MENU

【東野圭吾】『ラプラスの魔女』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『ラプラスの魔女』を紹介します。

ラプラスの魔女」シリーズの一作目である。

ラプラスの魔女

ラプラスの魔女

著者:東野圭吾

出版社:KADOKAWA

ページ数:496ページ

読了日:2023年5月12日

 

東野圭吾さんの『ラプラスの魔女』。

ラプラスの魔女」シリーズの第一弾。

櫻井翔さん主演で映画化されている。

 

あらすじ

妻と赤熊温泉を訪れた映像プロデューサーが

硫化水素中毒により死亡する事故が発生した。

D県の警察本部から捜査協力の依頼を受けた大学の教授の青江修介が

事故現場を訪れると若い女性の姿があった。

彼女は友達の若い男性の行方を追っているようだった。

二か月後、遠く離れたL県の苫手温泉でも硫化水素の中毒事故が起こる。

北陸毎朝新聞の依頼を受けた青江が現地を訪れると、またも例の彼女がいた。

青江はその女性・羽原円華の不思議な力を目撃することになる。

 

登場人物

・青江修介:泰鵬大学教授。専門は地球化学科。

      学生には主に環境分析化学を教えている。

・奥西哲子:青江修介の助手。

 

・羽原円華:十八歳。十歳の時に北海道で竜巻に遭い母親を亡くしている。

      硫化水素事故があった温泉地を訪れて若い男性を捜している。

・武尾徹:羽原円華のボディガードとして雇われることに。元警察官。

・羽原全太朗:開明大学医学部脳神経外科の教授。脳神経細胞再生の第一人者。

       円華の父親。

・羽原美奈:故人。円華の母親であり全太郎の妻。

・桐宮玲:開明大学総務課。羽原全太郎の部下。

 

・水城義郎:映像プロデューサー。 六十六歳。                  

      二回の離婚歴があり、千佐都とは三回目の結婚になる。

      赤熊温泉近くの山で硫化水素により亡くなる。

・水城千佐都:義郎の妻。銀座の『レッド』でホステスをしていた。

       源氏名は『レイカ』。

・水城ミヨシ:義郎の母親。調布にある老人ホームに入居している。

       義郎のことを心配して麻布北警察署に手紙を送っていた。

那須野五郎:本名は森本五郎。苫手温泉近くの遊歩道で硫化水素により亡くなる。

 

・甘粕謙人:十二歳の時に硫化水素事故に遭い、植物状態になる。

      羽原の手術によって回復する。

・甘粕才生:映画監督。謙人の父親。『凍える唇』で数々の賞に輝く。

      最後に撮った作品が『廃墟の鐘』。

・甘粕由佳子:故人。才生の妻。

・甘粕萌絵:故人。才生の娘。

 

・中岡祐二:警視庁麻布北警察署刑事課。

・成田:警視庁麻布北警察署刑事課係長。中岡の上司。

 

・前山洋子:赤熊温泉の宿の女将。

・磯部:D県の環境保全課の職員。赤熊温泉村に出向している。

・内川:北陸毎朝新聞の記者。

 

ネタバレありの感想

ネタバレなしの感想が非常に難しいので、ネタバレありの感想しか書けない。

 

羽原円華と甘粕謙人が脳の手術をしたことによって、ある種の能力を手に入れ、

それが温泉地での事故に関わってくる。

また、そもそも甘粕謙人が脳の手術をしなければならなかった原因の硫化水素事故は

実際には父親の甘粕才生が起こした事件だったというのが真相。

以上のことを主に大学教授の青江修介と刑事の中岡祐二視点で真相に迫っていくと。

 

東野さんの小説の特徴だろうけど、

最初に謎があってそこから物語が展開していくので面白いし、
物語の世界に入り込みやすい。

ここらへんはものすごく売れてる作家だけあって流石の一言。

 

温泉地での硫化水素の事故の真相は謙人の特殊な能力なので、

合わない人は合わないだろうなと。

私は特殊な能力自体は問題ないんだけれど、

この特殊な能力がちょっと曖昧というかふんわりしすぎな感じはしたかな。

一応それっぽく作中では語られているけれど、万能的すぎるんじゃないかと。

サイコロの目を当てるぐらいなら、確かにあり得るかなと思うけれど、

それ以上になるとなかなかすんなりとは受け入れるのが難しかった。

 

あと小説の序盤に武尾が目撃した円華の祖母の帽子が川に落ちたのが、

風向きが変わって円華のもとに戻ってきたってのがあったけれど、

そもそも川に落ちる前になんとかできるんじゃないかと思うんだよな。

つまりそんな能力あるなら急に風が吹くのもわかりそうなもんじゃない?

 

小説的には中岡視点で語られる部分は面白いし好きなんだけれど、

結局警察庁からの圧力でこれ以上は事件に関わらずという展開。

物語のラストに絡ませることは難しい立場だったからかと邪推してしまう。

 

甘粕才生のブログは東野さんの『悪意』を思い出させる。

ただし『悪意』の手記の方が良かったように思える。

『悪意』はメインテーマが記録(手記)だったの比べると、

今作のブログはあくまで一つの要素だからかな。

 

才生を天才や鬼才と書いているけれど、

どうもそこまでの特別な何かを感じないんだよな。

謙人と才生の廃墟でのラストもどうも安っぽさを感じて、

二時間ドラマのラストだよなと思ってしまった。

 

ただそこから中岡、青江、武尾視点で物語を終わらせたのは流石で、

これがあるから読後感は良くなる。

私は読後感は非常に大事だと思うので。

 

エンタメ的小説としては十分満足がいく作品。

ミステリーとしてはあまり期待はしない方がいいかな。