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【今村昌弘】『屍人荘の殺人』についての解説と感想

本記事では今村昌弘さんの小説『屍人荘の殺人』を紹介します。

屍人荘の殺人シリーズの一作目である。

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

著者:今村昌弘

出版社:東京創元社

ページ数:381ページ

読了日:2023年4月7日

 

今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』。

今村昌弘さんのデビュー作であり、第27回鮎川哲也賞受賞作品。

このミステリーがすごい!2018年版」1位、

週刊文春ミステリーベスト10」1位、「2018本格ミステリ・ベスト10」1位、

第18回本格ミステリ大賞を受賞し、国内ミステリーランキング四冠を達成した。

また神木隆之介さん主演で映画化もされた。

 

あらすじ

神紅大学のミステリ愛好会会長の明智恭介とその助手の葉村譲は

映画研究部の夏合宿に探偵少女・剣崎比留子と参加することに。

合宿初日の夜、彼らは肝試しをするが想像もしていなかった事態が起きて、

紫湛荘に籠城を余儀なくされる。

翌日、密室の中で一人の人物が惨殺死体となって発見されることになる。

 

登場人物

・葉村譲:神紅大学経済学部一回生。ミステリ愛好会会員。

明智恭介:同理学部三回生。ミステリ愛好会会長。「神紅のホームズ」

・剣崎比留子:同文学部二回生。幾多の事件を解決に導いた探偵少女。

・進藤歩:同芸術学部三回生。映画研究部部長。

・星川麗花:同芸術学部三回生。演劇部部員。進藤の恋人。

名張純江:同芸術学部二回生。演劇部部員。神経質な性格。

・高木凛:同経済学部三回生。映画研究部部員。姉御肌。

・静原美冬:同医学部一回生。映画研究部部員。大人しい性格。

・下松孝子:同社会学部三回生。映画研究部部員。明るく強か。

・重本充:同理学部二回生。映画研究部部員。特殊な映画のマニア。

・七宮兼光:同映画研究部OB。紫湛荘オーナーの息子。

・出目飛雄:同OB。七宮の友人。

・立浪波流也:同OB。七宮の友人。

・菅野唯人:紫湛荘の管理人。

・浜坂智教:儀宣大学生物学准教授。

・班目栄龍:岡山の資産家。班目機関の設立者。

(2ページ~3ページから引用)

 

 

ネタバレなしの感想

これに関してはネタバレなしの感想は本当に難しい。

もし『屍人荘の殺人』をまだ読んでなくて、

これから読む気があるなら何も事前情報を入れずに読むことをおすすめします。

私は内容に関してはほぼ事前情報を知らずに読んだので非常に楽しめました。

合わない人はとことん合わないだろうし、

ツッコミどころは結構あるけれど、

それでもかなりのインパクトはありました。

 

文章そのものに関してはあまり癖は無くて読みやすかったです。

一部のキャラと傍点多用はちょっと気になったけれど。

 

 

ネタバレありの感想

最初はよくありがちなミステリー小説なのかなと思いましたよ。

ミステリー小説好きな明智と葉村のコンビ、

そして実際に事件を解決してる探偵少女の剣崎比留子。

彼らが夏の合宿で起こる事件を解決するんだろうと。

浜坂のパートでもしかしたらとは思ったけれど、

それが肝試しのところからまさかまさかのゾンビ登場だから驚いた。

ここで『屍人荘の殺人』というタイトルの意味が何となく分かったけれど、

それでもこの時点でも話がどういう風に展開していくのかはよく分からなかった。

それが紫湛荘に立て籠もる展開でタイトルの意味を完全に理解したと。

ゾンビによってクローズドサークルを作り出すというのは

ちょっと想像を超えてましたね。

 

もっとも今読み返すと1ページ目や裏表紙に

密室や連続殺人事件であることはしっかりと書いてあるので、

普通なら本格ミステリーものであることはわかるはず。

私は全く読んでなかったので分からなかったけれど。

 

あと予想外過ぎたのが明智さんがいきなり犠牲になったこと。

明智さんは非常に魅力的なキャラに思えたので

できれば最後まで生き延びて欲しかったけれど、

そうすると剣崎と明智さんの二人が探偵役になるので

困った展開になってしまうんでしょうけどね。

 

私は本格ミステリーをほとんど読まないので、

本格ミステリーとしての評価はよくわからないです。

犯人も全く分からなかったですからね。

 

いくつか気になった点を挙げておく。

一つ目は静原が二〇六号室に葉村が二〇七号室にいて目が合ってしまった件。

これは葉村と剣崎の主張はいまいち納得できなかった。

被災者から盗む行為と死人から自分の者を取り返す行為が同じとは思えないし、

静原の犯行を見逃すことがたいした問題ではなかったというのはどうも腑に落ちない。

 

二つ目は剣崎のキャラクター。

剣崎に関しては葉村を助手にしたいのもよくわからないし、

口調も気にはなったけど、一番きつかったのが葉村の髪をわしゃわしゃしたこと。

こういう描写を好む人結構いるんだろうか?

 

三つ目はゾンビ関係。

これは当然ゾンビの特徴などは最初は分からないし、

瞬間的な判断の結果、紫湛荘に立て籠もるというのはわかる。

けど、葉村が途中で非常扉について踊り場があって足場がしっかりしてるため、

盤石ではないと思っているのに何もしないし、

周りの人たちと話し合いもしないのは不自然なんじゃないかな。

一応その前に紫湛荘からの脱出は難しいと話してたから、

葉村の中では特に何もできないという結論なのかな。

ただ実際に、翌日の朝には非常扉破られてるからな。

なぜこの箇所を指摘するかというと屋上にいた葉村を認識したゾンビたちは

手すりから身を乗り出して落ちたとあるから

何かしら対処方法はあったんじゃないかな?と思った。

 

と色々書いたけれど、私はかなり楽しめました。

班目機関とかこの手のものに弱いんだろうな。

重元みたいなキャラもいいですよね。