本記事では伊坂幸太郎さんの小説『逆ソクラテス』を紹介します。
逆ソクラテス
著者:伊坂幸太郎
出版社:集英社
ページ数:288ページ(単行本)
読了日:2023年3月29日
表題作の「逆ソクラテス」を含む全五篇収録の短編集。
第33回柴田錬三郎賞受賞作品。
・逆ソクラテス
あらすじ
一番の敵は先入観。
ものごとを決めつけて、それをみんなにも押し付けようとしている久留米先生。
その久留米先生の先入観を崩してやろうとする加賀と安斎。
久留米先生に見下されている草壁と優等生の佐久間を
巻き込んで先入観を崩す計画を実行することに。
登場人物
・加賀:小学六年生。学力も運動もそこそこの存在。
・安斎:加賀のクラスメイト。四月に転校生としてやってきた。
・草壁:加賀のクラスメイト。
・佐久間:加賀のクラスメイト。優等生の女子。
・土田:加賀のクラスメイト。
・久留米:加賀たちの担任の先生。三十代後半。
ネタバレありの感想
とにかく好きな話。
子供の頃はあんまり分からなかったけれど、
佐久間と土田みたいな言い方をする人は結構いるんだよな。
なので安斎の言うことは正しいけど、
実際主張することは大人でもなかなか難しいかなと思う。
だからこそ読んでて安斎に惹かれるのだけど。
意外だったのは最初に登場するプロ野球選手が草壁だったのと、
安斎が土田曰くチンピラみたいだったことかな。
安斎に関してはちょっと現実を突きつけられるラストではある。
・スロウではない
あらすじ
足が遅いにも関わらずくじ引きの結果リレー選手に選ばれた司と村田花。
司の友達の悠太と、村田花の友達の転校生の高城かれんも一緒になって
放課後にリレーの練習を始めるが。
登場人物
・司:リレーのBチームの選手。
・悠太:司の友達。
・村田花:リレーのBチームの選手。
・高城かれん:夏休み明けに転校してきた。
・渋谷亜矢:女子の中心人物で、運動が得意。
・近藤修:学級委員。
・磯憲:磯憲は姓名を短縮した綽名。小学五年と六年の担任。
ネタバレありの感想
これも好きな話。
足が遅いのにリレーのメンバーに選ばれた司と村田花と
子供時代を思い出させる話。
司は『ゴッドファーザー』を見てないのに、
このやりとりを二人でするのが妙なリアルっぽさを感じる。
ピッコロのマントがしっかり伏線になってるのもいい。
ラストの司の寂しさはものすごく分かる。
・非オプティマス
あらすじ
五年生の将太のクラスでは騎士人が授業を妨害して困る久保先生を見て楽しんでいた。
そのことに抗議をする保井福生。
将太は塾の帰りで福生と出会い話をするようになる。
福生は騎士人を痛い目に遭わせようと将太に言うが。
登場人物
・将太:五年生。弟が一人いる。
・保井福生:将太のクラスメイト。五年生になって都内からの転校してきた。
・騎士人:将太のクラスメイト。進学塾に
・潤:将太のクラスメイト。父親と二人で暮らしている。
・久保:将太のクラスの担任。大学を卒業したばかり。
ネタバレありの感想
福生みたいなちょっと独特なキャラクターが登場するのが伊坂さんの魅力かな。
なぜ福生がいつも同じ服を着てるのか?だったり、
久保先生の変化であったりとにかく良かった。
ラストの福生は何を言おうとしてるんだろうか?
・アンスポーツマンライク
あらすじ
歩、三津桜、駿介、剛央、匠はミニバスのチームメイト。
小学六年生のミニバス最後の大会で三点差、
残り一分で駿介がゴールを決め一点差に迫る。
が、駿介が出した足に相手が躓きアンスポーツマンライクファウルをとられたため
試合に負けてしまった。
高校生になった彼らはコーチだった磯憲のお見舞いに行くことに。
登場人物
・歩:高校時代は同級生とバンドを組んでいた。
・三津桜:高校時代は母親の経営する喫茶店を手伝っていた。
・駿介:高校時代は帰宅部。
・剛央:高校時代はバスケ部。
・匠:高校時代は進学校の特進クラス。
・磯憲:歩たちの小学校時代のミニバスのコーチ。
ネタバレありの感想
これは子供時代の話も関わってくるけれど、ちょっと他とは趣が違う。
これだけで見ると結構普通かな。
次の「逆ワシントン」を読むと多少変わるけれど。
・逆ワシントン
あらすじ
謙介と倫彦は靖が義理の父親に虐待されているのではないかと疑いを持つ。
〈教授〉の協力でクレーンゲームで景品のドローンを得ようとするが、
お金が無くなってしまうが。
登場人物
・謙介:父親は大阪に単身赴任中。
・倫彦:謙介の幼稚園からの友達。
・京樹:物知りで大人びているので〈教授〉。
・靖:謙介のクラスメイト。
ネタバレありの感想
主人公である謙介と友達の倫彦の行動力、
京樹の独特なキャラクター、子供たちが主人公らしい話。
それに靖の父親、中山先生、謙介の母親とみんな味がある。
そして最後に「アンスポーツマンライク」に出てきた駿介と犯人のその後が描かれる。
ベタと言えばベタだけど好き。
総評
かなり面白かったです。
もし読む気があるならあまり事前情報無しで読むことをすすめます。
あとがきによると子供を主人公にするのは難しいらしいですけど、
かなり面白かったし、また子供が主人公の小説を読みたいですね。
「逆ソクラテス」の安斎や「非オプティマス」の福生はいいキャラをしている。
子供ではないけど、「逆ワシントン」の母親や「非オプティマス」の久保先生、
磯憲もいいキャラをしている。
「スロウではない」は面白いけど、最後がちょっと切ない。
とにかく全部面白く読めたし、読後感も素晴らしい。
子供が主人公の話が読みたいならおすすめですね。