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【今野敏】果断-隠蔽捜査2-についての解説と感想

本記事では今野敏さんの小説『果断-隠蔽捜査2-』を紹介します。

隠蔽捜査シリーズの二作目です。

果断-隠蔽捜査2-

果断-隠蔽捜査2-

著者:今野敏

出版社:新潮社

ページ数:405ページ

読了日:2023年6月15日

 

今野敏さんの『果断-隠蔽捜査2-』。

隠蔽捜査シリーズの二作目。

山本周五郎賞日本推理作家協会賞の二冠。

テレビ朝日とTBSでテレビドラマ化された。

 

あらすじ

竜崎伸也は息子の不祥事によって警察庁長官官房の総務課長から

大森署の署長に異動になった。

竜崎が着任早々、立てこもり事件に遭遇し、

竜崎はこの立てこもり事件を現場で指揮することになった。

無事立てこもり事件を解決したはずだったが・・・。

 

登場人物

・竜崎伸也:警視庁大森警察署の署長。階級は警視長。四十六歳。

・竜崎冴子:竜崎伸也の妻。

・竜崎美紀:竜崎伸也の長女。大学生。就職活動中。

・竜崎邦彦:竜崎伸也の長男。予備校生。

 

・貝沼悦郎:副署長。警視。五十六歳。

・斎藤治:警務課長。警部。四十五歳。

・関本良治:刑事課長。警部。四十七歳。

・久米政男:地域課長。警部。五十歳。

小松茂:強行犯係の課長。警部補。四十五歳。

・戸高善信:大森署刑事課強行犯係の刑事。

 

・伊丹俊太郎:警視庁の刑事部長。警視長。

・下平:第一特殊班捜査の第二係の係長。SIT。

・石渡:第六機動隊第七中隊の小隊長。SAT。

・谷岡裕也:警察庁総務課課長補佐。

・野間崎:第二方面本部の管理官。警視。

・小田切貞夫:警察庁首席監察官

 

・福本多吉:東日新聞の社会部部長。

 

・瀬島睦利:消費者金融強盗事件の犯人。三十六歳。

・源田清一:『磯菊』の経営者。五十三歳。

・源田芳美:源田清一の妻。『磯菊』の従業員。

 

ネタバレなしの感想

前作だと長官官房の総務課長という現場からはかなり離れた立場だったのが、

今作では署長になったことによって事件現場とは前作よりはかなり近くなっている。

 

警察小説でもA県警とB県警の縄張り争いであるとか、

同じ警察署の中でも捜査一課と組織犯罪対策課の対立みたいなのはあるけれど、

本作ではSITとSATの対立が描かれていたり、

警察内部の組織の話が結構な割合になっているのは前作と変わらない。

 

立てこもり事件の真相であるとか謎の要素もあったりで、

今作は前作と比べるとはるかに警察小説らしくなってはいる。

竜崎のキャラクターは当然だけれど前作と一緒。

 

ネタバレありの感想

竜崎のキャラクターに関しては前作と変わらないので、

相変わらずの説明過多になっている。

なのであまり好きになれないのは変わらなかった。

 

ただの管理部門の話ではなくて、解決した立てこもり事件には実は真相があって、

被害者だと思ったのが実は被害者ではなく

加害者だったというのは確かに面白いかなと思う。

けれど、そもそも立てこもり事件自体が結構あっさりしているので、

そこまでのカタルシスは得られなかったかな。

ただ単に立てこもり事件が発生して、

犯人と警察は特に接触せず(できず)に結構あっさり突入して

犯人を射殺という展開だからかな。

 

あと読んでいてあまり物語に入っていけないのが、

そもそも本来であればどういう役割分担がされているか?ってのが

分からないのがどうも気になった。

 

迷った時には原則を大事にするらしい竜崎なのに、

その原則をそんなに守ってないんじゃないかと。

普通に考えたって署長が立てこもり事件の現場に行くとは思えないからな。

指揮本部長の伊丹の下に竜崎が位置していて、

専門的な判断もできない竜崎が現場に行くことに何の意味があるんだろうか。

大森署がSITの指揮下に入るなら現場のトップにそう言えばいいだけなんじゃないかと。

 

竜崎と小田切のやりとりの中で警察官は上司の発砲許可など必要ないとあるけれど、

原理原則を大事にする竜崎なら発砲許可出すのおかしいってなりそうなんだけれど、

前線本部長だから現場での権限を与えられていると

考えて発砲許可出したって言われてもちょっと理解に苦しむ。

一応浅間山荘事件を例に出してるけど、この場合は警察庁長官だからな。

 

また複数の犯人が立てこもってるわけでもない事件に

SITとSATが同時に投入されるものなのか?その場合誰の権限で投入してるのか?とかが

あまりにあやふやかなと。

 

建前の話として署長の竜崎の責任が問われるというのは分かるんだけれど、

どうもこの部分ですらうまく描けてるとは思えないんだよな。

最後には小田切は竜崎より一枚上手みたいな終わり方になっているけれど、

読んでると全くはそうは思えないんだよな。

 

事件そのものの真相に絡むけれど、

本作だとSITが電話を二時間ぐらいかけ続けるんだけれど、

そんなに長い間かけ続けるものなのか?ってのがどうも気になってしまう。

作中でも電話をかけ続けると犯人を刺激するんじゃないかと

竜崎が指摘するんだけれど、これ竜崎の指摘が正しいと思うんだよな。

下平がなんで犯人は電話に出ないんだってつぶやくけれど、

その疑問は全くその通りで、

立てこもりの事件の犯人であるとか真相に

戸高以外にももう少し興味持たせた方がいいんじゃないかと。

誰が撃った拳銃が犯人に当たったのかぐらい調べそうなもんなんだよな。

 

だいたい真犯人の源田は警察(SAT)の拳銃と

自分たちが持っている拳銃の弾が同じって知ってたって設定なのかな

もし違う弾なら色々成り立たないわけだからな。

ちなみに竜崎は違う弾だと思っていたからな。

 

あと伊丹って竜崎に何となく認められているけれど、

誰よりも駄目な人にしか思えないんだよな。

伊丹は指揮本部長だから命令を出せるはずらしいけれど、

SITを使えとアドバイスをしたと逃げをうつ場面とかあるけれど、

この人が諸悪の根源なんじゃないかと。

作中において竜崎がこんな伊丹を何となく受け入れてしまっているのが、

結構な問題を生んでいる気がする。

小学校時代のいじめとかではなくて、

今の伊丹こそ竜崎が嫌うタイプなんじゃないかと思うが。