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【米澤穂信】『栞と嘘の季節』についての解説と感想

どうも、こんにちは。

本記事では米澤穂信さんの小説『栞と嘘の季節』について紹介します。

栞と嘘の季節

栞と嘘の季節

著者:米澤穂信

出版社:集英社

ページ数:368ページ

読了日:2023年2月21日

 

米澤穂信さんの図書委員シリーズ第二作目。

米澤穂信さんが『黒牢城』で直木賞を受賞後第一作になるのが本作『栞と嘘の季節』。

前作の『本と鍵の季節』のラストからは続編があるかは微妙な感じだったが、

無事二作目が刊行された。

シリーズ二作目である『栞と嘘の季節』は長編小説になっている。

四章で構成されている。

 

あらすじ

二月の放課後、図書室で図書委員の仕事を一人でしていた堀川次郎。

以前は松倉詩門と二人で組んで図書当番をしていたが、

松倉はここ二か月ほど図書室に来なくなっていた。

その松倉が二か月ぶりに図書館にやってきた。

委員の仕事である返却されてきた本をチェックしていると、

きれいな花を使った栞が見つかった。

その花は調べた結果猛毒のトリカブトであった。

危険なので二人は栞の持ち主を探すことにした。

数日後、今度は保健室横に掲示された写真の中にトリカブトがあるのを見つける。

聞き込みの結果、校舎の裏でトリカブトがあるのを見つけるが、

美人だが性格が悪いと評判の瀬野が花壇から

トリカブトを抜いて埋めているのを見かける。

花の栞は自分のものだと嘘をついて近づいてきた瀬野とともに、

ふたりは事件の真相を追うことに。

 

登場人物

堀川次郎:二年二組。図書委員。

松倉詩門:高校二年生。図書委員。一年生の時に瀬野と同じクラス。

     岡地とは中学が一緒。

瀬野麗:二年一組。

植田登:高校一年生。図書委員。

東谷理奈:高校二年生。図書委員会の委員長。

岡地恵:二年三組。JE2C高校生デジタルフォトコンテストで入賞。

和泉乃々花:一年二組。岡地恵の写真のモデル。

横瀬:生徒指導部の教師。

櫛塚奈々美:瀬野の友達。

北林洋子:二年生。

八木岡:クラブ「impostor syndrome」のバーテン。

感想

感想

前作の『本と鍵の季節』のラストからし

続編が出るかどうか半々だと思ってたけれど、続編が無事刊行されたので読んでみた。

結論を一言で言ってしまえば、かなり面白かった。

前作は高校生らしく日常的な謎を解き明かしていく話だったと思うけれど、

今作は猛毒のトリカブト絡みの話。

また、前作は連作短編集だったけれど、今作は長編になっているのが最大の違いかな。

 

あと、米澤さんの作品は読むたびに毎回思うけど、

完成度というか話がものすごくしっかり作られてることに感心する。

論理的と言うのか矛盾とか不自然さみたいなのはあまりない。

例えば松倉が栞を追う理由なんかもしっかり理由付けがされているとかね。

今回はブログを書くこともあって、

一回読んだ後にもう一回読んだから余計感じましたね。

 

シリーズものではあるけれど、別に前作を読んでいなくても全く問題はない。

主人公二人以外にも前作から登場する人物たちはいるけれど、

今作から読んでも特に影響はない。

 

前作の『本と鍵の季節』を読んだのが約一年前なので、

細かい部分はほとんど覚えていなかったけれど、

植田登が前作から登場してるのはすぐに分かった。

横瀬先生は読み進めていくうちに何となくいたなと思いだした感じ。

このブログを書くためもあって、

前作の『本と鍵の季節』を読み直したら、

「ロックオンロッカー」に瀬野さんの名前と靴下のエピソードが描かれてるんですね。

この段階で『栞と嘘の季節』のことを考えてたわけではないとは思いますけどね。

 

タイトルに「嘘」とあるように、各所に嘘が散りばめられている。

あの人も嘘をつくし、この人も嘘をついてるという次第。

ある程度読み進めると、この「嘘」が物語のポイントだと気づく感じかな。

たぶん頭が良い人や勘が良い人はタイトルを読んだだけで

推測できるのかもしれないけれど、

私はそうじゃないので、中盤になってから何となく気づきました。

とにかく「嘘」が多いので、この部分を気にしながら読むようになると。

 

物語は高校二年の二月なのでさらなる続編も期待できるんじゃないかな。

 

 

ネタバレありの感想

嘘についてだけど、

松倉が花に詳しくないってのは堀川視点で語られることもあって一応分かった。

と言っても、52ページのセイタカアワダチソウでは全く分からず、

223ページの水仙のくだりで分かったんだけど。

薔薇の名前』下巻から見つかった栞の持ち主が東谷で、

それを実は堀川が認識してたってのは全く分からなかったな。

主役の二人以外は大なり小なり怪しさというか疑う要素があるので、

嘘に関しては何となく察する部分はあったけれど、

八木岡さんはノーマークだったので驚いたな。

 

読み返してみると序盤から嘘嘘嘘なんだね。

そして、登場人物全員が嘘をついてるんだな。

堀川松倉瀬野もだけど、東谷も嘘をついてたし、

植田も嘘をついてたし、岡地と和泉乃々花も嘘をついてたからな。

改めて考えるとタイトル通りだし、凄いな。

 

横瀬トリカブトを使ったのも北林ってのもある程度推測できるというか、

一番怪しい人物だからね。