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【青崎有吾】『早朝始発の殺風景』についての解説と感想

本記事では青崎有吾さんの小説『早朝始発の殺風景』を紹介します。

早朝始発の殺風景

早朝始発の殺風景

著者:青崎有吾

出版社:集英社

ページ数:208ページ(単行本)

読了日:2023年3月17日

 

青崎有吾さんの『早朝始発の殺風景』。

高校生が主人公の短編集。

『このミステリーが凄い!2020年版』国内編12位の作品。

2022年に山田安奈さんと奥平大兼さん主演でWOWWOWでドラマ化されている。

 

 

・早朝始発の殺風景

早朝始発の電車内で出会ったクラスメイトの加藤木と殺風景。

学校に向かうといっても、朝礼までの三時間をどうするつもりなのか?

相手がなぜ始発電車に乗っているのかを推理しあう。

 

登場人物

・加藤木:映画研究部の部長。

・殺風景:加藤木のクラスメイト。

・叶井:殺風景と仲の良い女子。

・荒川:映画研究部の部員。文化祭用の短編作品の監督。

 

解説

高校のクラスメイト同士がお互いに相手が始発に乗っている理由を推理する話。

始発の電車内での会話のみで話が展開する。

 

 

・メロンソーダ・ファクトリー

水薙女子高の真田、詩子、ノギちゃんの三人は放課後いつも通りファミレスへ。

来月行われる学園祭のクラスTシャツのデザインを決める話し合いをする時に、

詩子は真田がデザインした案を選ばなくて。

 

登場人物

・真田:水薙女子高二年。詩子とは小五からの腐れ縁。中学の時に美術部。

・詩子:水薙女子高二年。

・乃木坂:通称ノギちゃん。真田と詩子とは今年のクラス替えで初めて仲良くなった。

 

解説

ファミレスを舞台にした話。

仲良しの女子高生三人組の話。

典型的な日常系ミステリー。

 

・夢の国には観覧車がない

フォークソング部の追い出し会で幕張ソレイユランドに来た寺脇。

寺脇はなぜか後輩の伊鳥と一緒に大観覧車に乗ることになって。

 

登場人物

・寺脇:三年生。フォークソング部。

・伊鳥:二年生。

・葛城:二年生。高所恐怖症。

 

解説

テーマパークのゴンドラを舞台に部活の先輩と後輩による話。

恋愛絡みの青春系ミステリー。

 

捨て猫と兄妹喧嘩

両親が離婚して今は別々に暮らしている兄妹。

猫を拾った妹が、猫を兄の家で飼ってくれと相談するが。

 

登場人物

妹:水薙女子高の一年生。山雀町のマンションで母親と暮らしている。

兄:啄木高校の二年生。啄木町の一軒家で父親と暮らしている。

 

解説

両親の離婚によって別々の家で暮らしている兄妹の話。

ペット禁止のマンションに住む妹が拾った猫を

一軒家に住んでいる兄に飼ってもらおうとする。

あまり青春感はないけれど、親の離婚の影響を受けてるという意味では青春感はある。

 

・三月四日、午後二時半の密室

水薙女子高の卒業式を風邪で欠席した煤木戸の家に

卒業証書とアルバムを届けにきたクラス委員の草間。

煤木戸の部屋で話をしていると草間は疑問を持つ、

煤木戸は本当に風邪をひいているのか?と。

 

登場人物

・草間:水薙女子高校三年五組のクラス委員。

・煤木戸:水薙女子高校三年五組。

 

解説

卒業式を風邪で欠席した煤木戸さんの家に

証書やアルバムを届けに来たクラス委員の草間さんの話。

特に親しい仲ではないんだけれど、

卒業式後ということもあってちょっぴり独特な空気感の話。

 

・エピローグ

春休み。

感想

ネタバレありの感想

高校生の日常的な生活の中の些細な謎の話。

二人か三人の会話で話は展開していく。

同じ街を舞台にしているけれど、

エピローグで一緒に出てくるぐらいで直接的なつながりは特には無い。

ただ、こういう形のエピローグは個人的にはかなり好みである。

 

本のタイトルの『早朝始発の殺風景』の殺風景が人名だったのがまず最初の驚きかな。

「早朝始発の殺風景」は加藤木と殺風景、

両者とも探偵役でもあり両社とも秘密を抱えてる設定が面白い。

殺風景の秘密は高校生にしてはかなり重いけれど、

書き方なのかそこまで重くは感じさせない。

 

全話共通してることだけれど伏線やちょっとした会話にも意味がある。

「メロンソーダ・ファクトリー」はそこらへんは特に秀逸だった。

たぶん二作目ということで、こういう傾向の話なんだろうと推測できただろうけど。

この話だけは三人によって繰り広げられるのと、

もとから仲良しなのもあって非常に良かった。

 

好きな話は「夢の国には観覧車がない」と「三月四日、午後二時半の密室」かな。

お互いの距離感であるとか話の主題が高校生らしい話。

特に「三月四日、午後二時半の密室」のラストは好きですね。

それまでは特に何もないんだけれど、

卒業式のあととか何かのあとっていうのは

切なさというか寂しさなのか特別な感じがあるんですよね。

「夢の国には観覧車がない」は

 

捨て猫と兄妹喧嘩」は話自体は悪くないけれど、

そもそも兄が猫を捨てたってのがどうもひっかかるんだよな。

里親を探す時間がないって兄は言うけれど何とかしろやって話でしょう。

一年前から飼っていた猫を捨てるって結構酷いんじゃないかと。

まあ、こういうことを言うと

エピローグの全治八か月の件はどうなんだ?って話ではあるけれど、

これは最初に叶井さんの件があるので私は許容できるかな。