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【伊坂幸太郎】『フィッシュストーリー』についての解説と感想

本記事では伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー』を紹介します。

フィッシュスートーリー

フィッシュストーリー

著者:伊坂幸太郎

出版社:新潮社

ページ数:338ページ

読了日:2023年6月4日

 

伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』。

四篇収録の短編集。

表題作の「フィッシュストーリー」は映画化されている。

 

・動物園のエンジン

あらすじ

動物園に勤務していた永沢は

シンリンオオカミが逃げ出した責任を感じて退職していた。

永沢がいると動物たちの雰囲気が違うことから動物園のエンジンと言われていて、

退職した後も夜の動物園を訪れていた。

永沢は朝になると近くのマンション建設予定地に行き、

反対運動をする主婦に混じってプラカードを持って立っていた。

私と河原崎と恩田は永沢がなぜそんな行動をするのか推理しはじめる。

 

登場人物

・私:主人公。

・河原崎:塾の経営者。四十歳前後。「私」の大学の先輩で五歳の年の差がある。

・恩田:役所の職員であり動物園の職員。「私」と同じ大学で同年。

・永沢:動物園の元職員。

 

ネタバレありの感想

私には合わなかったかな。

原崎のキャラクターで多少物語に引き込まれる部分もあるけれど、

全体的にはつかみどころがない印象。

死を扱ってるのもあるかもしれないけど、基本的には暗い。

ラストも永沢はよくわからないし、河原崎はビルから飛び降りで、

恩田は新興宗教にのめり込むだからな。

 

サクリファイス

あらすじ

空き巣兼探偵の黒澤は山田という人物を探して小暮村を訪れていた。

山田が部屋のパソコンで「小暮村」という名前で検索をした形跡があったためである。

黒澤が小暮村を訪れた時「こもり様」という風習が行われていて

 

登場人物

・黒澤:空き巣兼探偵。年齢は三十半ば過ぎ。

・盤陽一郎:村長。

・周造:大工。

・柿本:芸術家。以前は市役所に勤務していた。九年前に小暮村にやってきた。

・柿本花江:柿本の妻。

・唄子:小暮村に住む女性。

 

ネタバレありの感想

村に残る風習絡みの謎の話。

これも正直合わなかった。

黒澤が追っている山田であるとかこもり様の謎とか特に興味を持てなかったからかな、

なので真相が明らかになっても特に何も感じず。

良かったのは柿本と唄子が良いキャラをしてたことぐらいかな。

 

・フィッシュストーリー

あらすじ

売れない四人組のロックバンド。

小説『フィッシュストーリー』から抜き書きした文章で作詞した曲で

最後のレコーディングに臨もうとしていた。

 

登場人物

・雅史:大学助手。

・瀬川:高校の数学教師。

・繁樹:バンドのリーダー。ベース。

・亮二:バンドのギター。

・五郎:バンドのボーカル。

・鉄夫:バンドのドラム。

・岡崎:マネージャー。

・谷:プロデューサー。

橘麻美:ネットワークの専門家。

 

ネタバレありの感想

表題作。

物事が連鎖していく話なんだけれど、正直いまいちだったかな。

話の狙いとしては面白いと思うんだけれど。

短編の中に四つの時代の話があるので、

どうしても一つ一つが薄くなってしまっている。

一つ一つの話として読むものではないとは思うけれど、

三十数年前のロックバンドの話は面白くって、

五郎の「届いてるのかな」の喋りの部分は良かった。

現代の話は正義の味方とはいえあまりにも現実離れしすぎで、

十年後はあまりにもあっさりしすぎという感じ。

もしかしたら長編にして、

もう少しそれぞれの話が詳細に書かれていたら

また違った印象になるのかなというところ。

 

・ポテチ

あらすじ

空き巣の今村と恋人の大西若葉はプロ野球選手の尾崎の部屋に空き巣に入る。

大西は今村がほとんど家探しもせず、

のんびりと漫画を読んでいるのに当惑していると、部屋に電話がかかってくる。

若い女から尾崎に助けを求める電話で、

今村と大西は若い女を助けにいくことになったが。

 

登場人物

・今村忠司:空き巣。

・大西若葉:今村の恋人。今村と同棲中。

・今村母:今村の母親。

・黒澤:空き巣兼探偵。

・中村:今村に親分と呼ばれている空き巣。

・尾崎:地元仙台のプロ野球選手。今村と同じ年。

 

ネタバレありの感想

サクリファイス」の黒澤も登場する話。

これは非常に良かった。

子供の取り違えの話なんだけれど、登場人物のキャラクターや会話含めて流石の一言。

最初は今村のとぼけたキャラクターもだし、

話の中心が何なのかがよく分からなかったけれど、

健康診断の話からこれはもしかして・・・って感じからの

ラストに向かっていく感じは最高だった。

今村と大西と黒澤と今村母親のキャラクターが非常に良いし、

黒澤の仕事も活きているし。

大西がポテトチップスのコンソメと塩味を間違えてもらって、

かえって良かったかもというセリフの後に

今村が泣くところとか、ラストを知ったうえでもう一回読むとほんとよくできてる話。

私はこういう分かりやすい話が好きなのである。

 

総評

四篇のうち文句なく面白かったと思えたのは「ポテチ」ぐらい。

表題作の「フィッシュストーリー」は非常に惜しかった。

「動物園のエンジン」と「サクリファイス」は私には合わず。

私には話そのものは合わなかったけれど、

登場人物のキャラクターや会話は面白かったので、そこは良かったかな。