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【東野圭吾】『しのぶセンセにサヨナラ』についての解説と感想

本記事では東野圭吾さんの小説『しのぶセンセにサヨナラ』を紹介します。

浪花少年探偵団シリーズの二作目である。

しのぶセンセにサヨナラ

しのぶセンセにサヨナラ[新装版]

著者:東野圭吾

出版社:講談社

ページ数:368ページ

読了日:2023年11月15日

 

東野圭吾さんの『しのぶセンセにサヨナラ』。

浪花少年探偵団シリーズの第二弾。

2000年と2012年にテレビドラマ化されている。

六篇収録の短編集。

 

・しのぶセンセは勉強中

あらすじ

田中鉄平に頼まれて草野球の試合に参加した竹内しのぶ。

試合には負けてしまったが、対戦相手の「西丸商店」の西丸善兵衛会長から

家に招かれ、秘書としてスカウトされる。

スカウトを断り席を立とうとした時に、

会社の方から叫び声と何かが地面に叩きつけられたような鈍い音がした。

それは米岡販売部長が転落死した音だった。

状況からして自殺にしては不自然で、他殺なら密室殺人だが。

 

ネタバレありの感想

前作のラストからの続きで内地留学中のしのぶが

西丸商店にスカウトされるところから、事件に巻き込まれていく。

米岡の事故死を、西丸仙兵衛が自殺に見せかけたのを、

さらには漆崎が自殺であったと真相を見破る。

ただ、それよりも合理化の名のもとに、

それに適応できなかった物語的要素の方が印象に残るかな。

 

・しのぶセンセは暴走族

あらすじ

しのぶは子供の交通事故死が激増しているニュースを見て、

子供たちを交通事故から守らねばならないと思い、自動車学校に通い始めた。

原田郁夫の母親の日出子に誘われて、教官の若本の早朝の特訓に参加する。

だが、特訓が終わってアパートに帰ると、部屋の前に犬の糞が放置されていた。

二日続けて犬の糞が放置されたため、犯人を捕まえようとしのぶが特訓を休んだ日に、

日出子が事故に遭い、若本が意識不明の重体に陥ってしまう。

 

ネタバレありの感想

しのぶが運転免許を取得しようとする話。

原田の母親の日出子の登場もあり、原田と鉄平も活躍するという意味では、

しのぶセンセシリーズらしい話になっている。

犬の糞が物語の大きな鍵を握っていたり、

最後はしのぶが車を運転して犯人を捕まえたりとアクション要素もある。

配車係が犯人の一人でもあるので、ミステリーとしても結構完成度が高い。

 

・しのぶセンセの上京

あらすじ

しのぶは東京に引っ越したかつての教え子の中西雄太から手紙を受け取った。

しのぶは手紙を読んで不安を感じ、友人の結婚式に招待された機会を使い、

鉄平と原田と共に上京することに。

のぶたちは中西家を訪れたが、両親の仲は険悪で、母親の頼みもあり、

のぶたちはホテルに泊まることになった。

ホテルに向かうも道に迷った三人は、本間に連絡をし助けてもらうことに。

その間、中西家に電話をしたしのぶは、中西家で誘拐事件が起きていること知るが。

 

ネタバレありの感想

のぶたちが東京で活躍する話。

誘拐事件を中西雄太と姉の景子がでっちあげるわけだけど、

これ自体はなんとなく予想がついたけれど、

『環』と『還』を間違えているというのは気づかなかった。

このシリーズらしい軽いミステリーで、ついでに久しぶりに本間義彦が登場している。

私は東京で迷った場面はかなり面白くて、好き。

 

・しのぶセンセは入院中

あらすじ

盲腸で入院することになったしのぶ。

そして、しのぶと同室になった藤野の夫が強盗に襲われる事件が発生する。

 

ネタバレありの感想

前篇に引き続き本間が登場して、畑中が久しぶりに登場する。

しのぶが盲腸で入院したこともあって、

病室のシーンが多いけれど、

藤野老婆のキャラクターもあって笑えるようになっている。

本間と新藤のやりとりがあるのは、今作ではこの話だけなのが惜しい。

 

・しのぶセンセの引っ越し

あらすじ

東成区大今里の住宅に侵入した男が住人の松岡稲子に殺された。

稲子と男に面識はないため、正当防衛の可能性もある中、男の身元が判明する。

新藤は男の住所先である、しのぶが住むアパートを訪ねる。

一方、しのぶは二年間の内地留学を終え、教師として復帰するため、

鉄平と原田と共に実家への引っ越し準備を進めていた。

 

