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【東野圭吾】『白馬山荘殺人事件』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『白馬山荘殺人事件』を紹介します。

白馬山荘殺人事件

白馬山荘殺人事件

著者:東野圭吾

出版社:光文社

ページ数:357ページ

読了日:2023年7月23日

 

東野圭吾さんの『白馬山荘殺人事件』。

東野さんの長編第三作目で、1986年に光文社からカッパノベルス版で刊行され、

1990年に文庫化されている。

 

あらすじ

一年前の冬、「マリア様が、家に帰るのはいつか?」という言葉を残して死んだ

兄・公一。

公一に自殺の動機があること、また従業員や宿に泊まっていた他の客と

公一との接点が見つからなかったこと、

そして公一の亡くなった部屋が密室状態であったことから警察は自殺として処理する。

納得できない妹のナオコは親友のマコトの協力を得て事件の真相を解明しようと

公一が死んだ信州・白馬のペンション『まざあぐうす』を訪ねる。

常連の宿泊客は、奇しくも一年前と同じ。

各室に飾られたマザーグースの歌詞に秘められた謎、

ペンションに隠された過去とは?

 

主要登場人物

・原ナオコ:大学三年生。兄・公一の死に疑惑を抱く。

・沢村マコト:ナオコの親友。ナオコと共に事件の真相を追う。

・マスター:『まざあ・ぐうす』ペンションのオーナー。

・シェフ:『まざあ・ぐうす』ペンションの共同経営者。大男。

・高瀬:ペンションの二十歳過ぎの男性従業員。

クルミ:ペンションの二十代半ばの女性従業員。

・ドクター夫妻:老夫妻。

       『ロンドン・ブリッジとオールド・マザー・グース』の部屋に宿泊。

・芝浦夫妻:三十代半ばの夫妻。『ガチョウと足長じいさん』の部屋に宿泊。

・上条:三十代の男性。『ミル』の部屋に宿泊。

・大木:三十歳前の男性。スポーツマンタイプ。『セントポール』の部屋に宿泊。

・江波:二十九歳。『ジャックとジル』の部屋に宿泊。

・中村:二十代前半の男性。『旅立ち』の部屋に宿泊。

・古川:二十代前半の男性。『旅立ち』の部屋に宿泊。

・村政警部:ペンションで起きた殺人事件を捜査。

(6ページから引用)

 

ネタバレなしの感想

兄・公一が死んだ密室の謎、

各部屋に飾られたマザーグースの歌詞の謎と公一がハガキに残した

「マリア様が、家に帰るのはいつか?」という文章など

古典的な本格ミステリーになっている。

ペンションの図面や部屋の間取りなどが描いてあるなど

文字だけではなく見て分かるようになっている。

舞台も冬の山荘ということで雰囲気も含めて王道ミステリーというところかな。

 

今となっては懐かしい東野さんの本格ミステリーではあるけれど、

初期ということもあって、粗削りな感は否めない。

あくまで東野さんの本を多く読んでいて、

初期の本も読んでみようかなという時に読むぐらいの本かなと思う。

 

 

ネタバレありの感想

以前一度読んでいるはずだけれど、

マザーグース絡みということ以外は全く覚えていなかった。

 

マザーグースに関してはなんとなく聞いたことあるぐらいなので、

ちょっと取っ付き難いという印象。

もっともマザーグースの歌詞の謎自体はマザーグースを知らなくても

解けるようにはなっている。

ピリオドとコンマに関しては違和感はあったけれど、

それがどう関係するのかは全く予想できなかった。

 

公一の事件に関しては江波というのは窓の錠の話を菜穂子たちに

わざわざし始めた時点で察する部分はあったけれど、

この事件にクルミが関わっていたのは全くの予想外だった。

プロローグ2だったり高瀬の話を読めばクルミは確かに怪しいのは怪しいのか。

ちなみに密室の謎は全く分からなかった。

 

大木の事件に関しても江波は建築会社勤務ということが書かれていたので、

木材の件に関しては犯人候補の一人になるので予想通り。

 

最後に村政警部がペンション『まざあぐうす』のラウンジで

謎を解き明かし始めるのはクローズドサークルでもないので、

若干の違和感はあるけれど、

主人公の菜穂子と真琴に事件解決に関与させることを

考えたらこうなるのも仕方ないかな。

それにまさかの上条も川崎一夫の死の原因と宝石のありかを探すために

川崎家に雇われていたという設定が明かされるので

最後の謎解きパートになるんだろう。

 

夜中に江波と大木が会っていたのを

江波に認めさせるために村政がハッタリを言い、

それで認めるのはちょっとご都合主義の感じがするかな。

 

以上で謎が全て解けて大団円と思いきや、

実は暗号解読が誤読で夕焼けではなく朝焼けが正解で発掘すると

木箱から英国人女性の息子の白骨死体が見つかると。

 

エピローグ1によって

プロローグ1の男がつぶやく「啓一」は高瀬ということで伏線を回収している。

 

そしてエピローグ2によってペンションの謎自体が解明されると。

 

謎が解明されてからも、さらに二転三転していくのは流石ではある。

密室トリックの謎も文章だけでは理解しにくいのを図で説明してくれているので

非常に分かりやすくなっている。

 

難点としては登場人物の多さと個性がほとんど感じられないところかな。

ここがもう少し描かれていればもっと感情移入できたかなと思う。

マスター、シェフ、クルミ、上条など最後に物語に関わってくるのは良いんだけど。