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【東野圭吾】『魔女と過ごした七日間』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『魔女と過ごした七日間』を紹介します。

ラプラスの魔女」シリーズの三作目である。

魔女と過ごした七日間

魔女と過ごした七日間

著者:東野圭吾

出版社:KADOKAWA

ページ数:416ページ

読了日:2023年5月17日

 

東野圭吾さんの『魔女と過ごした七日間』。

ラプラスの魔女」シリーズの第三弾。

東野圭吾さんの著作記念すべき百作目。

 

あらすじ

多摩川で男性の遺体が見つかった。

被害者は月沢克司で元警察官で見当たり捜査のスペシャリストだったが、

AIによる監視システムの導入により見当たり捜査員が不要になっていた。

克司の息子の陸真は刑事の脇坂に依頼されて父親の荷物を調べることになった。

陸真は克司のファイルから『永江照菜』の『検査詳細情報』という書類を見つける、

依頼先は『開明大学病院』になっていた。

また脇坂に見せられた克司の携帯電話の発信履歴のリストの中から

『永江多貴子』という名前を見つける。

陸真は友人の純也とともに開明大学病院を訪ね、

以前、陸真が図書館で出会った車椅子の少年が

『数理学研究所』と記された車に乗るを見かける。

数理学研究所に向かった陸真と純也は不思議な力を持った女性・羽原円華と出会う。

 

登場人物

・月沢陸真:S市立第三中学校三年生。

・月沢克司:事件の被害者。月沢陸真の父親。警備保障会社『PASTA』勤務。

      以前は警視庁刑事部捜査共助課で見当たり捜査員をやっていた。

・宮前純也:月沢陸真の友達。二年生の時の同じクラスだった。

 

・羽原円華:『独立行政法人 数理学研究所』の職員。

・永江多貴子:月沢克司が付き合っていた女性。

・永江照菜:永江多貴子と月沢克司の娘。優れた記憶力を持っている。

・タケオトオル:『鳥いろは』の経営者。七年前まで円華のボディガードをしていた。

        元N県警本部警備部所属。

 

・脇坂拓郎:警視庁捜査一課強行犯係の刑事。

・茂上:警視庁捜査一課の主任。

・高倉:警視庁捜査一課の係長。

・伊庭:警察庁科学警察支援局の課長。

・小倉:警視庁刑事部捜査共助課。克司の捜査共助課時代の同僚。

 

・新島史郎:故人。『T町一家三人強盗殺人事件』の犯人。

・赤木ダリア:『ブルースター』のオーナー。

・櫻井:『ブルースター』のフロア・マネージャー。

・津野知子:フリーライター。『T町一家三人強盗殺人事件』を調べている。

 

ネタバレなしの感想

ラプラスの魔女」シリーズの三作目で時代設定的には

ラプラスの魔女』から最低でも七年以上経っている。

羽原円華の能力に関しては今作で特に語られるということはないので、

ラプラスの魔女』を読んでることがある程度は前提になるかもしれない。

 

AIによる監視システムが強化された日本ということではあるけれど、

こはちょっとあやふやな感じである。

国民の側に周知徹底しているわけではなく、

警察の一部が勝手に使用してるという感じ。

車の自動運転や脇坂が使うモバイルがちょっと特殊で、

一応近未来的な世界観にはなっている。

 

父親を亡くした中学三年生の陸真とその友達の純也の冒険にもなっていて、

東野さんの小説の中でも結構珍しいのではないだろうか。

 

 

ネタバレありの感想

月沢克司の銀行口座に二人の指名手配犯から振り込まれていたのが

保釈金だったってのはかなり無理があるかな。

わざわざどうやって克司の口座に振り込んだのかも謎だし、

克司がそれを信用したのも不可解だし、かなりのご都合主義かなと。

克司は警備員の仕事をしている時に指名手配犯を見つけたという話を

陸真もしてるわけだから、この口座の話自体不要な気もするんだがな。

 

DNAであるとか監視社会の問題というのは分かるんだけれど、

じゃあその担当者である公務員がそこまで積極的に殺人まで犯すのかってのは

やはりどうも飛躍があるように思えるんだよな。

伊庭は特殊な薬剤とか支給品ではない拳銃を持っているとか、

これまたご都合主義的な設定にしか思えなかった。

 

新鮮だったのは主人公が中学生の陸真と純也だったことで、

二人で行動してる時はかなりワクワクした。

ただ、円華と一緒に行動し始めると

円華が主導権を持つことになるのでここが評価しにくい部分になる。

(もっともタイトルが『魔女と過ごした七日間』なので、

当たり前といえば当たり前なんだけれども。)

あまりにも円華の能力が凄すぎるので

実は物語の主人公には向いてないんじゃいかなと思う。

そしてその凄さの割には伊庭相手には簡単にピンチに陥るという。

 

脇坂が灯油の臭いには気づかないのに、円華は気づくとか、

それ物理の能力とは全く別物だよなとしか思えないからな。

 

あと陸真たちが最後の赤木ダリアの家に行くところで

陸真が女装する理由はいまいち納得できなかったな。

仮に赤木と普段の陸真が出会っても問題ないと思うんだけどな。

まあ、映画化されるのであれば女装してた方が映像的に良いのかもしれないけれど、

それ以上の何かは感じないかな。

 

個人的には陸真と純也の活躍がもうちょっと見たかったし、

陸真と永江照菜の関係ももう少し描かれても良かったかなと。

 

賭博罪の話から国家と法律の話を円華がしたけれど、

ここだけは東野さんの強い主張を感じたかな。