ネタバレありの感想

しのぶセンセらしからぬ少しだけシリアスな話。

結局計画的な殺人なんだけれど、

事情が事情ということで漆崎も見て見ぬ振りをするんだけど、

しのぶセンセシリーズには合わない話かなと思う。

 

・しのぶセンセの復活

あらすじ

しのぶは文福小学校に赴任し、四年二組を受け持つことになった。

生徒たちは転勤した前の担任の山下の影響力が強く、

何かにつけて山下を引き合いに出して、素直に言うことを聞かないのであった。

そんな中、しのぶは山下が生徒の渋谷が跳び箱の練習中に

跳び箱が倒れて怪我をしたことによって、転勤をしたこと知った。

しのぶは跳び箱がそんな簡単に倒れるのか疑問を持つ。

 

ネタバレありの感想

最終話でしのぶが教職に復帰した話。

鉄平と原田の悪ガキコンビは登場せず、笑いはほぼ無し。

ミステリーも跳び箱が倒れたという、比較的軽いものになっている。

ただ、話そのものは決して悪くは無くて、

最後は生徒たちが以前と変わっているので読後感は悪くはない。

 

登場人物

・竹内しのぶ:内地留学で兵庫県の大学に在学中。

       以前は大路小学校で先生を勤めていた。

・田中鉄平:中学生。大路小学校時代の竹内しのぶの教え子。

・原田郁夫:中学生。大路小学校時代の竹内しのぶの教え子。

・新藤:大阪府警本部捜査一課の刑事。

・漆崎:大阪府警本部捜査一課の刑事。新藤の先輩。

・村井:大阪府警本部捜査一課の刑事。漆崎たちのキャップ。警部。

・本間義彦:かつて竹内しのぶがお見合いをした男性。現在は東京在住。

・竹内妙子:竹内しのぶの母親。

 

しのぶセンセは勉強中に登場

・西丸仙兵衛:西丸商店の会長。

・西丸昭一:西丸商店の社長。西丸仙兵衛の息子。

・富井:西丸商店勤務。

・米岡伸治:事件の被害者。西丸商店の販売部長。

 

しのぶセンセは暴走族に登場

・原田日出子:原田郁夫の母親。

・若本:『大阪グリーン自動車教習所』の教官。

・小林:『大阪グリーン自動車教習所』の配車係。

 

しのぶセンセの上京に登場

・中西雄太:中学生。竹内しのぶの大路小学校時代の教え子。

・中西景子:中西雄太の姉。

・中西利広:中西雄太の弟。

・中西母親:雄太の母親。

・中西父親:雄太の父親。

 

しのぶセンセは入院中に登場

・畑中弘:中学生。竹内しのぶの大路小学校時代の教え子。

・藤野:帯状ヘルペスで入院している老婆。

・藤野与平:藤野の夫。

 

しのぶセンセの引っ越しに登場

・松岡稲子:事件の加害者となった六十二歳の女性。

・永山和雄:事件の被害者。

・安西芳子:永山和雄の内縁の妻。

・安西千鶴:安西芳子の娘。小学生。

 

しのぶセンセの復活に登場

・渋谷淳一:文福小学校四年二組。

・上原美奈子:文福小学校四年二組。

・芹沢勤:文福小学校四年二組。

・芹沢育子:芹沢勤の母親。生命保険会社の外交員。

・山下博夫:文福小学校四年二組が三年だった時の担任教師。

      現在は違う小学校で教師をやっている。

 

総評

しのぶセンセシリーズの第二作目であり、シリーズ最終作。

しのぶセンセというタイトルながらも、

前作のラストでしのぶは大路小学校を辞めているので学校の先生ではなくて、

内地留学で大学に在学中という設定になっている。

二作目ということもあり、

世界観やキャラクターが立っているのもあって安定の面白さになっている。

ミステリーとしては前作に引き続き、軽い感じになっているので気楽に読める。

途中までは文句なく面白いけれど、

最後の方は若干しのぶセンセシリーズとしては微妙かなと思う。

これは、あとがきにあるように

「作者自身が、この世界に留まっていられなくなったから」かなと思う。

もっとも前作の『浪花少年探偵団』が楽しめた方なら十分楽しめるはず。