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【東野圭吾】『私が彼を殺した』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『私が彼を殺した』を紹介します。

加賀恭一郎シリーズの第五作目にあたる作品です。

私が彼を殺した

私が彼を殺した

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:448ページ

読了日:2023年2月10日

 

加賀恭一郎シリーズの第五作目。

タイトルから想像できる通り、『どちらかが彼女を殺した』同様、

究極の犯人当て小説になっている。

容疑者候補が二人から三人に増えている点に加えて、

どちらかが彼女を殺した』は基本的には被害者の兄の視点で固定されていたが、

今作は容疑者候補にあたる神林貴弘、駿河直之、雪笹香織の視点で描かれている。

また、『どちらかが彼女を殺した』同様、

文庫版だと推理の手引き《袋綴じ解説》が付属されている。

 

あらすじ

小説家の穂高誠が結婚式の最中に殺された。

殺害方法は毒殺。

容疑者は三人。

一人は穂高誠の結婚相手である神林美和子の兄である、神林貴弘。

もう一人は穂高企画の社員である、駿河直之。

最後の一人は女性編集者の雪笹香織。

 

登場人物

加賀恭一郎:練馬警察署の警察官。年齢は三十代半ば。

穂高誠:被害者。三十七歳の小説家。

    穂高企画のオーナーで映画の脚本なども手掛けている。

神林美和子:穂高の婚約者。二十六歳のOL兼詩人。

      二年前に詩集を出版しベストセラーに。

神林貴弘:大学の量子力学研究室の助手。神林美和子の兄。

     子どもの頃に両親を交通事故で亡くし、

     美和子とは別の親戚の家に引き取られた。

     十五年間離れて暮らしたので、妹の美和子に恋愛感情を持つことに。

雪笹香織:神林美和子の担当編集者。穂高誠の担当もしていた。

     以前は穂高誠と付き合っていて堕胎もしている。

駿河直之:穂高企画の社員。穂高とは大学の映画研究会で一緒だった。

浪岡準子:動物病院の助手。穂高とは最近まで付き合っていた。

     穂高との子を堕胎している。駿河とは同じマンションに住んでいる。

西口絵里:雪笹香織の後輩の編集者。

 

感想

感想

最初の神林貴弘の章を読んだ時点で驚いたよね。

なぜかと言えばいきなり神林貴弘と美和子の近親相姦が描かれているんだから。

今作の被害者である穂高誠はとにかく救いようがない描かれ方をしているので、

そこらへんは読んでて安心できると言えばできる。

一方容疑者候補の三人に関しては神林貴弘は何とも言えないけど、

雪笹香織と駿河直之は穂高誠を恨んでも全くおかしくない動機が存在してるし、

読者は途中までは雪笹香織や駿河直之の方に

感情移入できるようになってるんじゃないかな。

 

これは『どちらかが彼女を殺した』も同様だったけれど、

犯人当てがひとつの大きなポイントになってるんだけれど、

決してそれだけではないので謎解きが苦手な私でも楽しめた。

神林兄妹の近親相姦であり、浪岡準子を穂高誠にとられた駿河直之、

穂高誠に捨てられた雪笹香織とそれぞれに感情や葛藤がしっかり描かれているので、

物語性の方だけでも十分楽しめると思う。

 

あとは、加賀恭一郎シリーズなので加賀恭一郎の活躍も楽しめる。

『悪意』は加賀視点もあったけれど、

本書のように第三者視点での加賀の言動を見ると、違った楽しみ方もできるかな。

 

肝心の犯人当てですけれど、まったく分からなかったですね。

言い訳すると読んでて先が気になって、どんどん読んじゃうわけですよ。

そうすると袋綴じも一気に読んでしまって、

「あー、そういうことだったのか」ってことになっていると。

これ『どちらかが彼女を殺した』でも書いた気がしますけどね。

今度本格ミステリー読んだ時は、

犯人当てやトリック当てを真剣にやろうと思いましたよ。

ちなみに一気に読まなくても袋綴じ部分なかったら

全く分からなかったでしょうけどね。

 

ただ、犯人が分からなくても物語性自体は楽しめると思うし、

今はネットもあるので犯人のネタバレは簡単にわかりますからね。

ネットがなかった時代だとなんとも評価しにくいですけど。

 

 

ネタバレありの感想

犯人当ての部分ではないけれど納得できない点は結構あったかな。

一つ目は浪岡準子が遺書を書いたチラシの件。

同じ練馬区内であってもチラシが入る入らないはわかるんだけど、

神林兄弟が穂高の家を訪れた時点でも

チラシが郵便受けに入っていたというのが納得できないんだよな。

 

もうひとつは浪岡準子が自殺の直前に駿河直之に電話してること。

浪岡と駿河の会話で浪岡が穂高誠に電話しても、

すぐ切られるとあるから駿河に電話したんだろうけど、

死ぬ直前に駿河に電話する意味あったんだろうか?

袋綴じによると地の部分では虚偽の記述が書かれることはないが、

会話文ではその限りではないらしいけれど。

 

肝心の犯人当てですけれど、感想の方にも書いたけれど分かりませんでしたよ。

指紋の話の時点で思ったのはえ?神林美和子?とか思ったぐらいですからね。

袋綴じのピルケースは二つあったと書かれている部分を読んで初めて、

「あー、そういうことか」となったわけです。

そして、本を読み返して犯人が駿河直之であると分かった次第であります。

ネットで検索してみたら、当たっていたと。

 

これネットがあって答え合わせできるから楽しめたけれど、

なかったらモヤモヤしたまま過ごすことになるよな。

本書が最初に発売されたのが

1999年だからネット環境まだ整ってない人も結構いそうだしな。

今は便利な時代で良かったです。