MENU

【東野圭吾】『予知夢』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『予知夢』を紹介します。
ガリレオシリーズの二作目である。

予知夢

予知夢

著者:東野圭吾

出版社:文藝春秋

ページ数:270ページ

読了日:2023年9月21日

 

東野圭吾さんの『予知夢』。

ガリレオシリーズの第二弾。

五篇収録の短編集。

福山雅治さん主演でテレビドラマ化されている。

 

・第一章 夢想る(ゆめみる)

あらすじ

深夜、十六歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲する。

男は逃走する途中近所の住民をはねて、間もなく逮捕される。

逮捕された男は十七年前に少女と結ばれる夢を見たと主張した。

その証拠は男が小学校四年生の時に書いた作文。

これは予知夢なのか、偶然なのか、

警視庁捜査一課の刑事である草薙は

大学時代の友人の物理学助教授の湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

予知夢を扱っている。

正直設定的には結構無理があるかなというのが本音。

湯川が最後に推理する母親だけが危険を察知していることに関しては

警察が気づかなかったというのはちょっとどうかなと。

もっとも、事件そのものはあくまで不法侵入と轢き逃げだから

そこまで真剣にならなかったともいえるけど、

そうすると警視庁の草薙が出てくる意味もおかしいかなと。

あとは坂木信彦がどの程度の知能なのかが分からないのも不満。

 

・第二章 霊視る(みえる)

あらすじ

マンションの一室の洗面所で女性が殺される事件が発生した。

発見者が階段を駆け下りていく男性の姿を目撃した結果、

スポーツライターの小杉浩一が逮捕された。

しかし、殺害時刻に被害者が別の場所で目撃されていた。

目撃者は被害者の恋人で、友人の小杉浩一の部屋で外に被害者がいるのを見ていた。

被害者が小杉浩一を避けていることを知っていた恋人は胸騒ぎを覚え

被害者の同僚に電話をかけ死体が発見されていたのだ。

報告書がオカルトに話になることを危惧した草薙は湯川のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

霊視を扱っている。

長井清美の左手首の傷に関してはいつ傷ついたかぐらい小説なら

警察は調べてほしいかなと。

湯川の観察眼が鋭いというか警察がちょっと間抜けすぎるような気がする。

携帯電話の履歴なんかは警察が調べればすぐわかる事だろうしな。

エーテルを嗅がせて気絶させた後に何が実際にあったのかは

ちょっと曖昧すぎるのもどうかと思う。

そんなにすぐ起きちゃうのなら計画段階で粗がありすぎなんじゃないかと。

 

・第三章 騒霊ぐ(さわぐ)

あらすじ

草薙は姉の森下百合からの電話である神崎弥生の相談に乗ることになった。

神崎弥生の夫が五日前から行方不明になっているとのことだった。

そして夫が立ち寄ったんじゃないかと思える家の高野ヒデも

亡くなっているとのことだった。

弥生は高野家を訪れ、

現在は高野家にはヒデの親戚が数人住んでいるらしいと分かった。

草薙から話を聞いた湯川は高野家にいる親戚が気になると言うが。

 

ネタバレありの感想

ポルターガイストを扱っている。

事件そのものは特に意外性はないけれど、

高野昌明たちの謎の行動と誰もいないはずの高野家からする物音は真相は

ガリレオシリーズらしくなっている。

神崎俊之の無念がポルターガイスト現象を起こしたと主張する草薙で

オチもかなり好き。

 

・第四章 絞殺る(しめる)

あらすじ

ホテルの一室で男性の死体が発見された。

細い紐のようなもので、一気に絞められたらしいとのことだった。

カーペットに幅一センチ、長さ五センチほどの焦げ跡がついてること、

絞め跡に沿って皮膚が切れている点が気になった草薙は湯川に現場を見てもらう。

 

ネタバレありの感想

火の玉を扱っている。

矢島貴子の言動に当然疑いの目を向けるわけだけど、

実際は他殺に見せかけた自殺の話。

貴子は矢島忠明や坂井善之の動きをアシストしていると。

矢島忠明の自殺の仕掛けを湯川が解くけれど、これぞガリレオ先生という感じ。

湯川が矢島家に保険金が支払われるのを祈るというところに湯川の良さがある。

・第五章 予知る(しる)

