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【東野圭吾】『浪花少年探偵団』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『浪花少年探偵団』を紹介します。

浪花少年探偵団シリーズの一作目である。

浪花少年探偵団

浪花少年探偵団[新装版]

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:368ページ

読了日:2023年11月9日

 

東野圭吾さんの『浪花少年探偵団』。

浪花少年探偵団シリーズの第一弾である。

2000年と2012年にテレビドラマ化されている。

五篇収録の短編集。

 

・しのぶセンセの推理

あらすじ

大路小学校の教師の竹内しのぶ。

しのぶが担任を勤めるクラスの福島友宏の父親の文雄が殺害された。

事件を担当することになった大阪府警捜査一課の漆崎と新藤は

事件前夜に文雄が妻の雪江の制止を振り切り、

お金を持って車で出て行ったことを確認するが、それ以上の進展はなかった。

一方、しのぶはクラスの原田と畑中が喧嘩をしているのを仲裁するが、

畑中から福島友宏が父親のことを死んだらええのにと言っていたと聞いて、

不安になり事件に関心を持つが。

 

ネタバレありの感想

記念すべきしのぶセンセシリーズ一話目。

主人公の竹内しのぶのキャラクターもそこまで立ってるとは思わないけど、

関西弁の軽妙な会話は読んでいても面白い。

本格的なトリックとかミステリーとはライトミステリーという感じかな。

事件の真相も殺人事件ではなくて、

あくまで正当防衛なので比較的軽い感じになっている。

 

・しのぶセンセと家なき子

あらすじ

しのぶは田中鉄平と原田が買ったファミコン・ソフトを

ひったくりに奪われた話を聞き、ひったくりを捕まえようとする。

しのぶとは二人は布施の駅前で張り込みをし、ひったくりを見つけるが、

あまりの速さに撒かれてしまう。

一方、男性が刺殺された事件が発生し、その男性は一人息子と暮らしていたが、

行方不明となっていた。

 

ネタバレありの感想

鉄平たちがひったくりに遭い、それをしのぶが捕まえようとして、

そこに殺人事件も絡んでくるという話。

事件の真相は自殺ということで、これまたかなり軽くなっている。

基本的には軽いんだけど、ラストだけはちょっぴり切なくなっている。

 

・しのぶセンセのお見合い

あらすじ

教頭の中田に勧められてお見合いをすることになったしのぶ。

相手はK工業の幹部候補生の本間義彦。

鉄平たちからしのぶがお見合いをすると連絡を受けた新藤は、

鉄平たちと共にお見合いを見張ることに。

お見合いが順調に進む中、仲人のK工業の社長の元山が殺害されたという報せが入る。

 

ネタバレありの感想

新藤の恋のライバルの本間義彦が初登場する話。

ここからシリーズものの良さが発揮され始めて、

鉄平と原田のコンビが新藤にしのぶの見合いの情報を教えるほどの関係になっている。

二人からの電話を受けた漆崎も含めて、キャラクターも完全にたってきた感じがある。

事件そのものは本間が戸村を庇ってたりと人情ものの要素もありつつ、

田辺と大原ゆり子が使い込みを隠すために社長を殺したのが真相。

 

・しのぶセンセのクリスマス

あらすじ

クリスマス・イブに女性がお風呂で手首を切って死亡した事件が発生した。

自殺に見せかけた他殺であると断定され、

バスルームの壁には「ケーキ」という血文字が残されていた。

一方、しのぶは新藤や鉄平たちと本間の家でクリスマス・パーティーをすることに。

だが、しのぶが調達したクリスマス・ケーキの中から血の付いたナイフが発見される。

 

ネタバレありの感想

しのぶと本間のクリスマス・パーティーを邪魔する鉄平と原田のコンビ。

新藤から双眼鏡とマドンナのCDをクリスマス・プレゼントとして貰ったりと

らしさを発揮をしていてる。

漆崎も事件に絡んできたしのぶに

「騒ぎが起こる前に連絡してくれませんか」と言ったりと

それぞれのキャラクターの良さを活かした安定の面白さ。

他殺に見せかけた自殺という真相で、写真が伏線になっている。

ただ、ケーキの中にナイフ入れるのって難易度高いよなとは思う。

 

