本記事では東野圭吾さんの小説『魔力の胎動』を紹介します。
「ラプラスの魔女」シリーズの二作目になります。
魔力の胎動
著者:東野圭吾
出版社:KADOKAWA
ページ数:352ページ
読了日:2023年5月14日
東野圭吾さんの『魔力の胎動』。
短編集で『ラプラスの魔女』の前日譚になっている。
第一章 あの風に向かって翔べ
あらすじ
鍼灸師のナユタは准教授の筒井利之に誘われて
スキージャンプの選手である坂屋幸広の映像を見ることになった。
坂屋のジャンプ映像を見ていると、
筒井を訪ねてきた羽原円華という女性に出会う。
円華は坂屋のフォームが崩れていることや右膝を痛めていることを見抜く。
登場人物
・工藤那由多:通称ナユタ。鍼灸師。
・坂屋幸広:スキージャンプの選手。妻と四歳になる息子がいる。
・筒井利之:北稜大学『流体工学研究室』の准教授。
・羽原円華:筒井の研究に興味を持って筒井の研究室を訪れた。
ネタバレありの感想
ミステリー要素は全く無し。
スキージャンプと円華の能力の話。
『ラプラスの魔女』でも若干気になったけど、円華のキャラは結構癖が強い。
話は円華の能力を中心に展開していくけど、
最後は円華の能力関係なく、
坂屋の奥さんの合図でスタートをして勝利するという分かりやすいラスト。
私はこのラストは好き。
第二章 この手で魔球を
あらすじ
ナックルボーラーの石黒の専属捕手として山東を育てようとしていたが、
捕球イップスになってしまった。
山東に自信を取り戻させようと円華はある作戦を考えるが。
登場人物
・工藤那由多:通称ナユタ。鍼灸師。
・石黒達也:プロ野球選手。投手。フルタイム・ナックルボーラー。
・三浦勝夫:プロ野球選手。捕手。石黒専属の捕手。
・筒井利之:北稜大学『流体工学研究室』の准教授。
・羽原円華:筒井の助手。乱流に興味を持っている。
・桐宮:円華の父親の秘書兼円華のお目付け役。
ネタバレありの感想
ミステリー要素は無し。
野球のナックルボールと円華の能力の話。
第一章と同じスポーツ関係ということで何となくオチが想像できてしまった。
円華の能力を利用して、山東の発奮を促すというオチ。
第三章 その流れの行方は
あらすじ
ナユタは高校時代の同級生である脇谷正樹と十年ぶりに再会する。
二人の高校時代の恩師である石部憲明教諭の子供が水の事故で
開明大学病院に入院してることを知ったナユタは円華に連絡をとり、
石部湊斗の見舞いに行くことに。
登場人物
・工藤那由多:通称ナユタ。鍼灸師。医学部を辞めて鍼灸師になった。
・脇谷正樹:料理人。
・石部憲明:ナユタたちの高校時代の担任。現在は休職中。
・石部湊斗:憲明の息子。
ネタバレありの感想
ミステリー要素は無し。
事故について円華の能力が発揮されるのは良いんだけど、
もうちょっと言い方があるんじゃないかとどうもモヤモヤする。
湊斗が両親の声に反応してるところは良いんだけど。
第四章 どの道で迷っていようとも
あらすじ
作曲家の朝比奈一成はパートナーだった尾村勇の突然の死に落ち込んでいた。
朝比奈はゲイであることをカミングアウトしたため
尾村は自殺したと思い込んでいるが、果たして尾村の死の真相とは?
登場人物
・工藤那由多:通称ナユタ。本名は工藤京太。
・朝比奈一成:ピアニスト。天才作曲家。重度の視覚障害者。
・尾村勇:故人。通称サム。銀貂山の崖から滑落死した。朝比奈のパートナー。
・西岡英里子:朝比奈の妹。
・羽原円華:朝比奈一成の復活のために尾村勇の死の真相を突き止めようとする。
ネタバレありの感想
一応尾村の死の真相は分かるけど、謎そのものが弱いかな。
朝比奈と尾村の話よりも連作短編集として見たらナユタの話かな。
ここに甘粕才生の『凍える唇』が関わってくると。
この話の円華はそこまで癖が強くない。
第五章 魔力の胎動
あらすじ
赤熊温泉で硫化水素水素中毒事故が発生し、
青江修介のもとに警察から協力の依頼が舞い込む。
青江は三年前にも灰掘温泉でも硫化水素中毒の調査に協力していたのだった・・・
登場人物
・青江修介:泰鵬大学の教授。地球化学が専門。
・奥西哲子:青江の助手。
・桑原:経営者。『山田旅館』の客。
ネタバレありの感想
青江修介が三年前に関わった灰堀温泉での出来事。
一応硫化水素事故の真相であるとか桑原の正体であるとかミステリー要素はある。
あるけど、ミステリーを期待して読むほどのものではないかな。
青江が赤熊温泉駅に到着してフードを被った若者、
つまり甘粕謙人に出会うところが見所になるのかな。
そこから『ラプラスの魔女』に繋がっていくという形。
総評
『ラプラスの魔女』を読んで羽原円華や世界観を好きになった人向けの本かな。
『ラプラスの魔女』を読んでない場合は円華の能力の正体がよくわからないはずで
あまり楽しめない気がする。
私は『ラプラスの魔女』を読んでるけどあまり合わなかった。
ミステリー的な要素もほとんど無い。
正直本作を読むぐらいなら他の東野さんの本読んでた方がいいんじゃないかと思う。
私的にはあまりおすすめはしない。