MENU

【今村昌弘】『兇人邸の殺人』についての解説と感想

本記事では今村昌弘さんの小説『兇人邸の殺人』を紹介します。

屍人荘の殺人シリーズの三作目である。

兇人邸の殺人

兇人邸の殺人

著者:今村昌弘

出版社:東京創元社

ページ数:368ページ(単行本)

読了日:2023年4月12日

 

今村昌弘さんの『兇人邸の殺人』。

『屍人荘の殺人』、『魔眼の匣の殺人』に次ぐシリーズ第三弾。

このミステリーがすごい!2022年版』4位。

 

あらすじ

剣崎比留子から急に誘われた葉村譲。

剣崎から指定された場所に行くと成島ISM西日本の社長成島陶次と秘書の裏井がいた。

成島から班目機関の話を聞かされ、

重要なものを回収しに行くのに同行することになった。

成島が依頼した傭兵たちと葉村たちが向かうのは馬越ドリームシティにある、

『兇人邸』。

兇人邸に侵入した葉村たちが見たものとは・・・。

 

登場人物

・葉村譲:神紅大学経済学部一回生。ミステリ愛好会会長。

・剣崎比留子:神紅大学文学部二回生。ミステリ愛好会会員。

・成島陶次:成島IMS西日本社長。

・裏井:成島の秘書。

・ボス:傭兵。

・アウル:傭兵。

・アリ:傭兵。

・コーチマン:傭兵。

・チャーリー:傭兵。

・マリア:傭兵。

・グエン・ヴァン・ソン:馬越ドリームシティの従業員。

・不木玄助:研究者。昭島興産会長。

・雑賀務:兇人邸の使用人。

・阿波根令実:兇人邸の使用人。

・剛力京:フリーライター

(本書より引用)

 

ネタバレありの感想

一作目がゾンビで二作目が予言、そして三作目の今回はなんと巨人。

雰囲気としては一作の『屍人荘の殺人』にちょっと近いかな。

世界観というのか、ゲーム的で読んでで引き込まれる。

前二作同様クローズドサークルになるんだけど、

それだけではなく安楽椅子探偵の要素もある。

なので本格ミステリーが好きな人も

前二作とは違った楽しみ方ができるんじゃないかと思う。

 

巨人に関しては最初に葉村たちが遭遇した時のインパクトは強烈だけど、

それ以降はあんまり緊張感はないかな。

ここも『屍人荘の殺人』に近い。

一方で違う部分としては巨人の正体や巨人がなぜ誕生したかが描かれている点。

《追憶》として四十年前の班目機関の施設での事件の真相も描かれていて、

ただの本格ミステリーにしてないのが面白い。

『魔眼の匣の殺人』に出てきたサキミが予言したという事件。

 

巨人の正体はジョウジかコウタと思わせておいてからの、

実はケイっていうのは予想通りだった。

ブログに登場人物書く時に気付いたけど、

登場人物紹介のページの裏井の下の名前は書いてなかった。

なので裏井がジョウジかコウタってのはある程度想像できるようになっていたと。

 

正直、この本は班目機関関係の話の方が正直面白いかもしれない。

 

犯人当ての推理に関しては分からないけど、

それ以外ならハッキリ言うとツッコミどころは結構ある。

 

基地局のデータで足取りを残したくないからと裏井に剣崎たちの携帯を渡した件。

百歩譲って剣崎たちの携帯はわかるけれど、

成島やボスは外部と連絡を取る手段を放棄するのは理解できない。

日本で拳銃を持ってる傭兵集団なんだから何かしらの手段はありそうなもんじゃない?

 

被験者(巨人)を成島たちはどうする気だったのか?

巨人に最初に出会った時に成島は殺すなと言ったけど、

その割にはみんな拳銃しか持ってないのはおかしいんじゃないかな。

被験者は大人しく従うと思っていたのだろうか?

 

不木がモニターや電話機を壊す理由

普通にモニターで巨人を観察したらいいだけなんじゃ?

何でモニターを壊す必要があったのかが分からない。

その割には施設の生き残りがなんて日記に書き残す余裕はあるからな。

ちょっとご都合主義な行動に思える。

 

不木はなんで裏井のことを施設にいた人間だと分かったのか?

四十年も経ってるのに分かるものなのだろうか?

しかも不木は猿を相手に実験をしていて、

子供たちを実験していたのは羽田らしいのに。

 

班目機関の施設での事件から巨人はどこにいたのか?

事件が四十年前。

馬越ドリームシティになったのが十四年前。

この二十六年間巨人はどこにいたのか?

四十年前の事件の時も羽田とコウタ以外全滅したなら、

不木が生き残り、なおかつケイを支配下に置いたのは結構な謎。

 

裏井の回復能力

確かに驚異的な回復能力はあるらしいけれど、

致命的な出血であってもそこまで短時間で回復するものなのか?

裏井が成島を追って戻ってきたのは五分らしいけど、

移動時間も含めたら凄すぎじゃない?

《追憶Ⅱ》では折れた鼻は三日で治るとあったから回復力が凄いのはわかるけど。

ここは犯人当てにかなり関わってくる話。

 

剣崎がいた場所には巨人が入らない理由

これは裏井が言うように男子棟だからでいいんだけど、

メタ発言ばっかりする剣崎と葉村が何も疑問に思わないのが不自然すぎる。

 

裏井の動機

事件の動機も全く理解できなかった。

結局裏井は何がしたかったんだろうか?

雑賀を殺すことに悩んだらしいけど悩む部分が違うだろうと。

剣崎を助けたのはかっこよかったけど、

結局巨人の最後がどうなのかったのかは裏井も分からないままだしな。

 

あとやっぱり剣崎と葉村のやりとりは苦手である。

ホームズとかワトソンとか何回やったら気が済むのかこの二人。

と文句ばっかり書いてきたけれど、読んでる時は結構楽しんでました。

最後に『屍人荘の殺人』に出てきたゾンビマスターの重元が出てきたので、

次作も楽しみに待っています。