・しのぶセンセを仰げば尊し

あらすじ

ラブホテルの裏側で女性の遺体が発見された。

一方、

熱で学校を休んだ鉄平は、同じマンションに住む朝倉奈々の母親が三階のベランダから

転落した場面に遭遇する。

命に別状はなかったものの、

奈々と話した鉄平は誰かが突き落としたのでないかと考え、

しのぶに相談する。

 

ネタバレありの感想

ベランダからの転落騒動は一種の密室事件。

突き落としたのではなく、下から布団から引っ張られていたというオチ。

鉄平が横田を追いかけてトラックに乗ったりと活躍するのが見所だけど、

意外にそのシーンの直接的な描写は無いのでちょっと物足りない。

仰げば尊しというタイトルから連想できるように卒業式絡みで、

しのぶは内地留学を決断する。

最後は卒業式でしのぶを待っている子供たちという終わり方。

 

登場人物

・竹内しのぶ:大路小学校の教師

・田中鉄平:大路小学校六年五組。

・原田:大路小学校六年五組。

・畑中:大路小学校六年五組。妹がいる。

・中田:大路小学校の教頭。あだ名はゼロジュウ。

・漆崎:大阪府警捜査一課の刑事。新藤の先輩。

・新藤:大阪府警捜査一課の刑事。

・本間義彦:K工業勤務。二十八歳。

・村井:大阪府警捜査一課の刑事。班長

 

しのぶセンセの推理に登場

・福島文男:事件の被害者。失業中。四十歳。

・福島雪江:株式会社チルド堺工場勤務。

・福島友宏:小学六年生。

・福島則夫:小学二年生。

・山田徳子:福島家の隣の部屋の住人。

・小川:N建設株式会社の社長。

・尾形:住吉署の刑事。

・木戸一郎:株式会社チルド堺工場の製造部長。

 

しのぶセンセと家なき子に登場

・荒川利夫:事件の被害者。

・梶野政司:荒川利夫が住む家の家主。

・梶野真知子:梶野政司の娘。

・千恵子:荒川利夫の前妻。

・阿部紀子:死体の発見者。

・石井:所轄署の刑事。

 

しのぶセンセのお見合いに登場

・元山政夫:事件の被害者。K工業の社長。

・元山武夫:K工業の専務。元山政夫の息子。

・田辺:K工業の工場長。

・大原ゆり子:K工業経理部。

・戸村:K工業の下請け工場。

 

しのぶセンセのクリスマスに登場

・高野千賀子:英会話スクールの事務員。

・藤川明子:事件の被害者。以前は英会話スクール勤務。

・松本悟郎:英会話スクールの講師。高野千賀子の恋人。

・酒井直行:電気店勤務。藤川明子の恋人。

・広田:漆崎の後輩の刑事。

・筒井美智代:英会話スクール勤務。

・竹内妙子:竹内しのぶの母親。

 

しのぶセンセを仰げば尊しに登場

・朝倉奈々:大路小学校五年生。田中鉄平と同じ緑山ハイツに住んでいる。

朝倉町子:朝倉奈々の母親。

・朝倉昌子:朝倉町子の妹。

田中美佐子:田中鉄平の母親。

・宮本清子:事件の被害者。電子部品会社勤務。大路小学校の卒業生。

・宮本和美:宮本清子の母親。

・飯塚:電子部品会社勤務。宮本清子のラインの班長

・児玉春代:電子部品会社勤務。宮本清子の同期。

・大瀬:電子部品会社勤務。

・横田:電子部品会社勤務。

 

総評

東野圭吾さんの初期のシリーズものの『浪花少年探偵団』。

以前読んだことはあったけれど、今読んでも十分楽しめた。

事件の真相に関しては五篇中二篇は覚えていたけれど、

覚えていても問題なく楽しめる内容になっている。

大阪出身の東野さんということもあり、大阪弁による軽妙なやり取りはかなり面白い。

小学校の先生が主役で子供たちも登場することもあり、

そこまで本格的なミステリーではないけれど、

キャラクターや会話の面白さ重視なので気軽に楽しめるようになっている。

1988年に単行本が出ているけれど、今でも十分楽しめる一冊になっている。