家シリーズの第二作目です。
我が家の問題
著者:奥田英朗
出版社:集英社
ページ数:304ページ
読了日:2023年4月27日
『家日和』に続く家族を描いた家シリーズの第二弾。
六篇収録の短編集。
・甘い生活?
あらすじ
新婚の田中淳一は三十二歳の会社員。
十八歳で広島から上京して以来ずっと一人暮らしをしてきた。
結婚当初は結婚生活に感動していたが、
ハネムーン期間が過ぎると軽いい息苦しさを覚えるようになった。
新婚なのに、家に帰りたくなくなって。
登場人物
・田中淳一:広告代理店勤務。
・田中昌美:淳一の妻。現在は専業主婦。以前は大手ゼネコンの総務部で働いていた。
ネタバレありの感想
新婚なのに帰宅恐怖症になった男性の話。
淳一視点で話が進むので心情的には淳一よりになるけれど、
昌美が間違ってるわけでもないという難しい話。
昌美が淳一を試してるところは良い話って感じだけど、
そのあとのオチである夫婦喧嘩は笑いになっている。
・ハズバンド
あらすじ
井上めぐみは初めて参加した夫の会社のソフトボール大会で、
どうやら夫が仕事ができないらしいということを知ってしまう。
登場人物
・井上めぐみ:専業主婦。妊娠六か月。
・井上秀一:めぐみの夫。大手事務機器メーカーの営業職。
ネタバレありの感想
夫が仕事ができないらしい、それを察知してしまった妻の話。
これ途中まではちょっと重いかなと思ったけれど、
笑いというよりは優しい感じになっている。
秀一が野球選手に毒づいたりとそこらへんが妙に現実的なんだよな。
・絵里のエイプリル
あらすじ
高校三年の浜田絵里は両親が離婚したがっていることをしってしまう。
親友の奈緒に相談したり、学校の先生に話を聞いたりするが。
登場人物
・浜田絵里:高校三年生。
・浜田博司:絵里の父親。銀行員。
・絵里の母親:専業主婦。
・浜田修平:絵里の弟。高校一年生。
・奈緒:絵里の親友。
ネタバレありの感想
両親が離婚したがっていることを知ってしまった娘の話。
絵里が友達や周りの人たちに話を聞いてるところもいいんだけれど、
一番良かったのは最後の絵里と修平の会話かな。
それまでの修平はかなり子供っぽく描かれていたのもあって
余計に際立つものがあった。
・夫とUFO
あらすじ
専業主婦の高木美奈子。
夫の達生がUFOを見たと言い出した。
本棚を調べると何冊ものUFO関連の本が見つかったり、
引き出しからは〈UFO研究報告会〉のチラシまで出てきて・・・
登場人物
・高木美奈子:専業主婦。
・高木達生:美奈子の夫。四十二歳。
・高木美咲:美奈子の娘。中学一年生。
・高木大樹:美奈子の息子。小学五年生。
ネタバレありの感想
話だけなら物凄く重い話ではあるんだけれど、それを見事に笑える話にしている。
不安神経症の高校生時代の男子の話があったけれど、
美奈子に物凄く共感した。
「UFO研究報告会」の達生と総帥のやりとりが笑えるけど、
一番笑えるのはコピー星人の美奈子かな、
そしてそれに対する達生の返答。
最後まで読むと妙に優しい気持ちになっているという話。
・里帰り
あらすじ
新婚の岸本幸一と沙代。
結婚して初めてのお盆休みに
それぞれの実家である札幌と名古屋に帰省することになったが。
登場人物
・岸本幸一:IT企業の技術職。三十歳。
・岸本紗代:幸一の妻。デパートの催事の仕事をしている。
ネタバレありの感想
新婚夫婦がお互いの実家に一緒に里帰りする話。
紗代の出身が名古屋なんだけれど、奥田さんは名古屋ネタをちょいちょい出してくる。
(たしか奥田さんは岐阜出身)
このぐらいの地域ネタであれば読んでて笑えるかな。
ただ今の時代って義理の両親はともかく、
ここまでの親戚付き合い自体かなり希少な感じがするな。
(この話が書かれたのは2010年なので既に10年以上前ではあるけれど)
・妻とマラソン
あらすじ
四十六歳の小説家の大塚康夫。
妻の里美がランニングにはまっている。
里美が出版社からの誘いで東京マラソンにでることになって。
登場人物
・大塚康夫:小説家。
・大塚里美:康夫の妻。
・大塚恵介:康夫の双子の息子。中学三年生。
・大塚洋介:康夫の双子の息子。中学三年生。
ネタバレありの感想
妻がランニングにはまった小説家の話。
『家日和』の「妻と玄米御飯」に登場した小説家大塚康夫シリーズ。
シリーズと言っても特に前の話を読んでなくても楽しめる。
東京マラソンに出場することになった里美を家族全員で応援するんだけど、
こういう何気ない話が結構面白い。
総評
基本的には『家日和』と同じで特に大きな出来事が起きるわけではなく、
日常的な話になっている。
厳密にいえば多少の問題も起きてはいるので日常とも言えないかもしれないけど。
一応は『家日和』のシリーズにはなっているけれど、
どちらを先に読んでも特に支障はない。
私が一番良かったのは「夫とUFO」かな。
基本的に読後感はどれも素晴らしいです。