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【奥田英朗】『リバー』についての解説と感想

どうも、こんにちは。

本記事では奥田英朗さんの小説『リバー』について紹介していきます。

リバー

『リバー』

著者:奥田英朗

出版社:集英社

ページ数:656ページ

読了日:2023年3月4日

 

このミステリーがすごい!2023年版』国内編10位の作品。

本作は犯罪小説を群像劇で描いている。

 

あらすじ

群馬県桐生市渡良瀬川の河川敷で女性の死体が発見された。

数日後、今度は栃木県足利市渡良瀬川河川敷でも女性の死体が発見される。

十年前にも群馬と栃木の両県で二人の若い女性が殺されて

渡良瀬川の河川敷に放置された事件があり未解決のままだった。

果たして十年前と同一犯なのか模倣犯なのか?

 

登場人物

松岡芳邦:六十二歳。松岡写真館の経営者。十年前の事件の被害者の父親。

松岡和子:芳邦の妻。

松岡拓哉:三十二歳。芳邦の息子。

松岡美樹:故人。芳邦の娘。十年前の事件の桐生市側の被害者。

 

斎藤一馬:三十四歳。群馬県警捜査一課三係の刑事。警部補。通称「イチウマ」。

     五歳の息子と三歳の娘がいる。

伊藤:桐生南署刑事一課。巡査部長。

堀部:群馬県警捜査一課長。剣道五段。

西村:群馬県警捜査一課。管理官。

星野:群馬県警の広報官。

牟田:群馬県警本部長。警視監

河瀬:警察庁から派遣された一課長補佐。警視正

 

千野今日子:中央新聞前橋支局の記者。記者三年目。

小坂:中央新聞前橋支局のデスク。

篠田:四十歳。犯罪心理学者。准教授。

 

野島昌弘:足利北警察署刑事第一課の刑事。巡査部長。

広川:栃木県警捜査一課長。

中村:栃木県警刑事部長。

平野:栃木県警捜査一課。かつて滝本の部下だった。

宮田:栃木県警。管理官。

滝本誠司:栃木県警の元刑事。定年退職後はタクシー会社の顧問。

 

吉田明菜:三十二歳。スナック「リオ」の雇われママ。

松坂絵里:二十歳。スナック『リオ』のホステス。源氏名は絵里香。

刈谷文彦:三十二歳。長野県松本市出身。ゼネラル重機太田工場の期間工

     五年前に暴行障害の逮捕歴あり。

 

池田清:四十五歳。無職。元暴力団員。前科八犯。

大山明美:五十二歳。スナック「アケミ」のママ。池田と付き合っている。

 

平塚健太郎:三十一歳。無職。解離性同一性障害。ひきこもり。

平塚耕一:五十九歳。県会議員。健太郎の父親。

 

安藤麻衣子:事件の被害者。桐生市内の渡良瀬川河川敷で遺体で発見される。

      二十三歳。無職。

渡辺沙也加:事件の被害者。足利市内の渡良瀬川河川敷で遺体で発見される。

      二十一歳。アルバイト店員。

 

 

感想

感想

読む前に思ってたのとはちょっと違ったけれど、ものすごく面白かった。

私が非常に大好きな群像劇。

複数の登場人物の視点で物語が展開されていく。

群馬と栃木で連続して発見された全裸の女性の絞殺遺体。

さらに似たような手口の十年前の未解決連続殺人。

この二つの連続事件を巡って、

群馬県警の刑事と栃木県警の刑事、十年前の事件の被害者の父親、

新聞記者、スナックのママ、警察OBの視点で描かれている。

 

ネタバレになるのであまりここでは書かないけれど、

ラストも含めて私はかなり満足度高かったです。

少なくとも尻切れトンボではなかったのは良かった。

 

読んでて精神的にきつく感じたのは

十年前の事件の被害者の父親である松岡芳邦のパート。

十年前の事件の被害者の父親でよく言えば執念ともいえるけど、

悪く言えば狂気とか壊れてる感じがする。

しかも、途中から目の病気が発症するから、余計に読んでてつらくなってくる。

奥田さんの『最悪』に出てきた工場経営者の話を思い出したな。

松岡は作中の最初から壊れてる感じがあって、

実際ほかの人物たちからもひかれてしまうからね。

 

救いのない存在なのは吉田明菜かな。

明菜は母親もそうだし、ラストも救いがないですからね。

松岡と明菜は『最悪』とか『邪魔』あたりを彷彿とさせるんですよね。

 

群馬と栃木の両県で起きる事件ということで

斎藤一馬と野島昌弘がいることによって多面的に描かれているんですよね。

さらに新聞記者の千野今日子の存在によってさらに違う視点もある。

ひとつの事柄でも複数の視点があると重層的に感じますからね。

千野今日子のパートの篠田准教授の話も結構良かったな。

地方の都市の話なんかは非常に面白かった。

 

 

ネタバレありの感想

連続殺人事件の犯人に関してはかなり早い段階で刈谷だろうという推測はできた。

十年前にも期間工として市内で働いていたりトラックや体格など、

刈谷が事件に絡んでいるだろうことは想像に難くない。

じゃあ、池田や健太郎は何なのか?という疑問が浮かんでくる。

池田はサイコパス健太郎解離性同一性障害という風に、

キャラクターは立ってるけど、連続殺人事件にどう関与してるかが不明でしたからね。

それが結局、十年前の事件の一件目が池田で二件目が刈谷だからね。

しかも今回の三件目に健太郎も関わってたというから驚きです。

個人的には色んなピースがきっちりかっちりハマった感じがして良かった。

 

唯一気になったのは刈谷の動機かな。

十年前の事件が池田の事件の模倣からはじまってるなら、

何で十年後事件を再び起こしたのか?

しかも、

もっともここは語りすぎると薄っぺらく感じるかもしれないから、

良し悪しなんだろうけど。

 

現役の刑事二人の斎藤一馬と野島昌弘、新聞記者の千野今日子だけだと

単なる犯罪小説にすぎないだろうけど、

松岡芳邦と吉田明菜の存在が広がりや深みを生み出してるのかな。

松岡と明菜は刑事や記者という仕事としての関りではないだけに、

なかなかきついものがありますけどね。

 

とにかく面白い話でシリアスな話が好きならおすすめです。