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【米澤穂信】『夏期限定トロピカルパフェ事件』についての解説と感想

本記事では米澤穂信さんの『夏期限定トロピカルパフェ事件』を紹介します。

小市民シリーズの二作目である。

夏期限定トロピカルパフェ事件

夏期限定トロピカルパフェ事件

著者:米澤穂信

出版社:東京創元社

ページ数:248ページ

読了日:2023年9月6日

 

米澤穂信さんの『夏期限定トロピカルパフェ事件』。

小市民シリーズの第二弾。

小鳩君と小佐内さんの高校二年の夏休みの出来事が描かれている。

『このミステリーが凄い!2007年版』国内編10位。

2024年7月からテレビアニメ化されることが決定した。

 

序章 まるで綿菓子のよう

あらすじ

小鳩常悟朗は一学期末考査を控えた七月に縁日に出かけ、

狐のお面を被った小佐内ゆきと出会う。

顔を合せたくない人がいるという小佐内に付き合って一緒に歩くことになった小鳩。

 

ネタバレありの感想

序章ということもあって特にこれといって大きな物語が描かれているわけではない。

最後まで読んでわかるのが

小鳩が推理した小佐内の「相手には見られたくないけど、こっちは見たい」というのが

そのあとの話の伏線になっているぐらいかな。

 

第一章 シャルロットだけはぼくのもの

あらすじ

小佐内から〈小佐内スイーツセレクション・夏〉に誘われた小鳩は

家から離れられなくなった小佐内から〈ジェフベック〉でマンゴープリン二つと

シャルロットのグレープフルーツのせを四つ買ってくるように頼まれる。

お店にはシャルロットは三つしかなかったので、

小鳩はシャルロット三つとマンゴープリン二つを買って小佐内のマンションを訪れる。

小佐内が電話でリビングに不在中に小鳩はシャルロットに手をつけてしまう。

あまりの美味しさに小鳩はシャルロットをもうひとつ食べたくなってしまうが。

 

ネタバレありの感想

普段は探偵役の小鳩が謎を出す側で小佐内がそれを見破る話。

日常的な謎というのか小鳩と小佐内の知恵比べの話で、

なおかつ小市民シリーズの特徴のスイーツが絡んでくる話もあって、

読んでいて面白かった。

 

第二章 シェイク・ハーフ

あらすじ

〈ベリーベリー三夜通り店〉で待ち合わせる前に駅前のハンバーガーショップ

寄った小鳩は店内で堂島健吾に出会う。

健吾は川俣かすみから、

かすみの姉を不良グループから抜けさせることを頼まれていた。

そのため不良グループを見張っていたが、

二手に分かれたグループを追おうとした健吾は小鳩に見張りを頼み、

何かあった時の連絡先として「半」とだけ書いたメモを

小鳩に渡し店を出て行ってしまった。

 

ネタバレありの感想

不良グループだったり薬物乱用だったりと物騒な話題も出てくるけれど、

小鳩がメモの謎を解くところは笑えるようになっている。

謎を解きたくて解きたくて仕方ない小鳩が一種のボケ役で、

ツッコミ役の小佐内という感じ。

謎そのものはいいんだけれど、小説というか文字だとなかなか分かりにくいかな。

 

第三章 激辛大盛

あらすじ

予定のない一日を本を読んで過ごしていた小鳩は健吾から電話で

タンメンを食べに行くから付き合えと誘われる。

小鳩はラーメン屋〈金竜〉で健吾が頼んだタンメン激辛大盛を待つ間に

健吾の泣き言を聞くことになるが。

 

ネタバレありの感想

最初読んだ時は幕間というのか箸休めみたいなものかと思ったら、

本を最後まで読むとしっかり意味があると。

 

第四章 おいで、キャンディーをあげる

あらすじ

『三夜通りまつり』の〈むらまつや〉のりんご飴を買いに行くために

小佐内のマンションで待ち合わせることになった小鳩。

外出中の小佐内を小佐内の母親と待っているところに、

小佐内を誘拐したという電話があり、五百万円を要求してきた。

小佐内の母親が警察に通報し、

マンションを追い出された小鳩のケータイに小佐内から「りんごあめを四つと

カヌレを一つ買ってきてください。」というメールが届く。

 

ネタバレありの感想

本作のメインの一つである話。

誘拐事件なので日常的な謎とは言えないかな、

ライトな感じで書いているとはいえ暴行であり煙草の火を押し付けようとしてるので、

他と比べたら異質である。

謎そのものは「シェイク・ハーフ」で出たのの応用編なので、特に目新しさはない。

無事助けて終わりと思いきや意味深なラスト。

 

終章 スイート・メモリー

あらすじ

小佐内誘拐事件から二日、〈小佐内スイーツコレクション・夏〉第一位、

〈セシリア〉に夏期限定トロピカルカフェを食べに出かけた小鳩と小佐内。

小鳩は夏休みの出来事を話し始める。

 

ネタバレありの感想

小佐内誘拐事件の真相。

〈小佐内スイーツコレクション・夏〉からはじまっていた

小佐内の遠大な計画が明るみになる。

真相に関しては小鳩は冤罪だよと言うけれど、

正直石和たちを見ているとあまり同情できないのも事実かな。

描き方にもよるだろうけれど、小鳩の謎を解きたがるのは笑えるけれど、

小佐内の復讐癖は今作みたいになるとちょっときついのも事実かな。

小鳩と小佐内の互恵関係が解消されるというラスト。

 

登場人物

・小鳩常悟朗:船戸高校二年生。鷹羽中学校出身。

       謎を解きたがる本性を持っている。

・小佐内ゆき:船戸高校二年生。鷹羽中学校出身。

       仕返しを企んで楽しむという本性を持っている。

・堂島健吾:船戸高校二年生。新聞部。小鳩常悟朗と同じ小学校の同級生。

・石和馳美:薬物乱用グループのリーダー。鷹羽中学出身。

・川俣さなえ:船戸高校二年生。鷹羽中学校出身。

・川俣かすみ:川俣さなえの妹。

 

総評

日常的な謎ともいえる前半は前作同様にかなり楽しめた。

後半になると結構深刻な話になるので

私が小市民シリーズに期待したものとは違うかな。

今作は小佐内の本性がかなり明確に描かれるのが特徴になっていて、

普段のつかみどころがないキャラクターとのギャップもあって、

かなりのインパクトがある。

互恵関係を解消したというラストで次が気になる終わり方になっている。