
本記事では小川哲さんの小説『君のクイズ』を紹介します。
君のクイズ
著者:小川哲
出版社:朝日新聞出版
ページ数:192ページ
読了日:2024年5月13日
満足度:★★☆☆☆
小川哲さんの『君のクイズ』。
「このミステリーがすごい!2024年版」7位、
「ミステリが読みたい!2024年版」2位、
第76回日本推理作家協会賞受賞作。
あらすじ
賞金一千万円がかかったクイズ番組の
第一回『Q-1グランプリ』のファイナリストになった三島玲央は、
有名なクイズプレーヤーの本庄絆と対戦した。
決勝は七問正解が必要な短文早押し問題で行われた。
二人は六対六で並び、
最後のクイズで問題が一文字も読まれないうちにボタンを押して、
正解を答えた本庄が優勝した。
三島は不可解な事態をいぶかしみ、真相を解明しようと本庄について調べ、
そして決勝戦を一問ずつ振り返る。
主な登場人物
・三島玲央:第一回『Q-1グランプリ』のファイナリスト。
煽り文句は「アマチュアクイズ界の王様」。
・本庄絆:第一回『Q-1グランプリ』のファイナリスト。
東大医学部の四年生。煽り文句は「万物を記憶した絶対的王者」。
・坂田泰彦:第一回『Q-1グランプリ』の総合演出。
・富塚:第一回『Q-1グランプリ』の出演者で、準決勝で三島玲央が戦った相手。
・片桐:第一回『Q-1グランプリ』の出演者。
・山田貴樹:クイズプレイヤー。三島玲央の中高のクイズ研究部の後輩。
・本庄裕翔:本庄絆の弟。高校生。
・桐崎:三島玲央の元恋人。
ネタバレなしの感想
本庄絆はクイズ大会の決勝戦で一文字も問題が読まれぬうちにボタンを押して正解し、
優勝を果たした。
ヤラセでないとしたら、いったい彼はなぜ正答できたのか?というのを、
対戦相手の三島玲央の視点から決勝戦の一問一問を振り返ることによって、
一文字も読まれないうちに正答した謎に迫るという構成になっている。
具体的に書くと、決勝戦で出題されたクイズに対して、
三島自身の経験を絡めながら考察を進めていき、
読者は三島の人生を追いながら彼と共に謎を解いていくことになる。
私が本書を読むきっかけになったのが、
「このミステリーがすごい!2024年版」の7位になったことからなんだけれど、
ミステリーものとしては、正直評価しにくい面がある。
ミステリーを期待して読むのであれば、私はお薦めはできない。
一方でクイズプレーヤーの思考やテクニックというものが描かれているので、
この部分は興味深く読むことができた。
単行本で192ページと最近では短めで、あっさり読むことができるので、
気軽に読んでみるのも悪くないかもしれない。
ネタバレありの感想
まず一文字も読まれないうちにクイズに正答したという謎に関しては、
確かにロジックはしっかりとしているとは思うし、
本庄絆がリスク重視で『ゼロ文字押し』をした動機というのも理解も納得もできる。
また本庄絆が『出演者がかならず答えることのできるクイズが用意される』
ということを、放送前から予測していたというのも納得できるものになっている。
ただ、小説として読んでいてカタルシスを感じることができたかというと、
ほとんど感じることはできなかった。
というのも、クイズプレーヤーの三島玲央視点で物語が進むけれど、
クイズの世界の常識を知らない私からすると
三島玲央と本庄絆が知っている問題が出るということに
それほど意外性がないというのが大きい。
だいたい本書の『君のクイズ』というタイトルからも連想しやすい。
また本庄絆が山形県に住んでいたことは早い段階で明かされることもあり、
最後の問題が本庄絆に関係していることは、この段階から容易に推測できた。
そのうえで、本庄絆にとって『ママ.クリーニング小野寺よ』が
特別な意味を持つ問題というのが本庄絆が最後に語るまで分からないとの、
YouTubeやオンラインサロンの登録者を増やすという動機が唐突に語られるので、
私としては小説としては評価しづらい。
決勝戦の問題、一問一問を振り返りながら、
三島玲央と本庄絆の人生を絡めながら進んでいくのは面白さもあるけれど、
どうしても単調になってしまっている。
三島玲央と本庄絆の二人は決勝戦の受け答えなども好対照な人物として描いていて、
ラストの三島玲央と本庄絆に繋がっていくのは分かるけれど、
そこまでうまく描けているかと問われると微妙かなと。
これはクイズというものをテレビで見たことはあっても、
私にはクイズを競技としてなかなか理解できない部分があって、
それが最後の三島玲央と本庄絆の選択の
違いになかなか共感できなかったことに繋がる。
これが例えば格闘技であれば、純粋に格闘技に専念する選手(三島玲央)と、
YouTubeやオンラインサロンなど器用に手広くやっている選手(本庄絆)の対比などは
分かりやすいし、どちらかに感情移入もできたかなと思う。
早押しクイズがどういう思考方法によって答えているのかは面白かったし、
(高いレベルになれば、
しっかりとした駆け引き要素があって、競技性があるというのものわかる。)
クイズの世界やテレビの世界というのも非常に巧く描けていると思う。
また、最近の小説は比較的長いものが多い中で、
192ページと短いのですぐ読めるのも悪くはない。
