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【東野圭吾】『仮面山荘殺人事件』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『仮面山荘殺人事件』を紹介します。

仮面山荘殺人事件

仮面山荘殺人事件

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:294ページ

読了日:2023年7月9日

 

東野圭吾さんの『仮面山荘殺人事件』。

元は1990年に徳間書店よりトクマノベルズとして発売されたが、

1995年に講談社から文庫として発売されている。

 

あらすじ

二年前、ビデオ制作会社の経営者の樫間高之は運転中に急ブレーキを踏んだ際に

後ろを走っていた赤いスポーツカーに追突されるという事故に遭った。

スポーツカーに乗っていた森崎朋美は事故により左足首から先を失ってしまい、

バレエもできなくなり、

普通の女性としての人生を望むこともできなくなったことから、

自殺をしようとするも、高之が見舞いに訪れたことにより助けられる。

高之は改めて見舞いに訪れた後から朋美と付き合うようになり、

半年後には婚約をした。

そして結婚式を四日後に控えた朋美が自動車事故により、

崖から転落して亡くなってしまう。

ハンドルをきる意思はなかったように見えたとの目撃証言もあり、

警察は居眠り運転の可能性が大きいと判断した。

朋美の事故から三か月後、朋美の父親の伸彦から別荘に誘われた高之は別荘を訪れる。

別荘には森崎家の親族や秘書、主治医、朋美の親友など八人が集まった。

そんな中、深夜に銀行強盗犯の二人が別荘に逃げ込んでくる。

 

登場人物

・樫間高之:ビデオ制作会社の経営者。森崎朋美の婚約者だった。

      朋美が亡くなった後も森崎家と繋がっていて

      伸彦から誘われて別荘を訪れた。

・森崎朋美:故人。樫間高之の婚約者。結婚式の四日前に交通事故で亡くなった。

      二年前の交通事故に遭う前はバレエ団に所属していた。

・森崎伸彦:森崎製薬の社長。森崎利明と明美の父親。

・森崎厚子:森崎伸彦の妻。利明と朋美の母親。

・森崎利明:森崎製薬勤務。朋美の兄。伸彦と厚子の息子。

・下条玲子:森崎伸彦の新しい秘書。

・篠雪絵:篠一正の娘。一正の塾の手伝いをしている。朋美の従妹で一つ年下。

・木戸信夫:篠一正の主治医。父親が厚子と篠一正の従兄。

・阿川桂子:小説家。森崎朋美の親友。朋美と高校が一緒だった。

 

・ジン:銀行強盗犯。小男。

・タグ:銀行強盗犯。大男。

・フジ:銀行強盗犯。リーダー的存在。

 

・篠一正:学習塾の経営者。森崎厚子の弟。今回は不参加。

 

ネタバレ無しの感想

白夜行』を読んだことがきっかけで

東野圭吾さんの当時の過去の著作を読み始めた頃に読んでいたのが

『仮面山荘殺人事件』。

正直今回読み直す前は内容を全く覚えていなかったけれど、

読み直してるうちに犯人は〇〇だったなと薄っすら思い出してきた。

そして犯人自体は当たってはいたけれど、

じゃあ読んでつまらなかったかというとそんなことは全くなく、

むしろかなり面白かったなと。

最近の東野圭吾さんはどちらかという社会派的なミステリーが多いと思うので、

本格ミステリーは新鮮さがあるのもあって、余計に楽しめました。

 

 

ネタバレありの感想

クローズドサークルものでもあるけれど、

あっさりクローズドサークルを作って見せるのは流石かな。

 

ネットで調べたら叙述トリックに分類されるらしいけれど、

文庫の解説を折原一さんが書いてるのは結構なネタバレに近い気がするな。

 

再読ということで犯人は途中から主人公の樫間高之だったなと思い出したんだけれど、

SOSやタイマーに貴之がどう関わってるのかが全く分からなかった。

そしたらSOSやタイマー、それに雪絵殺しに関しては森崎伸彦ということで

かなり混乱してしまった。

それから湖に飛び込んで死んだと思った伸彦が生きて登場したところで

やっと真相がわかったという次第です。

再読なので楽しみ方としてはどうしても邪道になってしまったけれど、

かなり楽しめた。

 

うまいと思ったのは下条玲子が地面に書いたSOSの文字が消されてたり、

森崎利明が作ったタイマーが壊されてたところで、

八人の中に裏切り者がいる、場合によってはジンかタグの可能性も含めて

読者は考えるだろうし、小説的にも当然盛り上がりどころになると。

また、玲子と利明がそれぞれ関与することによって、

作者の術中に嵌って誰かひとりを犯人として予想するようにもなると。

ついでに言えば玲子と利明が動くことによって高之が

余計なことをしなくなるということもあるかな。

高之以外は仕掛け人ということであれば場をコントロールすることも

可能かなと。

また、あくまでも高之の殺意の証明あれば迂遠な方法であっても納得はできるかな。

ただ復讐という目的がどの程度達成されたのかは分からないかな。

 

結婚を控えている高之にバレンタインチョコを渡して、

「朋美が悲しむようなことのないようにしてください」って

言える雪絵が一番怖い気がする。

ラストの雪絵もちょっと怖いですよね。

 

一度読んでから読み返してみると、

23ページと24ページで木戸が高之を値踏みしたのは

最初は木戸の雪絵への執着からと思ったけれど、

オチを知った後だと雪絵関係なく高之その人への値踏みか。

また雪絵が木戸を嫌ってるのも当然か。

29ページで伸彦が「さて、これでようやく役者が揃った」と言うのが

伏線なんだろうけれど、分かる人はここで分かるんだろうか?

私はもちろん全く分からず、普通に人が揃ったとしか思わなかったけれど。