけど、

最近(といっても文庫本発売が2015年)の東野さんの長編らしくないのもあって、

私はかなり楽しめた。

 また、長編とはいっても294ページなので綺麗にまとまっているので、

読みやすいかなと思う。

 

 

ネタバレありの感想

総理候補の大物とはいえ、政治家を殺すためにレールガンが必要なのか?というのと、

そのレールガン自体の使いにくさを考えると、

どうしてもツッコミどころにはなってしまう。

もっともラストの湯川と古芝のシーンを私は好きなので、否定しきれないかな。

湯川の覚悟であり、古芝の父親の地雷撤去の話を絡めるのを含めて

緊迫するラストに相応しい。

ガリレオシリーズではなければ復讐が成功してほしいとは思うけれど、

湯川の物語でもあることを考えたら、この終わり方になるんだろう。

 

ラストで湯川はアメリカへ行っていて、

しばらく戻ってこないと言っているのでシリーズ最後かと思わせるけれど、

この後も無事シリーズは続いていく。

 

難点をいえば古芝秋穂が大賀仁策に惹かれた理由が全く分からなかったのと、

秋穂が大賀に対して出した条件を読んでも秋穂が

どういう人物なのかも分からなかった。

あと、結局のところ大賀が報いを受けてないのは、いまいちスッキリはしないかな、

私はそういうリアルさをあまり東野さんには求めていないので。