【東川篤哉】『謎解きはディナーのあとで』についての解説と感想

本記事では東川篤哉さんの小説『謎解きはディナーのあとで』を紹介します。

謎解きはディナーのあとで」シリーズの一作目。

謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

著者:東川篤哉

出版社:小学館

ページ数:352ページ

読了日:2024年12月2日

満足度:★★★☆☆

 

東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで』。

謎解きはディナーのあとで」シリーズの第一弾。

文庫版にはショートショート『宝生家の異常な愛情』が収録されている。

2011年本屋大賞受賞作品。

 

主な登場人物

・宝生麗子:国立署の刑事。『宝生グループ』の総帥・宝生清太郎のひとり娘。

・影山:宝生家の執事兼運転手。三十代半ば。

・風祭:国立署の刑事。警部。愛車はシルバーメタリック塗装のジャガー

    父親は中堅自動車メーカー『風祭モータース』の社長。三十二歳。

 

第一話 殺人現場では靴をお脱ぎください

あらすじ

アパートの一室で住人の吉本瞳の絞殺死体が発見された。

部屋は散らかり、洗濯物は干されたままになっていた。

死体は玄関の近くにうつぶせの状態で、

外出用の服装とブーツを履いたまま倒れていた。

吉本瞳の元交際相手の田代裕也に接触し、

田代の部屋に新しい恋人のものと思われる白い靴を発見する。

 

ネタバレありの感想

室内でブーツを履いたまま殺された事件の謎。

靴を脱がずに四つん這いの姿勢で部屋を進んだところを殺されたというのが

事件の真相。

そして犯人は田代裕也の新しい恋人。

事件の真相からして、お嬢様の宝生麗子には推理するのが難しいというのも含めて、

一話目に相応しかった。

 

第二話 殺しのワインはいかがでしょう

あらすじ

動物病院の院長の若林辰夫が青酸カリ入りのワインを

飲んで自殺したと推定される事件が発生した。

しかし家政婦の藤代雅美の証言から、雅美の名を騙って毒入りワインを

辰夫に差し入れて殺したという見解が浮上するが、

ボトルやグラスなどから青酸カリは検出されなかった。

 

ネタバレありの感想

どうやって青酸カリ入りのワインを飲ませたかという謎。

金属キャップには穴が開いており、

伸縮性のあるコルクなら注射針を通すことも可能というもの。

雄太の証言からジッポーのオイルライターを持っている修二が犯人と

分かるというもの。

一応犯人を当てることはできたけれど、

青酸カリ入りのワインを飲ませた方法は分からなかった。

 

第三話 綺麗な薔薇には殺意がございます

あらすじ

老舗『藤倉ホテル』の創業家・藤倉幸三郎の豪邸の薔薇園で、

居候の高原恭子の死体が発見された。

犯人は恭子を屋敷の別の場所で殺害した後に、薔薇園に遺体を運んだようだったが

その理由は分からなかった。

しかも恭子の住んでいた離れは明らかな乱れが見て取れ、

さらには車椅子で死体を運ぶ犯人の人影を見たという目撃証言まで出てくるのだった。

 

ネタバレありの感想

なぜ薔薇園に被害者の遺体を運んだのかという謎。

犯人は猫に引っかかれてしまっためというもので、

藤倉幸三郎は普段から薔薇の栽培が趣味なので傷があったところで目立たないので

除外される。

物置にあったベビーカーを利用して遺体を運んだということで、

十二年ぶりに訪れた寺岡裕二ではなく、

ベビーカーがあったことを知っている藤倉雅彦が犯人。

これはミステリーとしてはかなり分かりやすかった。

 

第四話 花嫁は密室の中でございます

あらすじ

大学の後輩・沢村有里の結婚式に招待された宝生麗子。

披露宴が始まってから有里が姿を消したために、麗子が有里の部屋に向かったところ、

有里の悲鳴が聞こえたので駆けつけると有里が背中を刺され重傷を負っていた。

犯人は有里が悲鳴を上げてから、

沢村家の関係者が有里の部屋に集まるまでの短時間のうちに姿を消してしまっていた。

 

ネタバレありの感想

タイトル通り密室もの。

犯人は西園寺琴江で、宝生麗子が部屋を開けた時に西園寺琴江も

部屋にいたというもの。

私は沢村美幸の「琴江おばさんになにかあったの?」(183P)に

違和感を覚えたけれど、真相を当てることはできなかった。

執事の吉田の「お嬢様」呼びに仕掛けがあるという巧さが際立つ短編。

 

第五話 二股にはお気をつけください

あらすじ

野崎伸一という男性がマンションの自室で殺害され、

全裸の状態で発見される事件が発生した。

隣の部屋の住人の証言から野崎が自分より十cm背の低い女性と一緒だったことが判明

する。

宝生麗子たちは四人の女性に目星をつけるが、

彼女たちは隣人の証言する女性の特徴には当てはまらず、

最後の一人が条件に当てはまると思われたが、

そこに野崎の部屋から野崎より十cm背の高い女性が出ていくのを見たという

目撃証言が出てくる。

 

ネタバレありの感想

被害者より背の高い女性と低い女性の謎。

事件の真相としてはシークレットシューズを履いてたいうもので、

澤田絵里は野崎伸一と一緒に海に行っているので除外され、

黛香苗が犯人ということになっている。

これは二択の部分も含めてかなり分かりやすかった。

 

第六話 死者からの伝言をどうぞ

あらすじ

金融業を営む児玉絹江が自宅の屋敷で頭を殴られて殺害される事件が発生。

現場には絹江が残したであろうダイイング・メッセージが犯人によって

拭き取られてしまった形跡があった。

また犯人はなぜか庭から二階の部屋に凶器のトロフィーを放り投げていた。

風祭はこれをアリバイ工作と判断するが、関係者には全員アリバイがなかった。

 

ネタバレありの感想

消されたダイイング・メッセージと二階に投げられたトロフィーの謎。

真相としては、犯人は前田俊之でダイイング・メッセージは偽装工作。

トロフィーは三階から投げ込まれたもので、

『投げられない』吾郎を里美が庇ったというもの。

里見がトロフィーを三階から投げたというのは分かったけれど、

吾郎の『投げられない』を誤解していたという理由は分からなかった。

当然真犯人の前田俊之も分からなかった。

ラストを飾るに相応しいアクションシーンで締めくくっている。

 

総評

映像化もされた超有名作品の『謎解きはディナーのあとで』。

作中で扱われている事件はほとんどが殺人事件ではあるが、

基本的にはコメディタッチというかユーモア溢れる感じで読みやすくなっている。

 

私は今回初めて読んだけれど、最初は探偵役がお嬢様の宝生麗子かと思っていたら、

宝生家の執事の影山が安楽椅子探偵であったのが意外だった。

宝生麗子と執事の影山、それに風祭警部が主要な登場人物で、

彼らのキャラクターと掛け合いが人気の一つの要素なのかなと思う。

 

個人的にはミステリー要素の方が予想以上にしっかりしてて驚いた。

作中の伏線から犯人や犯行方法が分かるようになっているので、

かなりフェアだし本格ミステリーとしても十分楽しめるようになっている。

ロジカルな推理パズルを楽しみたい方にもおすすめの一冊。