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【東野圭吾】『白鳥とコウモリ』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『白鳥とコウモリ』を紹介します。

白鳥とコウモリ

白鳥とコウモリ

著者:東野圭吾

出版社:幻冬舎

ページ数:523ページ

読了日:2023年7月17日

 

東野圭吾さんの『白鳥とコウモリ』。

2021年4月に発売された。

 

あらすじ

東京竹芝桟橋近くの路上の車の後部座席から男性の遺体が発見された。

遺体で発見された男性は弁護士の白石健介。

警視庁捜査一課の五代努は所轄の中町と組んで敷鑑捜査をすることになった。

白石健介が殺されたことを知ると誰もが驚き、さらには同じ言葉を口にした。

あの先生が恨まれていたなんて考えられないと・・・。

 

警察の捜査が進むと白石の法律事務所に電話をかけてきた

愛知県安城市の倉木達郎という人物が容疑者として浮上する。

倉木達郎が門前仲町の『あすなろ』という店に通っていたのを突き止め、

また白石健介も『あすなろ』の関係者が店に入るのを見張っていた可能性が浮上した。

『あすなろ』の経営者母娘は1984年に愛知で起きた『東岡崎駅前金融業者殺人事件』の

容疑者として逮捕され、留置場で自殺した男の家族であるという。

 

また倉木達郎が白石健介と東京の喫茶店で会っていたことも判明した。

五代と中町が倉木達郎のもとを訪ねると、

白石健介殺害事件と

東岡崎駅前金融業者殺人事件』の灰谷昭造の殺害を認めるのだが。

 

登場人物

・五代努:警視庁捜査一課の刑事。三十八歳。

・中町:五代と組むことになった所轄の刑事課巡査。二十八歳

 

・白石健介:事件の被害者。白石法律事務所の弁護士。五十五歳。

・白石綾子:白石健介の妻。

・白石美令:白石健介の娘。『メディニクス・ジャパン』勤務。二十七歳。

 

・倉木達郎:愛知県安城市在住。六十六歳。

・倉木和真:倉木達郎の息子。大手広告代理店勤務。

・倉木千里:故人。倉木達郎の妻。

 

・浅羽洋子:『あすなろ』の経営者。

・浅羽織恵:浅羽洋子の娘。『あすなろ』で働いている。

・福間淳二:故人。浅羽洋子の夫。

      1984年の『東岡崎駅前金融業者殺人事件』で逮捕され留置場で自殺した。

      当時四十四歳。

・安西弘毅:浅羽織恵の元夫。財務省秘書課課長補佐。

・安西知希:浅羽織恵と安西弘毅の息子。中学二年生。

・灰谷昭造:故人。『東岡崎駅前金融業者殺人事件』の被害者。当時五十一歳。

 

・桜川:警視庁捜査一課強行犯係長。五代の上司。

・堀部孝弘:弁護士。倉木達郎の国選弁護人。

・佐久間梓:弁護士。元検察官。白石母娘の被害者参加制度の弁護士。

・雨宮雅也:倉木和真の同僚。

 

ネタバレなしの感想

単行本の帯を読んでも分かるように白石の殺人事件自体はかなり早い段階で

犯人が分かることになる。

事件を解決したと思いきや1984年の事件が絡んできてという展開になっている。

 

ネタバレに近いかもしれないけれど、

話としては加賀恭一郎シリーズの『麒麟の翼』であるとか『祈りの幕が下りる時』に

近く、人情物語というか社会派なミステリーになっている。

帯には新たなる最高傑作とあるけれど、私にはとてもそこまではいかないかなと。

麒麟の翼』や『祈りの幕が下りる時』の方がまだ良かったと思う。

 

 

ネタバレありの感想

気になった点をいくつか挙げていく

 

・中盤がかなり退屈

何を期待して読むのかによるだろうけれど、

あっさりと倉木達郎が逮捕されて、

1984年の事件で倉木達郎がなぜ容疑の対象から外れたのか?という謎があったので

そちらの方にすぐいくのかと期待したんだけれど、

被害者と加害者の家族である倉木和真と白石美令の話になって退屈であった。

 

・安西知希が殺人に興味があったという設定は不要なのでは?

もともと安西知希は具体的にどんな人間か描かれていないのもあるけれど、

最後にこんな設定詰め込まれてもとしか思えなかった。

両親の離婚理由が1984年の事件で福間淳二が逮捕されたことなのなら、

そのままの理由で良かったと思うんだけどな。

 

・倉木達郎のことが全く理解できない

本作の致命的な欠点がこれで

白石に1984年の事件についてどう思ってるか聞いて何がしたかったのか?

さらには事件の加害者家族(冤罪ではあるけれど)が苦労しているのを知っているのに

息子のことを特に考えてるようには見えなかったりと

かなりおかしい人なんじゃないかと。

達郎本人は癌で余命いくばくもない状態だから

愛する人のためにってのはかっこいいけれど、

息子の気持ちを一切考えて無さそうなところが怖すぎる。

 

・倉木達郎の供述と警察の裏どり捜査

倉木達郎は東京ドームで白石健介と出会ったと主張したけれど、

もし、その日に白石が何かしてたら早々にこの供述が破綻してたわけで、

どういう計算があったのか。

また現場近くの公衆電話の映像なんか

最初に警察が把握してなきゃおかしい気がするんだがな。

 

・白石健介と美令について

白石健介については灰谷に挑発されただけで殺してしまうわけで、

いまいちどういう人物像なのかが分からなかった。

また美令は白石健介が灰谷を殺したことは受け入れたんだろうか?

これだって嘘だと思う可能性は十分あると思うけれど。

 

『希望の糸』を含む加賀シリーズの後期の路線に近く、

そこにいくつかの要素を付け足したという印象。

よく言えば集大成的ともいえるけれど、悪く言ってしまえば非常に散漫ともいえる。

私には散漫な印象の方が強かった。

 

ノローグ形式で事件の全貌を知るのはあまり面白くないかな。

あと女は女優とかかなり強調してるからもっと何かあるのかと思ったら

そこまででもなかったという。