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【東野圭吾】『麒麟の翼』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『麒麟の翼』を紹介します。

加賀恭一郎シリーズの第九作目にあたる作品です。

麒麟の翼

麒麟の翼

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:384ページ

読了日:2023年3月13日

 

加賀恭一郎シリーズの第九作目。

前作『新参者』に続いて日本橋を舞台にしている。

阿部寛さん主演で『麒麟の翼~劇場版・新参者~』というタイトルで

映画化もされている。

 

あらすじ

日本橋の中央にある麒麟像。

その麒麟像に寄り掛かった状態の男性に交番の巡査が声をかけたところ、

男性は胸を刺されていたことが判明する。

男性は搬送された病院で死亡が確認された。

事件現場付近でパトロール中の警官が不審人物を発見したが、

不審人物は逃げ出し道路に飛び出してトラックにはねられて意識不明の状態であった。

不審人物は江戸橋で刺された男性・青柳武明の財布や免許証を所持していため、

この不審人物・八島冬樹が青柳武明殺しの犯人として捜査がはじまる。

被害者である青柳武明はなぜ瀕死の状態で麒麟像まで移動したのか?

犯人は八島冬樹なのか?

加賀と松宮が事件の真相に挑む。

 

登場人物

加賀恭一郎:日本橋警察署の刑事。階級は警部補。

松宮脩平:警視庁捜査一課の刑事。加賀の従弟。

 

加賀隆正:故人。恭一郎の父親。

金森登紀子:看護師。隆正の担当看護師だった。

 

小林:警視庁捜査一課。主任。

石垣:警視庁捜査一課。係長。

 

青柳武明:事件の被害者。五十五歳。

     建築部品メーカー『カネセキ金属』の製造本部長。

青柳史子:武明の妻。

青柳悠人:武明の子供。高校生。修文館中学校出身で水泳部に所属していた。

青柳遥香:武明の子供。

 

八島冬樹:二十六歳。福島県の出身。半年前まで『カネセキ金属』の国立工場勤務。

中原香織:福島県の出身。八島冬樹の同棲相手。

 

黒沢翔太:悠人の修文館中学校の水泳部時代の友達。

杉野達也:悠人の高校の同級生。修文館中学校では水泳部に所属していた

吉永友之:修文館中学校の水泳部時代に事故に遭う。青柳悠人の一学年下。

糸川:修文館中学校の教諭。水泳部顧問。

 

小竹芳信:『カネセキ金属』国立工場の工場長。

 

感想

感想

『新参者』の後半部分の被害者家族と加害者家族をメインにして長編にした感じかな。

本格推理的な要素はほぼないと言っていいんじゃないかな。

人情とか家族とか物語性を重視してる話。

もっとも東野さんなので謎自体はあって被害者の青柳武明はなぜ日本橋にいたのか?や

八島冬樹は本当に犯人なのか?を加賀と松宮のコンビが解き明かしていく。

 

作中では八島冬樹を容疑者と書かれているところがあるけれど、

八島って怪我(意識不明)で入院中のため逮捕されてないはずだから

容疑者として名前が出ることはないんじゃないかな?

基本的にマスコミって逮捕された後に実名報道をしてるはずだからな。

 

物語性重視の印象で、中原香織の話は非常に良かった。

映画は見てないけれど中原香織役を新垣結衣さんが演じたみたいなので、

おそらく映画はこっちメインなのかな?

たぶん作品的には正解だと思う、見てないけれど。

 

 

ネタバレありの感想

かなりの部分が愚痴になるので苦手な方は読まないでください。

 

どうしても気になったのは武明って吉永友之の件については

悠人と直接向き合って話し合うべきだったと思うんだよな。

半年も時間があったんだから時間がなかったというのはありえないし、

糸川に話を聞きに行くのはまだ理解できるけれど、

杉野に話したことはまずは悠人に言うべきだよな。

それに工場の労災隠しに関しては詳細は不明だけれど、

労災隠しがあったのは事実なわけだし、

武明が製造本部長であったのも事実ですからね、

そうすると杉野に言った言葉もそこまで重みを感じないというか。

だいたい武明のやり方も結構姑息で吉永友之の父親を騙っているからな。

 

武明の電話の件もかなり物語的に都合が良すぎるんじゃないかな。

修文館中学へは武明の携帯電話でかけているので履歴が残っているけれど、

武明が杉野にかけた電話は固定電話だったのはかなりのご都合主義かなと。

しかも事件当日に電話をかけて夜の七時に高校生を日本橋に呼び出すって

結構問題じゃないのかな。

杉野の家がどこなのかはわからないけれど、

高校生を夜の七時に呼び出してる時点で結構常識が無い人にしか思えないんだよな。

もう一回書くけど絶対に息子の悠人と最初に話をすべきだよな。

武明の考え自体は理解できるけど、やり方がどうも受け付けないんだよな。

杉野が言うには武明は悠人が吉永の事故に関わってることは

確信してたみたいだから、

余計にまずは自分の息子と向き合うべきなんじゃないかと思うんだけどな。

 

あと待ち合わせの場所が日本橋駅の改札口だったけど、防犯カメラはないのかな?

単行本発売が2011年だけど、当時であれば結構防犯カメラありそうなもんなのにな。

 

あと冬樹もどのタイミングで武明の鞄を盗んだんだろうな?

杉野が武明を刺して道を引き返した時に建物の陰に隠れた男が見えたとあるけど、

これが冬樹ならよくこんな状況で鞄を盗めたな。

だいたい事件発生から二時間後に付近にいるってのも不可解すぎるよな。

物語性重視とはいえ、どうしても気になってしまう。