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【東野圭吾】『赤い指』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『赤い指』を紹介します。

加賀恭一郎シリーズの第七作目にあたる作品です。

赤い指

赤い指

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:320ページ

読了日:2023年2月16日

 

加賀恭一郎シリーズの第七作目。

『嘘をもうひとつだけ』とは変わって、本作は長編小説になっている。

加賀恭一郎シリーズではあるけれど、視点は他の人物になっている。

また東野圭吾さんが『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞後第一作にあたる。

『赤い指』は阿部寛さん主演でテレビドラマで映像化もされている。

連続ドラマ『新参者』のSPドラマとして2011年1月に放送された。

 

あらすじ

前原昭夫は妻の八重子と一人息子の直巳と昭夫の母親の政恵の四人で暮らしている。

八重子と政恵は折り合いが悪く、さらには政恵は認知症になってしまう。

息子の直巳は小さな頃から癇癪持ちで、最近では幼女趣味があるのでないかと

両親から疑われていた。

家族に問題を抱えた昭夫は家に早く帰りたくないので残業をしていたが、

妻の八重子から「早く帰ってきてほしい」と電話がかかってくる。

急いで家に帰った昭夫は

自宅の庭で黒いビニール袋をかぶせてある少女の遺体を見つける。

少女は直巳が家に連れ込んで殺害したのだった。

当初は警察に届けようとするが、八重子の説得によって事件を隠蔽しようとする。

深夜に自宅から十分ほどの銀杏公園のトイレに少女の遺体を遺棄するのだった。

 

遺体はすぐに発見され、捜査一課の松宮脩平は従弟である

練馬署の刑事・加賀恭一郎と組むことになる。

加賀の父親である隆正は癌に冒されて入院中にも関わらず、

加賀は病院に見舞いにも訪れない。

隆正にお世話になった松宮は加賀の心情を理解できず、複雑な感情を抱いていた。

 

加賀はあるきっかけから前原家に疑いの目を向けるが、

警察の捜査が前原家に向いていることを悟った昭夫はある考えを実行にうつす・・・

 

登場人物

・加賀恭一郎:練馬署の刑事。

・松宮脩平:捜査一課の刑事。加賀の従弟。

・加賀隆正:加賀恭一郎の父親。元警察官。

      警官を退職後は警備会社のアドバイザーをしていた。

      胆嚢と肝臓が癌に冒されている。入院中。

・松宮克子:松宮脩平の母親。加賀隆正の妹。

・金森登紀子:看護婦。

 

・前原昭夫:四十七歳。照明器具メーカーに勤務している。

・前原八重子:四十二歳。昭夫の妻。

・前原直巳:十四歳。中学三年生。

・前原政恵:七十二歳。昭夫の母親。認知症になっている。

・前原章一郎:故人。昭夫の父親。

・田島晴美:昭夫よりも四歳下の妹。夫は洋品店を経営。

 

・春日井優菜:事件の被害者。七歳。小学二年生。

・春日井忠彦:春日井優菜の父親。

・春日井奈津子:春日井優菜の母親。

 

坂上:捜査一課の刑事。三十代半ば。

・小林:捜査一課の主任。

・石垣:捜査一課の係長。

感想

感想

まず一言で言うと重い。

二言で言うなら重く、暗いという感じ。

それもそのはずで家族が小説のテーマになっていて、

事件の加害者の家族である前原昭夫の視点でも物語が進んでいくことになる。

これが読んでできついものがある。

まず昭夫の両親の認知症の話であったり、嫁姑の確執とか、

とにかく重く暗い話が続く。

さらに昭夫の息子の直巳の問題も絡んでくるという感じかな。

 

昭夫の妻の八重子が憎たらしいわけですよ。

おそらく東野さんクラスだとこれは意識的にそう書いてるんでしょうけどね。

嫁姑問題だけならともかく、

息子の直巳への態度とか読んでるとしんどいですよね。

父親の昭夫視点で物語が進むこともあって、

こっちは受け身の消極的なキャラなんだけど、

途中まではまだ我慢できてたけど、ある時点からは駄目だったな。

ただ、それがリアルといえばリアルなのがきついんだよね。

 

事件そのものについては作中の序盤から昭夫視点で語られるので、

いわゆる犯人当ての要素はない。

が、そこは東野圭吾さんなので仕掛けはしっかりとあるのでご安心を。

 

基本的には読んでて楽しい気分になるような作品ではないですね。

殺人事件は多少の飛躍はあったとしても、

大なり小なり身近なテーマとかありそうな話であるのが

余計に読んでて辛くなるんですよね。

加賀恭一郎シリーズだから読んだけれど、

そうじゃなければ途中で辞めてたかもしれませんね。

あくまで読書は娯楽だと思ってるので。

ただ、決してつまらない話ではなく、かなり考えさせられる話ですね。

 

加賀恭一郎と父親の隆正の話も絡んでる来るんだけど、

加賀シリーズ一作目の『卒業』でチラッと描かれていた加賀の母親の件からの、

加賀と父親の確執が描かれている。

 

 

ネタバレありの感想

やっぱり政恵が実は認知症じゃなかったってのは結構な衝撃ですよね。

正直さすがに設定に無理があるかなーとは思うんですよ。

でも、それでも読ませるものがある。

たぶんだけど政恵その人が心情を語るわけではないから、

読み手に想像させる余地が生まれるのかなと。

で、これを書いてる時にちょっと読み返してて思ったんだけど、

昭夫が少女の遺体を捨てに行くときに政恵が門のところに現れるのは、

やっぱりこの時点で昭夫に正しいことをしてほしいからなんだよなと考えると、

色々と考えさせられますね。

そうするとやっぱり親子の話で、

加賀と父親の話も当然親子だから、ここがテーマになって描かれてるわけですよね。

まあ、昭夫と直巳も親子なんだけど、それはそれとしてね。

隆正が指してる将棋の相手が加賀だったのは全く想像してなかったな。