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【荻原浩】『逢魔が時に会いましょう』についての解説と感想

本記事では荻原浩さんの小説『逢魔が時に会いましょう』を紹介します。

逢魔が時に会いましょう

逢魔が時に会いましょう

著者:荻原浩

出版社:集英社

ページ数:256ページ

読了日:2023年10月18日

 

荻原浩さんの『逢魔が時に会いましょう』。

三篇収録の連作短編集。

 

・座敷わらしの右手

あらすじ

大学4年生の高橋真矢は、ビデオ撮影の腕を買われて、

民俗学者・布目悟准教授の助手のアルバイトをすることになった。

フィールドワークのスタッフとして座敷わらしを撮影するために

岩手の遠野へ行くことに。

座敷わらしが出るという家や幼稚園を訪ねるが・・・。

 

ネタバレありの感想

タイトル通り座敷わらしの話。

荻原浩さんの座敷わらしといえば『押入れのちよ』だけど、

それと比較するとかなり落ちるというのが率直な感想。

布目が民俗学者ということもあり、

座敷わらしの可愛らしさというよりは民俗学的な話が結構な割合を占めるかな。

座敷わらしは間引きされた子どもの魂説のような、ちょっと重い話もある。

最後に座敷わらしを実際に見て、カメラで撮影に成功するも、

映像記録は消えているという。

そして話自体のオチは真矢が民俗学や布目に興味を持つも、

布目が寝てしまうというオチ。

 

・河童沼の水底から

あらすじ

九月、高橋真矢は親からの仕送りがストップされ、バイト探しをするも苦戦していた。

そんな時に布目から日当を出すから

フィールドワークの助手をお願いできないかと頼まれる。

真矢と布目は、去年から河童の目撃談が急増している

河童伝承の残っている三ツ淵へ出かけることになった。

 

ネタバレありの感想

タイトル通り河童の話。

布目と真矢が見つけたのはカミツキガメで、

長兵衛や近隣の人々の反応からして河童での町おこしを

潰されたことに立腹してる感じ。

真相としては真矢が最後に見たヤマちゃんと呼ばれている男が、

河童でカミツキガメを盗んで沼に放したというところかな。

漂泊民が河童のモデル説は面白かったな。

座敷わらしと違って河童との交流は

 

・天狗の来た道

あらずじ

夏の終わりに布目に誘われて、

真矢は実家近くの山陰の霧北へ天狗を探しに行くことに。

 

ネタバレありの感想

書き下ろし作品。

タイトル通りの天狗の話。

布目は天狗はたたら場で外国人技術者という説を唱えるも、

遭難した真矢はトロールドワーフやゴブリンなどのヨーロッパの妖精たちを見て、

新品のフローリン金貨を拾う。

そして最後は布目と真矢が仲良く北欧に行こうというラストになっている。

真矢と布目の関係性は若干唐突な気はするけれど、

一応は綺麗な終わり方になっているのかな。

終わり方からすると続編があってもおかしくない感じはするけど、

ネタ切れ感もあるかな。

 

登場人物

・高橋真矢:国文科四年生。映画研究会。

     「マヤ」だが布目からは「シンヤ」と呼ばれている。

・布目悟:文学部准教授。民俗学者

 

総評

読んだ感想は、微妙というのが正直なところかな。

文庫本の表紙やそれぞれのタイトルでも分かるように、

座敷わらしと河童と天狗をテーマに描かれている。

登場人物の一人が民俗学者の布目悟ということもあって、

妖怪の正体について、こういう説があるとか、こういう説もあるみたいなのが

結構な割合を占めるわけだけど、

つまらないとまでは言わないけど小説として読むには微妙かなと思う。

『押入れのチヨ』のようなものを期待していただけに、完全に期待外れでした。

もうちょっと妖怪そのものを読みたかったかなというのが本音。

 

良かった点を挙げておくと高橋真矢と布目悟のキャラクターとかやりとりであったり、

二人の関係性かな。

もっとも、最初から恋愛ややりとりを期待して読むものとも思えないけれど。

256ページで読みやすかったのも良かったかな。

 

人に勧めるかと聞かれたら、勧めないかな。