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【青崎有吾】『地雷グリコ』についての解説と感想

本記事では青崎有吾さんの小説『地雷グリコ』を紹介します。

地雷グリコ

地雷グリコ

著者:青崎有吾

出版社:KADOKAWA

ページ数:352ページ

読了日:2023年12月28日

 

青崎有吾さんの『地獄グリコ』。

勝負事にやたら強い女子高生・射守矢真兎が風変わりなゲームに挑むのを描いた、

五篇収録の連作短編集。

 

・地雷グリコ

あらすじ

五月になると都立頬白高校では慌しくなる、

その理由は頬白祭という創立記念の文化祭が近づくためだ。

その頬白祭で当日使用したい場所を実行委員会に申請するが、

一番人気があるのが屋上で、使えるのは一団体のみ。

その使用権をかけて争奪戦が繰り広げられる、それが愚煙試合。

生徒会代表の椚迅人と一年生の射守矢真兎により、

愚煙試合の決勝が行われることになった。

二人が勝負するのは『地雷グリコ』。

 

ネタバレありの感想

表題作。

描かれているゲームはじゃんけんのグリコ+地雷を踏んだら10段下がるというもので、

四十六段の階段を先に登った方が勝ちというゲーム。

これに関しては何となくだけど、

地雷を踏んだら10段下がったその位置に地雷があるというのは予想できた。

もっとも、どうやってその段に誘導するか?は分からなかったけど、

読んでみたら、射守矢が椚の性格を見抜いて仕掛けている。

そして読者にとっては、それが伏線になっているという構図。

ゲームのシンプルさも含めてかなり面白い。

 

・坊主衰弱

あらすじ

かるた部がかるたカフェから出禁になったため、

謝罪と出禁を解いてもらうためにカフェを訪れる

椚とかるた部に同行することになった、射守矢と鉱田。

カフェのマスターは出禁を解く気はないため、

射守矢とマスターは『坊主衰弱』というゲームで勝負することに。

 

ネタバレありの感想

坊主めくりというか百人一首を使った神経衰弱。

対戦相手の旗野が最初からイカサマを仕掛けているのが他の話との一番の違い。

なのでルールの盲点をつくというよりは、

イカサマとイカサマによる勝負の構図になっている。

百人一首がデパートに売っているとかコーラに関しては

しっかりと伏線が張られているので、分かりやすいかな。

ストーリーとしては前話で倒した椚が仲間になっているのが少年漫画的かな。

 

・自由律ジャンケン

あらすじ

佐分利錵子生徒会長から生徒会に入るよう誘われた射守矢だったが、拒否する。

すると、佐分利は自分がゲームに勝ったら射守矢に生徒会に入るように要求し、

もし負けた場合は射守矢の中学時代の同級生の雨季田絵空と

真剣勝負させると言い出し、射守矢は受け入れる。

佐分利と射守矢は『自由律ジャンケン』で勝負する。

 

ネタバレありの感想

両プレイヤーが考案した独自手を加えた計五種で戦うジャンケンで、

独自手は勝ち負けと特殊効果は開示無しで戦うのもポイント。

これは全く想像もつかなくて、空手もだし特殊効果も全く分からなかった。

コーヒーが何らかの意味を持つのは分かるけど、

左手で出しても自然な形にするというのは頭が良すぎる。

蝸牛と銃がイラスト付きであるのにもしっかりと意味があるけれど、

銃が左側にあるので、パッと見では分かりにくくなっている。

 

・だるまさんがかぞえた

あらすじ

頬白高校に保管されていた私立星越高校から流出した三枚のSチップを、

回収するために行われることになった『実践向上』。

星越高校は生徒会の首藤、頬白高校からは射守矢の間で行われるのは、

『だるまさんがかぞえた』。

 

ネタバレありの感想

だるまさんがころんだを数字を書いて入札して行う。

正直ルールを読んでいる時に複雑すぎると思ったけれど、

ここまで読んでいると何となくルールの盲点みたいなのは想像はできて、

ゼロ文字チェックまでは分かった。

ただ公園の外周を歩くとか、木の裏側からというのは全く分からなかった。

ただ、射守矢がルール足してるのを読めば推測できるようにはなっている。

 

・フォールーム・ポーカー

あらすじ

射守矢真兎と雨季田絵空によって

約六千万円を賭けて行われることになった『実践向上』。

ゲームを仕切るのは愚煙試合で審判役を務めた塗辺で、

勝負を決めるゲームは『四部屋ポーカー』。

 

ネタバレありの感想

ポーカーを三枚で行うのと、柄ごとの部屋からカードを交換するというルール。

これまたかなり複雑であるんだけど、読み進めれば何となく分かってくるかな。

完全に射守矢と絵空の仕掛け合いになっていて、

旧部室棟や部屋のイラストがあるのでヒントにはなっている。

射守矢と絵空はお互いがお互いのことを知っているというのも物語の肝かな。

あとは射守矢と絵空に謝らせたいことがあると言っていたことの真相が

明らかになって、鉱田もその影響を受けていたことが分かる。

話としては綺麗な終わり方になっている。

 

・エピローグ

ネタバレありの感想

もしかしたら続編あるかも?という終わり方。

 

登場人物

・射守矢真兎:都立頬白高校一年四組。南樹中出身。

・鉱田:都立頬白高校一年四組。南樹中出身。中学ではダンス部に所属していた。

・椚迅人:都立頬白高校三年一組。生徒会役員。

・江角進一:都立頬白高校三年。生徒会役員。

・塗辺:都立頬白高校一年。頬白祭実行委員。ラクロス部

・中束:都立頬白高校。かるた部部長。

・旗野:かるたカフェ『HATANO』のマスター。

・佐分利錵子:都立頬白高校三年。生徒会会長。

・新妻晴夫:私立星越高校三年。生徒会役員。

・巣藤:私立星越高校二年。生徒会役員。

・桶川:私立星越高校二年。生徒会役員。

・雨季田絵空:私立星越高校一年。生徒会役員。南樹中出身。

 

総評

本の紹介に本格頭脳バトルとあるように、

誰でも知っているような遊びに独自のルールを足したゲームで、

読みと戦略、ルールの盲点をつくような頭脳バトルが描かれている。

なので、いわゆる推理小説とはかなり違うけれど、

書かれていることはロジカルなので、

ゲームのルールからだったり、会話などから読者も推理できるので、

ミステリー好きも楽しめるとは思う。

イラストもあるので、読者に分かりやすく伝えようとしてるのも非常に良い。

あと私は登場人物が結構好きになれたし、会話もくすりと笑うような楽しさもあった。

展開も含めて漫画的ということもあって、普段小説を読まない方にもおすすめ。