【奥田英朗】『家日和』についての解説と感想

本記事では奥田英朗さんの小説『家日和』を紹介します。

家シリーズの一作目です。

家日和

家日和

著者:奥田英朗

出版社:集英社

ページ数:264ページ

読了日:2023年4月23日

 

奥田英朗さんの『家日和』。

第20回柴田錬三郎賞受賞作であり、家族を描いた六篇の短編集である。

家シリーズの第一弾で、

のちに『我が家の問題』、『我が家のヒミツ』が家シリーズとして出版されている。

 

サニーデイ

あらすじ

四十二歳の山本紀子はピクニック用の折りたたみテーブルが不要になったので、

インターネット・オークションで売ることにした。

オークションは最初の三日間は音沙汰無しだったが、

入札者が増えていき、金額も吊り上がっていく。

紀子はインターネット・オークションにどんどんはまっていくことに。

 

登場人物

・山本紀子:専業主婦。四十二歳。

・山本清志:紀子の夫。

・山本由佳:紀子の娘。中学三年生。

・山本祐平:紀子の息子。中学一年生。

 

ネタバレありの感想

インターネット・オークションにはまる主婦の話。

流石に少し時代を感じる部分もあるけど、話そのものは面白い。

小さいことでも幸せであるとか達成感があるというのは読んでいて納得。

予想外に夫や子供から誕生日に優しくされてプレゼントを貰ってからの

このオチはかなり好き。

 

・ここが青山

あらすじ

三十六歳の湯村裕輔は

遅刻した朝礼で社長の口から十四年間勤めた会社が倒産したことを知らされた。

倒産したことを妻の厚子に告げると、厚子は前の職場に復職することになった。

裕輔は主夫として食事の準備や息子・昇太の幼稚園の送り迎えなどをするが。

 

登場人物

・湯村裕輔:三十六歳。

・湯村厚子:裕輔の妻。前の職場に復帰することに。

・湯村昇太:裕輔の息子。四歳。

 

ネタバレありの感想

会社の倒産によって失業者になり、主夫をすることになった男性の話。

実際に失業者になったらかなりの悲壮感があるとは思うけれど、

全く悲壮感を感じさせない話。

祐輔と厚子も良いんだけど、昇太かな。

変な話子供キャラの使い方が非常にうまい。

 

・家においでよ

あらすじ

三十八歳の田辺正春は妻の仁美と別居することになった。

仁美は別居にあたり家具の大半を持って行ったので、

正春は生活道具を買うことになった。

オーディオ機器や家具などを買いそろえることになるが。

 

登場人物

・田辺正春:三十八歳。営業マン。妻の仁美とは現在別居中。

・田辺仁美:正春の妻。三十二歳。

      大手家電メーカーのインダストリアル・デザイナー。

 

ネタバレありの感想

妻と別居することになって家具やオーディオセットに凝りだした男性の話。

オチはありきたりな感じするけれど、

途中の同僚たちが家に来るのは学生時代を思い出す。

 

・グレープフルーツ・モンスター

あらすじ

三十九歳の佐藤弘子は会社員の夫と子供二人と主婦。

内職としてDM用の宛名をパソコンで入力するアルバイトをしている。

内職の発注元の「フィメール」の新しい営業マン栗原が家を訪ねてきて。

 

登場人物

・佐藤弘子:専業主婦。三十九歳。内職をしている。小学校に通う二人の子供がいる。

佐藤達哉:弘子の夫。印刷会社勤務。

・栗原:弘子の内職の発注元「フィメール」の営業マン。

 

ネタバレありの感想

若い営業マンを意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦の話。

妙に生々しい部分があって感想に困る。

これ女性の話だから読めるけれど、男性の話だったら洒落にならないよな。

 

・夫とカーテン

あらすじ

大山春代と栄一の夫婦。

春代は自宅でイラストを描く仕事をしている。

栄一がカーテンとカーペット屋を始めると言い出すが。

 

登場人物

・大山春代:イラストレーター。

・大山栄一:春代の夫。

 

ネタバレありの感想

イラストレーターの妻とカーテン屋を開業する夫の話。

とにかく春代と栄一のキャラであり、関係性が非常に良い。

栄一みたいな何となく魅力ある人っているけれど、

それを小説で描くって難しそうなんだけど、見事に描いている。

 

・妻と玄米御飯

あらすじ

小説家の大塚康夫と妻の里美と子供二人の四人家族。

里美が「ロハス」にはまり、食卓に玄米御飯が出てくるようになって。

 

登場人物

・大塚康夫:小説家。四十二歳。

・大塚里美:康夫の妻。ロハスにはまっている。

・大塚恵介:康夫の子供。洋介と双子。小学五年生。

・大塚洋介:康夫の子供。恵介と双子。小学五年生。

 

ネタバレありの感想

ロハスにはまった妻とそれに困惑する小説家の夫の話。

小説家が主人公ということで、もしかして奥田さんの実体験?と思わせる話。

ロハスブームを嘲笑しながらも、

しっかりとバランス感覚がある康夫が作者そのままって感じがする。

 

総評

ユーモア小説で読後感は優しく明るくなれる本。

家族の話であり家での出来事が描かれている。

失業したり開業したりはあるけれど、基本的には日常的な話になっている。

私が好きなのは「ここが青山」と「夫とカーテン」かな。

どちらも主人公含めてキャラクターが良いのと、夫婦や家族の関係性が素晴らしい。

いわゆる外れ作みたいなのは無いんじゃないかな。

多少の古さも感じる部分もあるけれど、今読んでも特に問題はないと思う。

お手軽に読めて明るい気持ちになれる本。

それ目当てならお勧めですね。