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【綾辻行人】『十角館の殺人』についての解説と感想

本記事では綾辻行人さんの小説『十角館の殺人』を紹介します。

館シリーズ』の第一弾です。

十角館の殺人

十角館の殺人〈新装改訂版〉

著者:綾辻行人

出版社:講談社

ページ数:512ページ

読了日:2023年4月22日

 

綾辻行人さんの『十角館の殺人』。

1987年に出版された綾辻行人さんのデビュー作であり、

館シリーズ』の第一作目になる。

漫画化もされている。

 

あらすじ

大学の推理小説研究会のメンバー七人が

訪れたのは十角形の奇妙な館が建つ孤島である角島。

角島の青屋敷では半年前に当主の中村青司と妻の和枝、

それに住み込みの使用人の北村夫妻が死体で発見された事件が起きていた。

また泊りで仕事に来ていた庭師が行方不明になっていた。

彼らが島に来た翌日「第一の被害者」「第二の被害者」・・・

「探偵」「殺人犯人」と記されたプラスティック板が置かれていた。

 

一方本土でも推理小説研究会の元メンバーだった江南孝明のもとに、

「お前たちが殺した千織は、私の娘だった。」という

中村青司からの手紙が届いていた。

死者からの手紙に興味を持った江南は中村青司の弟である中村紅次郎に会いに行くと、

紅次郎のもとにも中村青司からの手紙が届いていた。

 

登場人物

K**大学推理小説研究会のメンバー

・エラリイ:法学部三回生。会誌『死人島』の現編集長。

・ルルウ:文学部二回生。

     四月から会誌『死人島』の編集長を務めることになっている。

・カー:法学部三回生。

・ヴァン:理学部三回生。

・ポウ:医学部四回生。オルツィとは幼なじみ。

・アガサ:薬学部三回生。女性。

オルツィ:文学部二回生。女性。

 

本土にいる人物

・江南孝明:三回生。推理小説研究会の元メンバー。

・守須恭一:推理小説研究会のメンバー。

・中村紅次郎:青司の弟。高校の社会科の教師。

・島田潔:紅次郎の友人。寺の三男。島田修は次兄にあたる。

・島田修:大分県警捜査一課の警部。

・吉川政子:吉川誠一の妻。安心院に住んでいる。

 

青屋敷の関係者

・中村青司:故人。建築家。半年前の事件で焼死。

・中村和枝:故人。青司の妻。半年前の事件で首を絞められての窒息死。

・吉川誠一:故人。庭師。半年前の事件で遺体は見つからず行方不明になっている。

・北村夫婦:故人。住み込みの使用人夫婦。

      半年前の事件では斧で頭を叩き割られて死亡。

・中村千織:故人。去年の一月にミステリ研究会の新年会で

      急性アルコール中毒で亡くなっている。

ネタバレなしの感想

もし読む気があるなら何も事前情報を入れないで読んだ方がいいです。

それ以上のことは私には言えない。

 

 

 

 

ネタバレありの感想

私は面白かったけれど、それはどういうタイプのミステリーなのかを

少しも知らなかったのが大きかったかなと。

これは『十角館の殺人』に限らず、叙述トリックものの特徴かもしれないけど。

 

ヴァン・ダインです」

ここはものすごく衝撃は受けました。

いわゆる叙述トリックものだとは思ってもいなかったので。

読了後ネットで検索しようとしたら「十角館の殺人 一文」とあるので

みんな衝撃受けたんだろうなと。

私が『十角館の殺人』に関して事前に知っていたのは

かなり評価が高いってことだけなのが良かった。

「衝撃の一文」みたいな売り文句を見ていたら、

結構面白みが薄れるので何も知らずに読むのが正解かな。

といっても知らず知らずのうちに

その手の情報が入ってしまうので難しい面もありそう。

 

最初は島での話がメインで、

本土が物語として補完する形式なのかと思って読んでいたけれど、

途中からはそうではないのだけは予想できますからね。

といってもどういう形で終わるのかは全く予想できなかったけれど。

 

ただ、気になったのは島での話が若干弱いかな。

オルツィが死んだ時にポウしか遺体を見なかった時点で

オルツィとポウが組んで事件を起こしていくのかと推理したけれど、

オルツィは中村千織のことを友人だと語っているのもあったので)

カーが殺された翌日の四日目から地下室探しとか中村青司の話になっていって

アレ?これ七人の中から犯人当てはしないんじゃないかと思った。

実際推理合戦みたいなのは

カー殺しの時に少しだけ誰に犯行が可能か?の話があったけれど、

それ以外はほとんど無かったですからね。

 

気になった点。

・エラリイの思考がよく理解できない

探偵役として鋭い推理を披露する一方、

最後の最後に地下室で吉川誠一の死体を見て

「去年の事件ではもう一体身代わりの死体が調達してあったわけだ」

そうなります?

さらにヴァンが淹れたコーヒーを無防備に飲んでくれるという。

 

・運要素が強すぎるように思える

カーのコーヒーとアガサの口紅までは納得できるけれど、

そのあとのポウの煙草とエラリイのコーヒーに関しては全く納得できなかった。

 

ルルウの件にしてもルルウが誰かを誘って岩場を見に来てたり、

もう少し足が速かったらその時点で終わってた可能性が高い。

 

なぜこういうことを指摘するかといえば、マスターキーの存在です。

マスターキーがあるんだからもっとシンプルにやればいい。

極端な話一夜にして全員殺すことだって十分可能でしょう。

一人だけは犯人役として残すとしても。

最悪の場合には一対複数の格闘も覚悟したとあるけど、

そうならない方法があるのならそっちを選択しないのはおかしいんじゃないかと。

確か館には包丁が三丁あるから、

ヴァンがナイフを持っていても必ずしも優位とは限らないはずだし。

 

ミステリーを読んでいると

十角館の殺人』は結構色んなところで名前を目にするけれど、

実際に読んでみるとその理由が分かりますね。

文庫版の解説を読むと出版時の時代背景も含めて分かるようになっています。