MENU

【東野圭吾】 『どちらかが彼女を殺した』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『どちらかが彼女を殺した』を紹介します。

加賀恭一郎シリーズの第三作目にあたる作品です。

どちらかが彼女を殺した

どちらかが彼女を殺した

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:356ページ

読了日:2023年1月6日

 

 

加賀恭一郎シリーズの三作目である『どちらかが彼女を殺した』。

前作『眠りの森』では警視庁捜査一課の刑事として登場した加賀恭一郎が、

練馬警察署の巡査部長として再び登場する。

講談社文庫版は六章と袋綴じで構成されている。

一章は和泉園子視点、二章から六章は和泉康正視点で描かれる。

本書『どちらかが彼女を殺した』の特徴は、本格推理ものとして描かれていること。

その影響もあるのか映像化はされていない。

 

あらすじ

あらすじ

唯一の肉親であり、最愛の妹である和泉園子が死んだ。

家に帰ってくると電話で告げながら帰省をしなかったので、

兄である和泉康正が東京の園子の住むマンションを訪れて死体を発見する。

一見、自殺のように見えるが偽装自殺だと見破った和泉康正は

自らの手で犯人に裁きを下すことを決意する。

独自の捜査の結果、犯人を二人に絞り込む。

一人は妹の親友である、弓場佳世子。

もう一人はかつての恋人である、佃潤一。 

妹の復讐に燃え真犯人に迫る和泉康正、

その前に立ちはだかるのは練馬署の加賀恭一郎刑事。

 

登場人物

加賀恭一郎:練馬警察署の巡査部長。

和泉園子:二十代後半。第一章の主人公。電子部品メーカーの東京支社に勤務している。

和泉康正:愛知県警豊橋警察署交通課所属。和泉園子の兄。

     第二章から第六章は和泉康正視点で描かれる。

弓場佳世子:和泉園子が唯一心を許せる友人で高校の一年と三年の時に同じクラスだった。

      園子と同じ大学の同じ学部に進学。現在は保険会社に勤めている。

佃潤一:和泉園子の元恋人。

    画家を目指していたが、現在は父親が社長を務める大手出版会社に勤務。

山辺:練馬警察署の刑事。四十半ばぐらい、係長(和泉康正の推測)。

 

感想

感想

以前読んだことはあるんだけど、

今回読むまで勘違いしてたことがあって、和泉康正の存在を完全に忘れてたわけです。

私の中では本作の主人公は加賀恭一郎でどちらか、

つまりは佃潤一か弓場佳世子のどちらが犯人なのかを

加賀恭一郎視点で推理する話だと思い込んでいたわけです。

それが、和泉康正が実際には主人公だから驚いたわけですよ。

しかも、和泉康正が何をするか?と言えば犯人特定の証拠になりそうなものを、

持ち去って自殺と見せかけようとするわけです。

もう一つの特徴は犯人が作中では明かされてないこと。

これが本作『どちらかが彼女を殺した』の最大の特徴でしょう。

佃潤一と弓場佳世子のどちらが和泉園子を殺したのかを推理するわけですけど、

作中で明確に語られるわけではないんですね。

通常なら探偵役が推理をして、その結果として犯人が語られるわけですけど、

本作では一切明かされないわけです。

ちなみに講談社文庫版には袋綴じがあるんですけど、

最初はその袋綴じの中で犯人が語られているのかと思ってたんですけど、

そうではありませんでした。

目次にあるように推理の手引き《袋綴じ解説》となっているように、

あくまでも推理のための手引きであり、解説にすぎないわけです。

ちなみに、

袋綴じを読む前に自分自身で本書を読み直して犯人当ての推理をした方が良いと思います。

普通に本を読んで、犯人が書いてない?アレ?、すぐに袋綴じ読もう!!って感じで、

袋綴じを読んでしまったので結構後悔してしまいました。 

袋綴じを読む前に犯人がどっちかわかったか?と問われると、わかりませんでしたね。

いや、何となくここがポイントってのはわかるんですけどね(当たり前か)。

本格推理ものなので、犯人当てとかそこだけかと言えばそうでもなくて、

そこは東野圭吾さんなのでキャラクターの感情とか

行動原理みたいなのは比較的しっかりしてるので読みやすいし、

違和感とかは少なかったですね。

若干気になる部分はあるんですけど、そこはネタバレありの感想の方で。

たぶん二十年ぶりぐらいに読んだんですけど、非常に面白かったです。

 

 

ネタバレありの感想

まあ、ハッキリ言うけど犯人当てはよくわかりませんでしたね。

途中というか、かなり初期(文庫版だと95ページと96ページ)に

右利きと左利きのことが書いてあったので、

それがポイントなんだろうというのはわかるんですけど、

最後の和泉康正による、弓場佳世子と佃潤一への尋問シーンというのか

推理シーンを読んでて利き腕の話は関係ないのかなーと思っちゃったわけですよ。

もっとも、ゴミ箱のシーンでアレ・・・とは思いましたけどね。

袋綴じを読んでノベルス版から「左手」でがカットされたらしいけど、

これ難しくないですか?

袋綴じ読んでもすぐには理解できなかったからな。

ただ、推理できなくても十分面白い作品になってます。

練馬署管内で起きているOL殺人事件がしっかりと伏線になっているのも含めて

やっぱり東野圭吾さんは凄すぎなんですよね。

あと、

どうしてもひとつだけ気になったのは弓場佳世子のアダルトビデオ出演の件なんですよ。

どうやって和泉園子は知ったんでしょうね?

ネット時代でもないのに。 

弓場佳世子本人が和泉園子に話したんでしょうかね?

ここはいまいち納得できませんでしたね。