あらすじ

マンションの一室で女性が首を吊って死んだ。

不倫相手への当てつけに、女が自殺したということだった。

自殺する瞬間を目撃した者たちがいて、その一人は自殺した女の不倫相手だった。

不倫相手の男の隣の部屋の住人から事件二日前に首つり自殺するのを見たと聞いた

草薙は湯川と共に予知少女のもとを訪れる。

 

ネタバレありの感想

予知を扱っている。

予知夢でもいいかもしれない。

こちらは自殺に見せかけた他殺の話。

「絞殺る」の次なので何となく事件の真相自体は予想しやすいかな。

ただそれを除けばかなりの完成度で特にオチがものすごく好き。

二日前の自殺は練習で予知(夢)なんか無かったと思わせておいて、

最後の最後に菅原静子と峰村英数の無理心中を予知して終わるという。

 

登場人物

・湯川学:帝都大学物理学助教授。理工学部物理学科第十三研究室所属。

     学生時代にバドミントン部に所属していた。

・草薙俊平:警視庁捜査一課の刑事。

      帝都大社会学部出身。大学時代はバドミントン部に所属。

・間宮:警視庁捜査一課の刑事。階級は警部。草薙の上司。

・牧田:警視庁捜査一課の刑事。草薙の後輩。

 

第一章 夢想るに登場

・坂木信彦:家業の坂木電気工事店を手伝っている。二十七歳。

・坂木富子:坂木信彦の母親。

・坂木香奈子:坂木信彦の姉。

・中本:坂木の小学校五年六年の時のクラスメイト。

・森崎礼美:十六歳。女子高生。

・森崎敏夫:輸入品販売会社社長。

・森崎由美子:森崎敏夫の妻。

 

第二章 霊視るに登場

・長井清美:事件の被害者。クラブ「TaToo」のホステス。

・小杉浩一:スポーツライター

・細谷忠夫:会社員。大学時代からの小杉の友人。

・山下恒彦:無職。大学時代からの小杉の友人。

・織田不二子:クラブ「TaToo」のホステス。

       長井清美と同じマンションに住んでいる。

・金沢頼子:フレンド・スケートクラブのコーチ。

 

第三章 騒霊ぐに登場

・森下百合:草薙の姉。

・神崎俊之:行方不明になっている。健康機器メーカーのサービスエンジニア。

・神崎弥生:神崎俊之の妻。

・高野ヒデ:故人。神崎俊之と親しかったおばあさん。

・高野昌明:高野ヒデの甥。

・高野理枝:高野昌明の妻。

 

第四章 絞殺るに登場

・矢島忠明:事件の被害者。ヤジマ工業の社長。

・矢島貴子:矢島忠明の妻。

・矢島秋穂:矢島忠明と貴子の娘。小学五年生。

・矢島光太:矢島忠明と貴子の息子。小学三年生。

・坂井善之:ヤジマ工業の従業員。

鈴木和郎:ヤジマ工業の従業員。三十半ば。

・田中次郎:ヤジマ工業の従業員。三十半ば。

・蒲田:ホテル・ブリッジの支配人代理。

 

第五章 予知るに登場

・峰村英和:製品開発部。直樹の大学の後輩。

・菅原静子:菅原直樹の妻。

・菅原直樹:宣伝部。

・瀬戸富由子:自殺した人物。広告代理店の社員。

・飯塚朋子:菅原夫妻の隣の住人。

・飯塚娘:予知少女。飯塚朋子の娘。

 

総評

ガリレオシリーズの二作目で一作目と同じ作風になっている。

湯川を活躍させるためには仕方ないのかもしれないけど

警察が若干頼りない話もあるかな。

「夢想る」と「霊視る」は微妙だけど、残り三篇はかなり面白かった。

特に「予知る」はオチも含めてかなりお気に入りです。

ガリレオシリーズ後半から人情的な話が結構増えると思うけど、

「絞殺る」の段階でも少し人情らしい湯川の一面が描かれている。

前作の『探偵ガリレオ』が楽しめたなら間違いなく楽しめる一冊になっている。