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【東野圭吾】『あなたが誰かを殺した』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『あなたが誰かを殺した』を紹介します。

加賀恭一郎シリーズの第十二作目にあたる作品です。

あなたが誰かを殺した

あなたが誰かを殺した

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:312ページ(単行本)

読了日:2024年1月4日

 

東野圭吾さんの『あなたが誰かを殺した』。

加賀恭一郎シリーズの第十二弾で、長編になっている。

このミステリーがすごい!2024年版」3位、

「ミステリが読みたい!2024年版」5位、

「2023「週刊文春」ミステリベスト10」2位、

「2024本格ミステリ・ベスト10」3位になっている。

 

あらすじ

閑静な別荘地で、夏には近隣の別荘の持ち主たちが集まって

バーベキュー・パーティーをするのが毎年の恒例になっていた。

しかし、この催しが思いがけない悲劇の幕開けとなってしまった。

バーベキュー・パーティーの参加者の複数が殺されたり、

怪我を負うという凄惨な連続殺人事件が発生した。

別荘地で起きた凄惨な事件の犯人は、意外な形で判明した。

別荘地近くのホテルのレストランで食事をしていた男が、食後に支配人を呼び、

自分が殺人事件の犯人だから警察に通報しろ、と言ったのだ。

その犯人・桧川大志は別荘地で起きた殺人事件の犯人は自分だと供述し、

犯行に至った動機も語ったが、犯行の詳細については何ひとつ話そうとはしなかった。

 

犯人の中途半端な自供に納得がいかない遺族たちは、

この犯行がどのように行われたのかを少しでも明らかにしたいという思いで、

遺族たちが集まる検証会を開催することにした。

被害者家族の一人である鷲尾春那は先輩看護師である金森登紀子に声をかけたが、

その金森が紹介したのが警視庁の刑事・加賀恭一郎で、

検証会に加賀も参加することになった。

 

登場人物

・加賀恭一郎:警視庁刑事部捜査第一課の刑事。現在、長期休暇を取っている。

       鷲尾春那の同行者として検証会に参加することに。

栗原家

・栗原正則:公認会計士

・栗原由美子:栗原正則の妻。美容師で青山で美容院を経営している。

・栗原朋香:栗原正則と由美子の娘。中学三年生。札幌の寄宿舎で生活をしている。

 

高塚家

・高塚俊策:大きな会社をいくつも経営している。会長。

・高塚桂子:高塚俊策の妻。

・小坂均:高塚俊策の会社の社員。

・小坂七海:小坂均の妻。

・小坂海斗:小坂均と七海の息子。小学校六年生。

 

山之内

山之内静枝:資産家だった夫の死後に別荘に移り住んだ女性。

・鷲尾春那:山之内静枝の姪。看護師。

・鷲尾英輔:鷲尾春那の夫。薬剤師。

 

櫻木家

・櫻木洋一:医者で櫻木病院の経営者。

・櫻木千鶴:櫻木陽一の妻。

・櫻木理恵:櫻木洋一と千鶴の娘。櫻木病院の事務局の広報室勤務。

・的場雅也:櫻木理恵の婚約者。櫻木病院の内科医。

 

・桧川大志:犯人。無職。二十八歳。父親は財務官僚。

・金森登紀子:看護師。鷲尾春那が勤務している病院の先輩。

       加賀恭一郎を鷲尾春那に紹介した。

・久納真穂:栗原朋香が生活している寄宿舎の指導員。

      栗原朋香の同行者として検証会に参加することに。

・榊:地元の警察の刑事課長。捜査責任者。オブザーバーとして検証会に同席。

・ゴトウ:『鶴屋ホテル』のメイン・ダイニングルームの給士係。

 

ネタバレなしの感想

ストーリーは閑静な別荘地で起きた連続殺人事件。

犯人は自ら名乗り出て、逮捕されるも、事件の詳細を語らない。

被害者たちが事件の検証会をすることになり、

そこに加賀恭一郎が参加するという流れ。

犯人は誰でもよかったと供述しているが、

本当にそうなのか?ということに疑問を持った加賀が、事件の真相を探るというもの。

最初は、物語のポイント(謎)がどこにあるのかは若干あやふやだとは思うけれど、

読みやすさもあって、私はそこまで気にならなかった。

 

加賀シリーズの最新作で、タイトルからだと

どちらかが彼女を殺した』や『私が彼を殺した』のような本格推理ものを

連想するけれど、この二作ほどの本格的な推理小説とまではいかないかな。

かといって加賀シリーズ後期の人情や社会派的とも違くて、

ある意味ではオーソドックスなミステリー小説になっている。

別荘地のイラストや事件時刻など分かりやすく描かれているのも特徴で、

これからも最近の作風とはちょっと違うことがわかる。

また、加賀の出番も早い段階で登場して、

全編にわたって活躍しているのも特徴なので、加賀シリーズのファンなら

読むことをお薦めする。

 

 

ネタバレありの感想

タイトルから本格推理ものだと思い込んだのもあり、

今作は事前の情報を全く入れずに読んで犯人当てをしてみました。

読んでいくと分かるけれど、「嘘」が一つのポイントだろうということで、

犯人に直結する嘘にあたるのは小坂海斗の証言の「犯人は東側に行った」というもの。

逆側の西側であれば犯人は栗原朋香になって、

海斗とはバーベキュー・パーティーで一緒に話しているのと、

物語冒頭でミステリーの動画を見てるのが伏線と予想。

そして、結論からいうと予想通り犯人は朋香ということで予想はあった、

どちらかが彼女を殺した』と『私が彼を殺した』と比べたら推理ものとしては、

かなり分かりやすかった。

読み返しても見ると、冒頭で栗原由美子が「意外性はゼロだった」ていうのは、

読者向けの皮肉なのかな。

もっとも、物語としてはもう一捻りあって鷲尾春那が、

夫の英輔を殺しているということで、

英輔が山之内静枝と不倫関係にあったというのが理由。

意外性があったという意味では流石。

 

最近は人情や社会派的な話が多かったのもあって、

今作のような殺人事件の謎そのものというのは懐かしさもあって、かなり楽しめた。

あとは、やはり加賀がずっと登場していて、活躍しているのも良かった。